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第8回 骨量の減少

2016.07.20



50代は健康の曲がり角。体が大きく変わり始める頃です。
元気だと思っていた人も、以前のような健康管理は通用しません。
そして今や人生90年、100年という超高齢社会。
50代からの体のメンテナンスが、後々のシニアライフを左右します。
私たちのもっとも身近なお医者さん=ホームドクターの常喜眞理さんに
予防医学の視点から、健康管理の秘訣を語っていただきます。

☆常喜眞理さんプロフィール

☆このコーナーでは、常喜さんへのお便り・体に関する疑問を募集しています。
こちらまでmember@club-willbe.jpまで。


加齢とともに骨はやせ細っていきます



151023joki_karada_icon60歳からは5年に一度、骨量測定をお忘れなく

加齢により骨は徐々に弱くなり、骨折しやすくなります。高齢からの大腿骨や骨盤の骨折はそのまま寝たきりになりかねないため、生活に大きく関わるものです。骨の老化にはしっかり注意を払いましょう。

まず、加齢と骨の変化について。
骨もまた他の臓器のように新陳代謝を繰り返し、日々作られることと壊されることが同時に行われています。しかし加齢により壊される割合が多くなり、骨量が低下。骨が脆くなってしまい、骨がスカスカになる骨粗しょう症と呼ばれる症状があらわれます。
女性で60歳以降で約25%、80歳以上では男女とも50%以上が骨粗しょう症になっています。

特に女性は、閉経期以降に女性ホルモンのエストロゲンが減少する影響で、男性よりも骨量の低下が早く始まります。
閉経の世界平均が50.5歳から51歳。閉経後もしばらくはエストロゲンが出続けるのですが、5〜6年後からかなり減少していきます。そこから5年ほど経った60歳が、最初の骨量チェックの目安です。20歳代の平均値の70%以下であれば、骨折予防のための医療機関での治療が必要です。

骨量の測定法はカカトや手から測定する簡便なものよりも、微量のX線を用いたデキサ法と呼ばれるタイプをおすすめします。大病院や大学病院に限られますが、大腿骨や腰椎の骨量を正確に計ることができます。
骨量は急激に変化するものではなく、骨量の低下がわかった後は尿検査や血液検査で、その進行具合を読み取ることができます。5年に1度の測定で十分なので、多少手間はかかりますが、できるだけ正確を期してください。

なお骨の老化は遺伝の影響が70%もあることがわかっており、両親のいずれかに大腿骨頸部(大腿骨と股関節の接合部)骨折歴があると、骨粗しょう症リスクは約1.5倍となります。該当する方はもちろん、60歳になったら忘れずに骨量の測定を。




「女性の骨量の経年的変化」(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年度版より一部改変)



151023joki_karada_iconカルシウムをビタミンDで吸収。そしてビタミンK2で沈着

個々人の骨の強度は、思春期からの食習慣や運動などで決まるものですが、大人になってからの生活習慣によっても左右されます。今からでも「骨を守る生活習慣」を実践してください。

まず低体重、肥満。そして喫煙、一日三合以上の飲酒は、大きな悪影響があります。これらは他の多くの病気とも関連しているので、すぐに改善しましょう。

次に食生活ですが、骨といえばカルシウム。乳製品や魚介類、大豆製品、野菜・海藻類からバランスよく摂取することを心がけてください。カルシウムの吸収率を高めるビタミンDも重要です。鯖やイワシなどの青魚、椎茸などに含まれています。一日に15分程度、陽を浴びるのもいいでしょう。
そして摂取・吸収したカルシウムを骨に沈着させるには、ビタミンK2の働きが必要です。納豆、パセリ、しそなどに多く含まれます。

ちなにみカルシウム系のサプリメントをやたらと摂る方がいらっしゃいますが、カルシウムだけを過剰に摂取することは、かえって骨の破壊を進めます。くれぐれもほどほどに。そして関連ビタミンの摂取をお忘れなく。

運動も大切です。体を支えているのは骨だけではありません。骨と筋肉が一緒に機能しているわけですから、筋肉を維持することも骨を守ることにつながります。室内でできる簡単な運動で結構です。スクワットと開眼片脚立ちなど、1日3分でもよいので続けましょう。



骨の老化は自覚症状もなく、静かに忍び寄るものです。外から見てもわかりません。しかし骨量の低下を見過ごしていると、若い頃には考えられないような場面で骨折することが起こります。私の知っている例では、ヨットに乗っていて、大きく揺れた衝撃で腰椎を圧迫骨折した方がいらっしゃいました。ちょっとした尻もち、転倒も同様です。

60歳からは自分の骨量をきちんと把握すること。そして骨を守る生活習慣を心がけてください。

(終わり)





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