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80歳? 次へ、前へ進むだけです。 前篇

19歳でファッションデザイナーとしてデビューし、今も鳥居ユキさんは毎年二度の新作を発表し続けています。そして80歳になった先頃、エッセイ集『80歳、ハッピーに生きる80の言葉』を発表されました。そこには今なお好奇心止まない、ヴィヴィッドな感性が溢れていたのでした。鳥居さんは昔も今も、次なるものを見据えています。こんな80歳に、私もなりたい!(残間/2023年11月取材)
(聞き手/残間里江子 撮影/岡戸雅樹 構成/髙橋和昭)
服作りはテーマありきでは始めない
残間
以前のインタビューから4年が経ちましたが、再び『YUKI TORII』のショールームにお邪魔させていただきました。周りには来年の春秋コレクションが数多く展示されています。相変わらず華やかですね。今は冬に向かう季節ですが、定番の花柄プリントもあって、ここにはもう春が来てるみたいです。


鳥居
私の頭の中は来年(2024年)の秋冬コレクションでいっぱいなんですけどね(笑)。秋冬物は時間がかかるんですよ。それに2月には中国が旧正月になって生産地が動かない。毛皮も染めるのに時間がかかるし、もう走るようにやってます。
残間
毎回のコレクションは、はっきりと言葉にするかどうかは別にして、まずご自身の中でテーマを決めて始めるものなんですか?
鳥居
テーマはやってるうちに膨らんで徐々にまとまってくるんですよ。最後にひとつのテーマに落ち着く感じですね。それぞれ服ごとに違うことを考えているようで、結局は同じ場所に着地する。最初は自分が欲しい形や色とか、皆さんが着やすいものとか、そんなことを考えているうちにまとまってくるんです。
残間
鳥居さんの作品は毎回違うんですけど、それでいてどこか同じ。
鳥居
そう根っこはね。
残間
だからみんな永く鳥居さんの服に魅かれるし、次に期待してしまうんです。


新しさだけでなく、旧作とのマッチングも考える
残間
服を作るにあたって鳥居さんの場合、どんなプロセスを踏むのでしょう。

鳥居
こういうことをやりたい、こういうものが欲しいと私が言うと、スタッフがまず何かしら提案してくれます。そこからピックアップして、では色をどうするか。色が決まれば素材はどうするのか、硬いのか柔らかいのか。あれこれやっているうちに素材が決まれば、ひらひらさせるのか、きっちりしたものにするのか、形が見えてきます。
残間
それは何人くらいが関わっているんですか。
鳥居
今は6人くらいですね。ただみんな一部しか担当してないので、結局まとめるのは私です。それぞれが持ち寄ったパーツを私が組み立てていく感じでしょうか。
残間
大変ですね。しかも毎シーズン、新しいものが求められる。
鳥居
そりゃそうですよ。じゃないとお客様に買っていただけません。そして新しいものでも、以前の私の作品とも合わせやすくないと。
残間
それ、すごく助かるんです。以前買ったものと合うと。
鳥居
そうですね。クローゼットの中身がわかっているお客様もいらっしゃるから、「前のあれとこれを組み合わせたら」といった提案もできるんです。


流行は無視しないけれど同調はしない

残間
気候も変わってきて、日本の四季も二季に近づいているとも言われています。ファッションと気候変動の関係というのは?
鳥居
まあ、そこは合わせていくしかないですね。ただ、この変動は凄すぎます。
残間
それで世の中に暗いニュースが増えてくると、やはりファッションには華やぎが欲しくなりますよね。すると鳥居さんの個性のひとつ、花柄というのはとても救われるんですよ。
鳥居
そうですね。時代には波がありますから。かつては黒白が多かった時代もありましたけど。あなたもそうだったでしょ?
残間
(笑)最近、ちょっと変わってきましたけどね。そういえば先日発表された本の中にも、「時々の流行は無視しないけれど同調はしない。自分の美意識を信じて時代とともに歩み続ける」という一節がありました。キャリア60年の方の言葉は説得力があります。
(続く)
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