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私が歌い続ける理由。<後篇>

私みたいに歌う人はあまりいないんじゃないかな
本当にしんどい時はある。でも約束は破れない
残間
所属事務所の倒産、その後を支えてくれていた安田さんの死。「やるしかない」といっても、しんどい時というのはあったんじゃないですか。もう何もかもやめてしまおうとか。
山崎
正直死ねるもんならと思ったこともあります。でも死ねない。それは安田さんと結婚前に約束したから。決して死を選んだりしないって。安田さんは安田さんで、私はいったん約束したら絶対にそれは破れない性格だって、わかってたんでしょうね。だから絶対死なないって約束させた。
プロになる時も悩みましたもの。歌が好きなら部屋で独りで歌っていればいい。外で歌うということ、プロになるってことは歌を仕事にするっていうこと。それは嫌だなって思いました。仕事にすればいろんなことが降りかかってくるだろう。売れる曲を書かなきゃとか。ウケる歌を歌わなきゃとか。そうやって歌を嫌いになってしまうのが怖かったんです。でも結局、悩んだ挙句に18の時に決めたんです。絶対に歌を嫌にならないぞって、自分と約束しました。
プロになる時も悩みましたもの。歌が好きなら部屋で独りで歌っていればいい。外で歌うということ、プロになるってことは歌を仕事にするっていうこと。それは嫌だなって思いました。仕事にすればいろんなことが降りかかってくるだろう。売れる曲を書かなきゃとか。ウケる歌を歌わなきゃとか。そうやって歌を嫌いになってしまうのが怖かったんです。でも結局、悩んだ挙句に18の時に決めたんです。絶対に歌を嫌にならないぞって、自分と約束しました。
残間
自分と約束をして、決めるのね。
山崎
負けず嫌いなだけ。自分に負けたくない。だから後には引けない。それに安田さんが私の歌を聞きたいに決まってます。私の一番のファンだったから。自分が弾くギターに私の歌が乗る事が好きだったんだと思います。叶わなくなった以上、安田さんの為に歌う義務すら感じる。
残間
そういう指標があるのもいいですね。
山崎
安田さんが「もういいよ」と言ってくれない限りやめられません。

残間
亡くなっても、本当に励みになっているのね。
山崎
ただし死んだり歌をやめたりしないかわりに、生き急ぐかもしれません。食べることも忘れて(笑)。
私にとって歌とは、自分の思いを解き放つこと
山崎
こんな風に言うと、何だか無理して歌ってるみたいに聞こえますが、私は私で自分の歌に対する感覚が面白いなって感じてます。私みたいに歌う人はあまりいないんじゃないかな。他の歌手とはかなり違うと思っていて、それをやめるのはもったいないなと。
残間
違うってどのあたりですか?
山崎
歌い始めれば、すぐにお客さんは見えなくなります。つまり誰かに何かを届けようとか思ってないんですよ。語弊があるかもしれませんが、ある意味、誰も聞いてなくても関係ない。客席の一番後ろに自分がいて、そいつが一番厳しくて一番私をわかっている。そいつに向かって歌っているんです。
たまに役者の人に言われるんですけど、ハコさんも歌の世界の中で演じているんですよね、私たちと一緒だって。でも私は何かを演じているんじゃなくて、ただただ自分の思いを解き放つために歌っています。歌っている時は何も考えてない。私にとって歌は“気持ち”そのものです。だから技術はいりません。技術はそもそも気持ちに介入できないし。もちろん技術を研ぎ澄まして歌うことは、それはそれで素晴らしいですよ。でもそれは私の感覚とは違う。
技術に近いものがあるとすれば、歌い出したらどこに行くかわからない“気持ち”に備えて、ちゃんと準備をしておくことかな。その準備さえできていれば、ステージで自由に飛べます。
たまに役者の人に言われるんですけど、ハコさんも歌の世界の中で演じているんですよね、私たちと一緒だって。でも私は何かを演じているんじゃなくて、ただただ自分の思いを解き放つために歌っています。歌っている時は何も考えてない。私にとって歌は“気持ち”そのものです。だから技術はいりません。技術はそもそも気持ちに介入できないし。もちろん技術を研ぎ澄まして歌うことは、それはそれで素晴らしいですよ。でもそれは私の感覚とは違う。
技術に近いものがあるとすれば、歌い出したらどこに行くかわからない“気持ち”に備えて、ちゃんと準備をしておくことかな。その準備さえできていれば、ステージで自由に飛べます。
残間
そういえばハコさんのステージを見ていると、「一体ハコさんはどこに行ってしまうんだろう」という怖いような感覚に襲われることがあります。高い声を出しているのか低い声をだしているのか、よくわからない瞬間もありますし。

山崎
もしかすると〝私の気持ち〟と〝私の歌〟って、物体と影みたいなものなのかもしれませんね。決して追いつけない。でも、だから歌い続けられるのかも。
残間
……… そんな話を聞くと、ハコさんの歌が今までとまた違って聴こえてきそうです。5/24の東京公演がますます楽しみになってきました。
それでは来年、51年目の展望は?
山崎
50周年公演はホールコンサートにこだわりましたが、来年からは地方の小さなライブハウスを回るのもいいかなと思ってます。沖縄でも石垣島とかではやってませんし、新潟なら佐渡島とかもやってない。
残間
島巡りツアー! 楽しそうですね。
山崎
歌だけでなく、芝居や映画の仕事ももっとやりたいですね。出演したり音楽を担当したけど、まだ公開になってない映画もあるんですよ。
残間
知らない人もいるかもしれませんが、ハコさんは渡辺えりさんとの交友もあって、結構お芝居や映画にも関わっているんですよね。来年はいろんなところでハコさんに出会えることを楽しみにしています。今日はありがとうございました。身体には気をつけてくださいね。
山崎
ありがとうございます。
※東京公演以降の50周年ライブの予定は、5月末頃に発表予定です。詳しくは山崎ハコさんのオフィシャルサイトで。『山崎ハコの世界』

(終わり/2025年4月取材)
前篇 いろいろ大変ですが、一人でなんとかやってます
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