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自由記述の分類と分析からみるシニアの志向性① 『この先の人生をどのように過ごしたいですか?』

定性定量

 willbeシニア総合研究所(所長:残間里江子、東京都)は、シニア世代の会員制コミュニティ「クラブ・ウィルビー」(http://www.club-willbe.jp)のメンバーを対象に、『この先の人生をどのように過ごしたいですか? 』という自由記述形式のアンケートを実施しました。

 以下は、353人(40-83歳の男性130人、同女性223人)から得た自由記述回答の内容を分類、分析したものです。  

※アンケート実施日:2017年12月~翌年1月



《目次》

1. 自由記述の分類

2. トップ3項目の詳細について

 2-1 「A.趣味や旅行」 内容の詳細
 2-2 「H.働き続けたい」 理由
 2-3 「I.世の中の役に立ちたい」 内容の詳細


3. 年代、男女別に見られる特徴

 3-1 世代別に見られる特徴
 3-2 男性に見られる特徴
 3-3 女性に見られる特徴





1. 自由記述の分類

ーポイントー

☆ 353人の自由記述「この先やりたいこと」を8つの大項目、17の小項目に分類。

☆ 「A. 趣味や旅行」(38%)、「H. 働き続けたい」(34%)
  「I. 世の中の役に立ちたい」(32%)がtop3。

☆ 「K.友人との関係を大事にしたい」が11%で5位。

☆ 「L. 孫の世話」と「M. 家族との時間を優先」を合わせると、「家族」関連が13%。




 自由記述の内容を類似項目ごとに分類したところ、下図(項目分類表)A.~Q.17項目の内容でそれぞれ複数の記述が見られました。 これらは、さらに「プライベート」 「仕事」 「社会貢献」 「健康」 「家族」 「友人」 「自立」 「不明」の8つに大きく分けることができるようです。

※ 356人は、全て何かしらの自由記述をしている人です。無記入は除外しています。
※ 一人の記述から、複数の項目を読み取る場合があります。
Ex. 「現在、チェロを習ったり、英会話を楽しんだりしています。人生残り10年ちょっと。この二つのサークルで知り合った仲間たちと共に、楽しい人生を送るつもりです。」→ 分類項目=A,C,G
※ 表中の()内は、少数の重複回答が見られた項目です。











2. トップ3項目の詳細について

 次に、最も記述の多かったトップ3項目、「A. 趣味や旅行」、「H. 働き続けたい」、「I. 世の中の役に立ちたい」の詳細を見ていきます。 


2-1. 「A.趣味や旅行」 内容の詳細

ーポイントー

☆ シニアのプライベートの多様化 = 約80種類の具体的活動内容を抽出。

☆ 80種類を、<旅行> <音楽演奏> <室内活動> <屋外活動> 
  <スポーツ> <芸術鑑賞> <日本文化> <その他>の8項目に分類。

☆ スポーツではダンスが一番人気=77歳で社交ダンスを始めた女性も。



 まずは、38%の人が記述した「A.趣味や旅行」の内容を見てみます。この記述の中には、その内容を書いている人もいます。 その内容を全て書き出したところ、約80種類の活動を抽出することができました。 また、それらを関連のある項目ごとに分けたところ、「旅行」「音楽演奏」「室内活動」「屋外活動」「スポーツ」「芸術鑑賞」「日本文化」「その他」の8つに大きく分類できました。
 これらを示したのが、下図(「A.趣味や旅行」の内容)です。




 断トツで多いのは、A.に該当する人の3分の一以上が書いている、旅行に関する記述です。 中でも、「元気なうちに海外旅行を楽しみたい」といった、海外旅行に関する記述が最も目立ちました。また、その記述内容から、彼らの多くが海外旅行経験者であることが読み取れました。

 次に人気があるのは、「合唱やコーラス」です。 また、「歌唱」を行なっているも加えると、歌を唄うことを趣味としている人は、回答者全体の5%弱になります。 「歌唱」が人気のある趣味であることが分かります。

