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生成AIとどうつきあうか。 Part 4

坂村健さんインタビュー

Part 4 いいものをつくりたいだけなんです

坂村流のリーダーシップとは

残間
話は昨年に受賞した『IEEE井深大コンシューマー・テクノロジー賞』の話に戻りますが、受賞理由のひとつが「プロジェクト推進する上でのリーダーシップ」でした。
坂村さんというと研究者という印象が強くて、何かコツコツ仕事をしているイメージがあったんですが、考えてみればトロンは100人を超えるスタッフを抱えて、さらには多くの企業なども関わっている大プロジェクトです。坂村さんはそのリーダーなんですよね。坂村さんなりのリーダーとしての指針、マネジメント哲学みたいなものってあるんでしょうか。

坂村
指針ねえ………指針と呼べるものは特にないんですよね………。
基本的に僕はモノを作る側の人間で、新しいことを創造していく仕事をしています。だからどうやったらいいものができるのかという点に絞って、多くの人とディスカッションをすることでプロジェクトはまとまっていってるんじゃないですかね。

対象がはっきりしているからやりやすいんですよ。新しいコンピュータを作るとか、AIをいろんなものに使いたいとか、そういう目標に対して小さなマイルストーンを積み重ねることによって、最終的なところに辿り着くという手法なので、特にマネジメントで苦労するようなことはないんです。だいたいビジネスをやってるわけではないので。何てったってタダで出してるんだから。

残間
フリー(アーキテクチャー)なだけに自由度も高いと。
坂村
それで違っていたら軌道修正する、今で言うアジャイルというやり方で昔からやってきました。まあアジャイルというのは、悪く言えば行き当たりばったりですよ。でも最大の努力をして上手くいかなかったらしょうがない。

インターネットの考え方で言えばベストエフォート。通信の世界では今や基本の考え方ですよね。絶対はない。一回送ってダメだったらもう一回送送り直せばいいじゃない、というのがインターネットの考え方なんです。だから最悪時にも強いと言われてます。それまでの通信の考え方は「絶対」でした。そういう考えは今、先端ではないんですよ。絶対は無理だから。

残間
突き詰めていくという感じではないんですね。

坂村
突き詰めると言うより、ホイホイなんですよ、考え方としては(笑)。

残間
もっと日本もそうなっていくといいですよね。これまでは、みんな絶対的な答えを求めすぎていたかも。

坂村
絶対の安全・確実を要求するというのは古い考えなんです。昔のコンピュータはそっちだったんですけど、今はちょっと違うんですよ。

残間
でも一度ダメだとわかっても、そこでやめるわけじゃないんですよね。

坂村
そう。新しいイノベーションを起こそうという時に、これをやったら絶対うまくいくなん方法なんてあるわけがない。何回もトライするしかないんです。





僕の仕事に終わりはない
残間
坂村さんも今年の7月には73歳におなりですが、この先のことって考えてます?

坂村
こういう関係の仕事をしてる人って、僕の友人なんかもそうなんですけど、もう終わりがなくなっちゃうんです。生物的にダメになった時はしょうがないんだけど、とにかく次、次、次と行くんです。だからアートと似てるんじゃないかな。

残間
誰も、そして自分もこれで100点とは言わないだろうし。

坂村
絵を描く人って、最後まで絵を描き続けるでしょ? 制作枚数は減るかもしれないけど、ずっと描いてる。それと似てるような気がします。




(終わり/2024年5月取材)



Part 1 日本が誇る国産OS、トロンを知っていますか?

Part 2 気がつけば時代の先を走っていた

Part 3 生成AIは面白い!

Part 4 いいものをつくりたいだけなんです