それぞれの介護

  • 阿川佐和子さんのプロフィール
  • クミコさんのプロフィール

残間
最初から歳の話で恐縮ですが、
クミコさんが63、阿川さんが64、
そして私が68という並びです。
こういった年代になると
共通の話題のひとつになるのが「親の介護」ですが、
今日はこの介護の話を中心に伺いたいと思います。
よろしくお願いします。
阿川・クミコ
よろしくお願いします。
残間
阿川さんは2015年に
お父さま(作家の故・阿川弘之氏)を見送られ、
今はお母さまを看ているそうですが、
介護の始まりはどんな感じだったのですか?
阿川
父と母は二人で暮らしてたんですが、
父が転倒するようになり、
母に少し認知症が出始めたんですね。
それでも二人で暮らしていたんですが、
ある時、父が転倒して頭から血を流して
救急車で運ばれたんです。
怪我はたいしたことなかったんですが、
誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしていることがわかりました。

そこで普通の老人は一気に体力を落とすと聞いていたんですが、
父は1ヶ月流動食だけで頑張って回復したんです。
本人は家に帰りたがるんですが、 母は認知症が始まっているしで、
このまま二人で生活させるのは無理だろうと思いました。
さあどうする? となって、
嫌がる父を無理やり高齢者向けの病院に入れたんです。
そこはたまたまとても食事が美味しくて
父もちょっと気に入ったんですね。
「ね、美味しいでしょ!」と言いながら
「暫定的処置ですから」とかごまかして。
結局、父はその病院に3年半入院して、
2015年に亡くなりました。

一方、残された母は母でなんとかしないといけない。
だんだん母も転倒するようになり、
火の元の心配も出てきたので、これは一人暮らしはさせられないと。
今は兄弟と、昔からウチの手伝いをしてくれていた女性にお願いをして、
交代々々でケアしてます。

私は4人きょうだいなんですが、弟が外国に住んでいたり、
それぞれに家族はあるし、忙しい盛りなので
誰か一人が母と同居するのはなかなか難しい。
そうは言っても、やはり親にとって、一番、気兼ねないのは娘なんでしょうね。
だから、一時は、私も、覚悟を決めて、
仕事を中断したほうがいいのかなと考えたこともありました。
でも仕事をやめたら私がもたなくなるだろうなと思い直して。
ちょうど私の更年期も来て、一時はカッカッしてましたね。
クミコ
私はこれからなんですが、大変ですね。
以前、阿川さんにお会いした時、
ショートカットにしてたんで「お似合いね」と言ったら、
介護が大変で美容院に行く暇がなくて、
自分でカットしたって言われたんですよね。
「うわ、器用!」と
先に別にところに反応しちゃいましたが(笑)、
やっぱりそういう状態になるのかなあ。
残間
私も介護中はマッサージには行けたんですが、
エステは行けませんでしたね。
暇がないというより罪悪感で。
阿川
えー罪悪感! 
私、この経験を今度、図々しくも本にするんですけれど………
クミコ
大変なんでしょうけど、
阿川さんは何でも仕事にできるところが凄いですよね。
阿川
フフフ。 本にも書きましたが、
私は途中で罪悪感や後ろめたさは
必要だなと思いましたね。
こちらがズルしたりサボったりしてると優しくなれるんです。
むしろいけないのは「私だけが背負ってる」とか、
「私がこんなにやってるのに」という思いです。

私の父なんて文句言いなので、
父のためにと思って何か持って行っても、
「なんでお前はそんなにいっぱい持ってくるんだ。
見ただけで食欲が失せる」とか文句しか言わないんですよ。
せっかく父のために時間を作って
ここまでやってるのにって思うと、頭に来るでしょ。
で、くやしいから、
「父のクレジットカードで靴下買ってやる!」って。
スカッとしますよ。
残間
(笑)靴下というのが可愛い。
でも、ちょっとした罪悪感があった方が
優しくなれるというのは、確かにそうですね。
そこで溜め込まない方がいいかも。

私も15年、母の介護をしていましたが、
最後の4年は心身ともにきつかったですね。
特に終わりの2年は母は全盲になってましたし。
クミコ
それはきついなあ。
残間
途中から視野が25度くらいしかなかったんですが、
危ないと思って近くに寄ろうとすると
プライドが高いから嫌がるんですよね。
それで隣の部屋から
聞き耳をたてていることが多かったんですが、
そのせいか今もそちらの方の耳が耳鳴りがするんです。
もう死んで2年も経つのに。
阿川
目はどうして?
残間
脳梗塞です。一度目の発作で視野角が右25度になり、
二度目の発作で全盲になりました。
一生私が面倒見ると決めていたのですが、
仕方なく施設に入れました。
クミコ
そのこともブログに書いてましたよね。
それで日々、家に帰ったらお母様がどうされていたとか、
すごいドキュメンタリーでした。

男たちの介護は生真面目に過ぎる?

残間
クラブ・ウィルビーも50代以上のメンバーが多いので、
介護をしている方が多いんですよ。
それで話を聞いていてわかったんですが、
男性って介護の話はしづらいんですって。
特に男同士ってしないみたいですね。
女同士はこうやって話ができるのにね。
それでウィルビーで「介護カフェ」という介護中や
介護経験のある人が話をする場を作ったんですが、
男の介護は真面目なんですよね。
味噌汁の出汁を鰹節から取ったりする人がいました。
クミコ
えー!
残間
あんまり真面目過ぎてパニックになることもあるみたいで、
同席した女性に「即席だしで十分ですよ」と言われると、
「じゃあ、今日は出汁を即席出汁にする記念日にします」
とか言うのね。サラダ記念日みたいに。
なんか男が介護するというのは、女性以上に大変みたいですね。
阿川
家事全般に慣れていない人も多いだろうしねえ。
残間
それで男性の場合、親の介護が始まったと同時に、
ヘルパーの資格を取る人もけっこういます。
介護の知識を身につけるには資格を取るのが早道だろうと。
このあたりが、また男性らしいですが。
クミコ
でも男性陣には奥さんもいるわけですよね。
残間
夫の親の介護はしない妻が増えてきている印象ですね。
阿川
そうそう、夫婦って、今、他人なんですよね。
夫の側も自分の親の介護は自分でやると。
クミコ
なるほど、それぞれ自分の親は自分で面倒をみようと。
残間
最近はリタイア後は地方の実家に帰って、
親の介護をするという男性もいますね。
月曜から金曜は実家で、
土日は妻がいる自宅に帰るというサイクルになるんですが、
しまいに土日も帰らなくなる、
というパターンもあるみたいです。
阿川
子供はどうしてるんですか?
残間
子供は大きくなっていて自分の人生があるし、
一緒に住んでいない場合は実感がないでしょうね。
阿川
いやあ、その個人主義的なところがいいというか、
悪いというか、今、価値観がガラッと変わったから、
そこで新たなイザコザも起こる。