 「スポーツ」の分類項目で最も記述の多かったのは、「ダンス」です。 残念ながら、この中に男性はいませんが、年齢層が54歳から77歳と幅広いことは特筆すべきです(平均年齢64.5歳)。
 77歳の女性に、「社交ダンスを始めたので、覚えが悪いながらも続けていきたい」という記述があり、この方が高齢になってからダンスを始めたことが分かります。 ダンスが年齢を問わずシニアの一般的な趣味として広がってきている可能性があります。

 ここで抽出した項目は約80種類もあり、画一的に見られがちだったシニアのプライベート活動が多様化していることが分かります。 このことは、それだけプライベートを自分なりに楽しむ、もしくは楽しもうとするシニアが増えていることを示しています。



2-2. 「H. 働き続けたい」 理由

─ポイント─

☆ 「H.働き続けたい」理由は、『自己実現のため』『経済的理由のため』『健康目的のため』の3つに大別可能。

☆ 「仕事を通して社会貢献」、「仕事=自分のやりたいこと」という記述が目立つ = 収入以上に、仕事を通した自己実現が重要。


※ 「仕事を通して社会貢献」は、「I.世の中の役に立ちたい」には含まれません。 


 「H.働き続けたい」の記述の中には、その理由を書いている人もいます。その理由として目立ったのは、以下の通りです。
①<仕事を通して社会貢献>  ②<仕事=自分のやりたいこと> ③<収入のため>  
④<これまでの経験を生かしたい>  ⑤<経済的に自立して周囲に迷惑をかけない>  
⑥<社会との繋がりを保つため>  ⑦<健康のため>

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 最も多かったのは、①<仕事を通して社会貢献>という趣旨の記述でした。 例えば、「仕事を続けていきたいと思いますが、自分自身の『仕事』に対する意味がお金を稼ぐことから地域社会の役に立つことに変わってきました」(59歳、男性)という記述からは、この男性が仕事を通して地域社会への貢献を目指していることが分かります。
 また、<仕事を通して社会貢献>という記述をしている人は、地方創生事業など、ビジネスと社会貢献を兼ねた「ソーシャル・ビジネス」を希望する(現在、すでに行なっている)ケースが多いです。
 その他、同項目には「納税で貢献」「働くことで社会人としての役割を果たしたい」という記述も含まれています。

 次に多かったのが、②<仕事=自分の夢、やりたいこと>という趣旨の記述をしている人たちです。 この記述者のほぼ全員が、経営者、自営業者、または以下の記述者のようにクリエイブな仕事をしています。
 「会社員ではないので年齢でのリタイアはありません。 ヴォーカル教室を主宰しており、現役でヴォーカルを教え、時々ライブ活動をしております。黒柳徹子さんは80を過ぎていらっしゃるし、元気でお仕事されている方のように、私もそうありたいと思っています。」(66歳、女性)

 ③<収入のため>という趣旨の記述をしている記述者も、多く見られました。 この内、「小遣い程度の収入で良い」と記述している人は少ないので、記述内容からの断定はできませんが、<生活費としての収入のため>という人も複数いると考えられます。 ちなみに、別項目となりますが、⑤<経済的に自立して周囲に迷惑をかけない>という旨の記述をしている人もいます。

 その他、④<これまでの経験を生かしたい> 、⑥<社会との繋がりを保つため> 、⑦<健康のため>という記述も目立ちました。 

 ①~⑦の項目を関連のある項目ごとに分類すると、以下の図のような大項目を見出すことができました。 「K.働き続けたい」理由は、『自己実現のため』『経済的理由のため』『健康目的のため』の3つに大別できるようです。 
 現在、日本では労働力不足が叫ばれています。シニア労働者の獲得を目指す事業者側は、“いかにシニアの『自己実現』に配慮するか”が鍵になりそうです。

