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“自分の文章”を書く面白さに目覚めました。 2/4

岩崎俊一さん(コピーライター)

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vol.2 文章は読む人のもの。話は聞く人のもの


残間
エッセイから広告コピーにも拡げて、少し岩崎さんの「文章」に対する思いをうかがいましょうか。

よく広告のコピーというと、派手なキャッチコピーを連想される人が多いかもしれませんが、岩崎さんは“ボディコピーの人”ですよね。企業や商品に込めた思いを、真摯に語るというか、ロジックがきちんとしている。
もう30年以上、この職業をやっているわけですが、今のようなスタイルを確立したのって、いつぐらいからなんでしょう。

岩崎
前の本(『幸福を見つめるコピー』)を作る時、30歳そこそこの時の自分の作品、ボディコピーとかを読み直したんですが、これがそんなに悪くないんですよ。
あんまり文章って変わってないですね。

やっぱり文章というのは自分の“呼吸”と同じで、リズム感が同じなんです。だから変わらない。
自分が気持ちよく呼吸できるように書いている感じで、それは30の時から変わってないんだと思います。

残間
やはり作品は音読します?

岩崎
1人のときはしますよ。

残間
私も原稿を書いてると、自分の文章を音読することがあるんですが、時おりつっかかることがあります。そこはダメなんですよね。

岩崎
そうそう。僕も若いコピーライターに文章を書かせる時に、よく言います。「声に出して読んだ方がいいよ」って。

つまりつっかえたり、引っかかったりするのは、そこにキズがあるからなんですよ。スムースに絹のように最後までつながっているのがいいんです。

残間
文章というものに興味を持ち始めたのって、いつ頃からでしたか。

岩崎
はっきり意識したのは高校の時です。

残間
小さな頃から本に親しんで、という感じではないのですか?

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岩崎
ものすごく読んだ、という感じではないですね。
それに僕は文学というのが、その頃はよくわからなかった。
夏目漱石の『こころ』を読んでも、この作品は何がテーマだとかいうことよりも、中に出てくる手紙の文章が美しいなあとか、そっちの方に意識が行っちゃうんです。

残間
(笑)試験問題は上手く解けないクチですね。

岩崎
これは人間の苦しみを書いているとか、人間の罪について書いてるんだとか、そこにあまり意識が行かずに文章の美しさに目が行った。高校の時に『こころ』に出てくる手紙の文章に魅せられて、将来、文章を書く仕事をしたいなあと、思っていました。

残間
手紙ねえ…………

岩崎
まあ、そうやって、手紙から文章に目覚めたんでしょうね。

残間
人に思いを伝えるということでいえば、手紙は最も基本的なアイテムのひとつです。

岩崎
そうなんですよ。
手紙というのは話をするのと同じで、相手がわかりやすいように理路整然と、しかも飽きさせないように淀みなく書くことが大事です。言ってみれば、池上彰さんのような喋り方。

残間
さらに、そこに思いを入れるわけですね。

岩崎
ええ、それはもっと後になってからなんですが。
とにかく手紙の文章というのは、リズムが美しくないといけない。これは文章の中でも、特に手紙に突出した特徴だと思います。

残間
うーん、今の岩崎さんのボディコピーにつながるような、“文章への目覚め”ですね。

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岩崎
それから迂闊にも、わりと最近になって気づいたんですが、文章というのは書く人のものじゃなくて、読む人のものだということ。話は喋る人のものではなく、聞く人のものだということ。
それがつくづくとわかってきたんです。

これ、料理で考えると一番わかりやすいんです。料理は作る人のものではなく、食べる人のものでしょ?

残間
そうですね。

岩崎
そうじゃないと意味がないんですよ。
いくら「旨いだろう!」とか言っても、食べる人が「不味い」と言えば、それで終りです。
だから文章書く時も、読む人がわからないのでは意味がない。

そりゃ、若干難しい表現が入ることもありますよ。それは相手に考えてもらうという面白味があるので構わない。
とにかく読む人、聞く人が、どう受け取るかということを考えないで書いたり話したりするのは、無価値どころか無謀ですよ。

残間
権威みたいなものと対極のスタンスですけど、本来、作り手というのは、そうでなきゃいけませんよね。

岩崎
特に広告はそう。そうでないと一発ヒットを飛ばしても、長続きしませんね。

(つづく)


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◎岩崎俊一さんのおもな広告作品

父は1日に1度だけ甘い時間を残した。(明治屋・Myジャム)
ベストセラーより、ロングセラーを。(同上)
バケーションを、ありがとう。(同上)
聴こえてくるのは、いのちです。(ソニー・ディスクマン)
音楽を聴いている。ぼくは生きている。(ソニー・ウォークマン)
少女は無口になった。夏の終わりだった。(パルコ)
父は、君が好きです。ただ、それだけです。(MIKI HOUSE)
おとなから幸せになろう。(長谷工コーポレーション・ブライトンホテル)
負けても楽しそうな人には、ずっと勝てない。(セゾン生命保険)
自分の欠点を人と一緒に笑えるのは、その人の長所です。(同上)
毎日ビールを飲んだ。それでも渇いていた。(キリンビール)
かじっていたのは、夢でした。(明治製菓・ミルクチョコレート発売70周年広告)
ミゼットを飼おう。(ダイハツ・ミゼットII)
髪は弱いものと考える。(資生堂・スーパーマイルドシャンプー)
美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。(資生堂・アクテアハート)
仕事は人を幸せにできる。(TOYOTA・WINDOM)
21世紀に間に合いました。(TOYOTA・PRIUS)
英語を話せると、10億人と話せる。(ジオス)
あなたがいてくれて、ありがとう。(日本財団)
やがて、いのちに変わるもの。(ミツカン)
お味噌は、からだと生きていく。(マルコメ)
さ、世代コータイ。(KDDI)
人間という肩書きで、生きようと思う。(クラブ・ウィルビー)





vol.1 エッセイというよりショートストーリー

vol.2 文章は読む人のもの。話は聞く人のもの

vol.3 相手の思いを探り当てる

vol.4 昭和30年代は、日本が壊れていく始まりだった