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100年後も残る映画を作りたい。  3/3

松井久子さん(映画監督/脚本家/プロデューサー)

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vol.3 女だけに見えた、「ほんとうの全共闘時代」


残間
男性も結構、観に来ているらしいですね。観客の年代層はどれくらいなんでしょう?

松井
40代後半から50代にかけてが多いですね。
ウーマンリブや全共闘のことなどをニュースなどで見て、なんとなくは知っているけれど、細かいことまではよくわかっていないような人たち。
私達と同世代の人たちは、むしろ観るのに抵抗があるようです。男性は特に。

映画の感想をくださった朝日新聞の映画記者の男性がいらしたんですね。その人も50代ぐらいでしたけれども。
曰く「今まで多くの映画監督が全共闘を題材にして映画を作ってきたが、どれも腑に落ちないものばかりだった。これを見て目からうろこです」と仰っていました。
ぜひ女性からの視点で全共闘を題材にした劇映画を作ってください、とも。

残間
そうか、ウーマンリブの時代って全共闘の時代でもあるんですものね。映画は冒頭から全共闘世代に関するニュース映像の紹介から始まりましたし。
もしかするとあの時代って、女の眼を通したほうがクリアに見えるのかもしれませんね。

私も当時、バリケードの中にいた女友達に会いに行くことがありました。
バリケードの中で女がやる仕事って、お茶汲みやおにぎりを握ることなんですよね。ちょっとショックでした。まるで銃後の守りみたいで。
序列からの解放とか言ってるくせに、バリケードの中にはやっぱり、「男>女」の序列関係がある。

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松井
そうなんです。だけど、男の監督が描く全共闘映画には、そういう描写が出てこないんですよ。
全共闘の時代がまさに青春だった人間は、あの時代をロマンとともに描きたいから。
上手くいってなかった部分は恥部なので、なかったことにする。

残間
田中美津(※)さんのインタビューにも驚きました。連合赤軍のトップだった永田洋子と直接会って、山岳基地にも招かれている。
リンチで殺された妊婦の方にも会っているわけですよね。
これはもう、歴史そのものを見ているといってもいいぐらい。

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※田中 美津(たなかみつ)
『何を怖れる〜フェミニズムを生きた女たち』出演者 1943年生まれ。
日本のウーマンリブ運動の伝説的な指導者。現在は鍼灸師。
1971年には「ぐるーぷ闘うおんな」のリーダーとして、「エス・イー・エックス」など他のリブグループと共に新宿に「リブ新宿センター」を設立した。著作『いのちの女たちへ』は日本ウーマンリブの古典的名著といわれる。
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松井
田中さんは、山岳基地に招かれた71年10月ごろまさにウーマンリブ界のスターだったんですよね。彼女を引き込めばたくさんの女性が連合赤軍に参加すると永田は踏んでいた。
でも田中さんは「何か違う」と、直観が働いたんでしょうね。それきり二度と会うことはなかったそうです。

あさま山荘事件と連合赤軍は、全共闘の運動にピリオドを打ちました。だけどウーマンリブの人たちは、「幻想が壊れた」と言ってボーッとしてはいられなかった。

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残間
ウーマンリブ活動にも体制に対する反対運動というところが強くありましたよね。それが一般の女性たちには受け入れづらかったと思います。
もちろん、声高に言わざるを得ない部分もあったのだとは思いますが。

松井
それまで問題だと思われていなかったことに問題提起をする時って、過激にならざるを得ないのかもしれませんね。
田中美津さんは「火のないところに煙をたてなくちゃならなかった」と表現されていましたが。

それから、マスコミの過剰な報道で間違った方向にウーマンリブのイメージが定着されてしまったということは、多分にあると思います。
ウーマンリブっていうと、榎美沙子さんのことを思い出す人が多いでしょう。

残間
中ピ連ですね。ピンクヘルメットをかぶって、不倫している男性の会社に押し掛けたりした。

松井
そうです。彼女らは視覚的に訴えるものがありましたし、センセーショナルな問題提起に長けていた。

残間
榎さんって、フェミニストの中ではどういう位置づけなんですか?

松井
彼女についてはどなたも語ろうとしなかったですね。ウーマンリブの方たちは今でも皆さん繋がっていますが、榎木さんの消息は誰にもわからないようです。
でもあの頃は、ウーマンリブ=中ピ連というイメージがマスコミによってつくられていた。

残間
それぞれがそれぞれの活動を経て来て、年を重ね、老いを意識する年齢になった。
映画では今だからこそ言えること、そして今だからこそ言わなければならないことが、淡々と語られているんですね。
この映画はあの時代を理解する上で、是非とも男性に観てほしいです。

さて、最後に今後のことをお聞きしましょうか。
次に撮るとしたら、テーマは何でしょう。

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松井
残間さんと前にお会いしたとき、「一緒に『大人のラブ』の映画を作りたいわね」と話しましたね(笑)。
シニア層がこれだけ増えてきているのに、シニアが観るような映画があまりないでしょう?
シニア層が観ても面白いような、深い「大人の恋愛」を撮ってみたいというのは、今も漠然とですけど、ありますよ。

でも、歳を重ねるごとに、私のやりたいことがどんどんマイナーになっていくという気もしています。自分にも他人にも媚びを売らずに、やりたいことをやっていきたいと、どんどん頑固になっていくというか(笑)。

残間
私は、若さを追求したり、顔や身体を切ったり貼ったりはしませんが、突き詰めると、やはりどこかで老いることが怖いんですよ。だけど松井さんの生き方って、老いることの強さを体現しているみたい。

映画の中で上野千鶴子さんが、「女が強いのは弱者を抱えこんでいるからだ」と言っていましたよね。
介護の現場や幼い子供を身の内に抱えているから、女は強いんだという言葉。
日々、老いて弱くなっていく自分にも当てはまる言葉なんじゃないかと思って、勇気づけられました。

大人の恋愛映画、出来上がったら誰よりも先に観せてくださいね。
今日はありがとうございました。


松井
残間さんがプロデューサーをしてくださるなら(笑)。
ありがとうございました。

(終わり/2015年3月取材)


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★『何を怖れる』劇場情報
『何を怖れる』は現在、大阪と北海道での劇場公開が決定しています。
・大阪:5月下旬(詳細未定)、第七藝術劇場
・北海道:5月9日(土)~22日(金)、シアターキノ

また、それ以外の地域での上映会も行われる予定です。
詳細についてはオフィシャルサイトをご覧ください。




vol.1 時代に身を投じた女性たちを描く

vol.2 フェミニズムは「自由」を求める思想

vol.3 女だけに見えた、「ほんとうの全共闘時代」








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