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2-3. 「I. 世の中の役に立ちたい」 内容の詳細

─ポイント─

☆ 「地域社会活動」「子ども支援」が最も人気。
  「シニア支援」「国際的な活動」が次点。



 「I. 世の中の役に立ちたい」の中には、将来やりたい(現在やっている)活動内容を書いている人もいます。 その内容で重複が見られたのは、以下の通りです。
①<地域社会活動>   ②<子ども支援>  ③<シニア支援>
④<次世代支援(人材育成)>   ⑤<日本在住外国人への日本語指導> 
⑥<自分のこれまでの経験を活かせること>   ⑦<海外支援>  
⑧<ガイド>   ⑨<環境問題>   ⑩<オリンピック>   11<医療系>

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 最も多かったのは、①<地域社会活動>です。町内会の活動など、<地域社会活動>は、最も取り組みやすい活動と言えそうです。 また、そこには、他者のためだけではなく、自分にとっても快適な生活圏を作りたいという思いもあるようです。 例えば、次のような記述がありました。
 「60代は、まだ、なにか地域に貢献できることがあるのであれば、ボランティアなどをしていきたいと思っています。70代は、外へは難しくなるかもしれません。 それなら、家、または近所で、コミュニケーションがとれる場所をつくっていきたいと思います。 80代は、まわりにお世話になりながら、日々をていねいに過ごしていきたいと思います。 その『まわり』は60代、70代の間につちかったご縁で、一人にはならないと信じています。」(57歳、女性)

 次いで多かったのが、②<子ども支援>です。内容は、教育支援がほとんどです。 他には、子ども食堂、母親支援(間接的な子ども支援)という記述がありました。
 また、子ども支援ではありませんが、④<次世代支援(人材育成)>の記述もありました。

 ③<シニア支援>という記述も目立ちました。内容は、介護などの医療系、シニア向けのレクリエーション活動がほとんどです。 「 認知症カフェ」という記述もありました。
 「本来人と関わる事が好きなので、仕事を辞めた後、地域や周りで多くなっている認知症の方や自分の勉強の為にも認知症カフェの立ち上げに参加しています。」(71歳、女性) 

 ⑤<外国人への日本語指導>と、⑥<自分のこれまでの経験を活かせること>という内容の記述がそれぞれ4つありました。
 <自分のこれまでの経験を活かせること>という記述は、 先に見た通り、「K.働き続けたい」理由にも多く見られた記述です。 ⑤<外国人への日本語指導>、⑧<ガイド>もこれまでの語学経験を活かす活動だと言えます。 また、④<次世代支援(人材育成)>も「経験や技術の継承」をその内容としている記述が多く、これも<これまでの経験を活かせること>に含めることができそうです。

 ⑦<海外支援>への記述は少ないですが、強い想いと信念が特徴的です。
 「ネパールのポカラに洋裁技術者の養成のため、指導に行く話が進んでいます。 低開発国の少女たちが幸せになれる機会を創りたい。そのために洋裁を学んでいただき、自活できるようになったら、幼いうちから売られてしまうという悲しい現実が少しは改善されるのではないかと思います。」(78歳、女性)




3. 年代、男女別に見られる特徴

 項目分類表に従って、年代・男女別に①~⑩のグラフを作成しました。
 次に、このグラフに表れている、各年代・男女別の特徴を見ていきます。

※ 記述の多いものを左から順に並べています。 
   数値は、それぞれ%です。例えば、グラフ①では、40、50代男性(総数27人=n)の56%が、「 K. 働き続けたい」という  
   趣旨の記述をしたことを示しています。

※ それぞれの年代・男女別カテゴリーにて、類似の記述が2人以上見られた場合、その年代・男女の特徴を示す可能
   性があるため、グラフに反映しました。逆に、該当者が1人のみの項目は、グラフから省きました。  
   ただし、nが多い場合、該当者が2人以上いる項目でも省力している場合があります。






