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“高貴光齢”で行きましょう! 3/3



Part3 なぜか料理をしない女と思われる



残間
少しプライベートの話も伺いましょうか。今の暮らしぶりはどんな感じですか?

最近、私、夜型になったんですよ。それまでずっと朝型だったんですけどね。今は夜の10時くらいに寝て、朝の1時半くらいに起きるんです。なぜかというと、この時間帯こそが成長ホルモンがたくさん出て、体を回復させてくれるそうなので。

それで、そのまま起きてるんですが、月や星たちはもちろん、素晴らしい朝焼けが見られるんです。これを見ないのは人生でかなりの損をしてると思うくらい(笑)。もう50年も同じマンションに住んでいるのですが、これが我が家のテラスからの風景? と思えるほど、毎朝、得も言われぬ美しさやその移ろいに感動しています。

残間
いや森さん、それって朝型ですよ。むしろ超・朝型。

えっ、そうなんですか! 夜中の2時過ぎに起きてるんですよ。
でも、そう言われるとわからなくなってきた……(笑)

残間
(笑)あいかわらず森さんって面白いですね。
森さんとはずいぶん長いおつきあいになりますが、どんな日常を送っているのか想像しづらいタイプですよね。
このあいだ100歳になる女性に「あなた、料理なんかなさるの?」って真顔で言われて、すごくショックでした。しかも隣にいた彼女のお嬢さん…と言っても70過ぎですけど、その方まで深く頷いていていらして…。

残間
その方たちの気持ち、私もわかる気がします。森さんが料理するところって、あまり想像できないんですもの。でもいいことなんじゃないですか。ぬか味噌くさい女に思われるよりも。

そうでしょうか? 夫とずっと二人暮らしですけど、当然ながら料理はすべて私が作っています。そもそも昔から料理は大好き。高校時代からお弁当も自分で作ってましたし、夕飯づくりも手伝っていました。
それに笑われるかもしれませんが、「結婚って、相手のためにご飯を作ること」だと思っています。ご飯を作って相手が美味しいって言ってくれれば幸せ。朝ごはんを作れば、次は昼ごはん、それが終われば晩御飯。それを続けて行くのが結婚。おかしいかしら(笑)

残間
森さんを見ていると、ご主人は森さんを自由にさせてくれる大らかな方なんだろうなあと思ってました。でも年齢からいって、最近の男性のように細々と家事をやるタイプでもないだろう。そして森さんがやってるとも思えない。だから雑事は他の誰かがやってるんだろうと。

ショック! どうしてそう思われるんでしょうね。昔からよく「生まれっぱなし」とか「生まれたまんま」とか言われてますしね。「永遠(とわ)の少女」と言ってくださったのは、脚本家のジェームス三木さんだけでした(笑)。

残間
それは森さんが自由で、楽しそうに生きてることもあると思いますよ。今みたいな時代、楽しいって、すごいことですよ。森さんはコロナ禍なんて、あまり気にしてないんじゃないですか?

たしかにコロナだからといって、さほど気落ちするようなことはないですね。相変わらず、前を、いえ、上を向いています。運良くコンサートも、ひとつも中止にせずやりおおせてますし。ありがたいことです。

私、3回死にそうな事故に遭ってるんです。19歳でロスアンゼルスで交通事故、24歳の時はハワイで溺れそうになり、そして25歳、ギリシャの海で潜っていたら船のスクリューに巻き込まれそうになりました。あの3つの体験も大きいかもしれませんね。
残間
一度ならず、三度も失くした命なのだからと。たしかに死を意識した経験って大きい気はします。

三度命を授かった感覚、というのかしら。コンサートはもちろん、まだまだやりたい事はいっぱいあります。ただ心は上昇しても、それに反比例するように体力は減少していくばかりで、なかなか難しいところですね。

あ、ひとつ夢があって、お店をやってみたいんです。私が作った大皿料理を出してみんなに食べていただいて。私、大皿料理みたいな料理を作るのが好きなんですよ。よく隣近所に、特に階下の一人暮らしの方に出来立てをお裾分けしています。
で、食後に、チェレスタで「何か弾きましょうか?」とリクエストで演奏するお店。店名は『きいろ家』です。緑は年を経て黄色になるので(笑)。一~二年の限定営業なら手伝うわよ、と言ってくれる人もいるんですが、ま、これは無理かな。

残間
『きいろ家』いいですね。楽しそう。

それから最近、ヴァイオリニストの追っかけをしてます。佐藤久成(ひさや)という方ですけど、とにかく凄い人。今まで数多くの内外のヴァイオリニストの演奏を聴いてきましたが、この人こそが私の人生で、筆頭ですね。心が震えます。

8年前、東京文化会館の小ホールで初めて聴いたのですが、最後の音でスーッと涙がこぼれました。ふと見ると、隣に座っていた女性の頬にもスーッと涙が流れている! もうヴァイオリンの音と同時に“心の声”なんですね。いろいろと音楽への向かい方と在りようを教えていただいています。
よく一緒に演奏していただくのですが、音合わせした時はドキドキ、ハラハラ、そしてワクワク! いろいろな感情が渦巻きます。追っかけって、こういうことなのね、という心境かしら?

残間
素晴らしいですね。幾つになってもそんなに感動できる。まさに“高貴光齢”の境地でしょうか。そうありたいものです。

これからも森さんの活動を楽しみにしています。今日は長い時間、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。
今度、ぜひコンサートにいらしてくださいね!




(終わり/2021年10月取材)





Part1 即興演奏に惹かれるのは………

Part2 実は高校生からやり直したい

Part3 なぜか料理をしない女と思われる


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