3-1. 世代別に見られる特徴

─ポイント─

☆ 加齢とともに関心事が「仕事」から「社会貢献活動」に変化。

☆ 今後の人生を「模索中」という記述が60代に目立つ。



 40,50代では、男性と女性の1位~4位が共通となっています。働き続けること、自分の趣味を追求することが重視されているようです。 また、「H.働き続けたい」が一位となっていますが、「働き続けざるを得ない」という声も挙がっています。

 60代に入ると、男女ともに社会貢献活動の順位が2位に上がり、(65-69では一旦男女とも3位に後退しているものの)、加齢とともに社会貢献意識が高まっていることが示されています。
 内閣府の「社会意識に関する世論調査」(平成29年)では、50代をピークに社会への貢献意識が加齢とともに低下していく様子が示されており、この調査とは対照的な結果となっています。

 また、60代では、「P. 模索中」という記述が目立ちました。生活の大きな部分を占めていた仕事がすっぽりと無くなり、当惑している人が少なくないようです。
 「定年後の第2の職場も後2年余で退職、その後どうしようかと途方に暮れます。 合唱やベリーダンス、水泳、海外を含めた旅行はやっていますが、今まで仕事人間だったので、毎日が日曜になることの恐怖があります。」(62歳、女性)
 「残りの人生、少しでも充実した時間にしたいものですが、会社生活の9時5時の10時間近くが抜けた後の生活の「核」は、未だに模索中です。習い事や学問への再挑戦も視野に入れつつ、当分、模索を続けていきたいです。」(68歳、男性)
 早めのプラン設定が、充実したシニアライフの鍵となるかもしれません。 




3-2. 男性に見られる特徴

─ポイント─

☆ 仕事よりも社会貢献 = 70歳が境目。

☆ 70歳付近を境目に労働意欲が大幅に低下する可能性。

☆ 人間関係に煩わされることなく、「のんびり過ごしたい」男性。



 65-69歳以下の男性では、「H.働き続けたい」という記述が最も目立ちます。 また、60-64歳以下の男性には、「K.友人との関係を大事にしたい」という記述がほとんど見られません。 これは、他の世代では男女ともに複数見られる記述です。 やはり、現役世代男性の最大の関心事は仕事にあるようです。

 ところが、70代に入ると、労働に関する記述が極端に少なくなる一方、「I.世の中の役に立ちたい」の記述が急増します。
 内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成26年)によると、「75歳ぐらいまで、またはそれ以上の年齢でも収入を伴う労働を希望する」人が、40%近くいることが示されていますが、実際には70歳ごろを境に労働意欲は大きく低下するのかもしれません。

 その他、男性には、「B. のんびりしたい」を記述する人が多く見られました。(女性は、どの年齢階層でもランク外です。)特に、煩わしい人間関係からの解放を望んでいるようです。
 「これからは、経済的余裕の許す範囲で気ままに生きたい。 気ままの第一は、人間関係に煩わされないで済むようにのんびりです。」(70歳、男性)



3-3. 女性に見られる特徴

─ポイント─

☆ いつまでも、友人との交流、趣味や旅行で多彩なプライベートを楽しみたい
   シニア女性。

☆ なんだかんだ言っても家族が大切。


 女性は40,50代では、「H.働き続けたい」が1位でしたが、60代以降は常に「A.趣味や旅行」が1位です。
 また、女性では「K.友人との関係を大事にした」という記述が、各年代に複数見られます。 こうしたことは、趣味や旅行、友人との交流を通し、多彩なプライベートを楽しもうとするシニア女性の実像を写していると言えそうです。

 70-74歳を除いて、女性では常に「M.家族との時間を優先」に関する記述が複数見られました。 女性には、「F. 妻・母親・娘という役割からの解放」を望む記述も複数見られましたが、実際には、男性よりも女性の方が家族を大事にしていることが分かります。




2018年3月27日
willbeシニア総合研究所 主任研究員 米倉達也/廣森真史



本件に関するお問い合わせ:willbeシニア総合研究所
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