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“高貴光齢”で行きましょう! 2/3



Part2 実は高校生からやり直したい



残間
音楽は何歳ぐらいから始めたんですか?
2歳の誕生日からヴァイオリンを始めたのですが、逃げ廻っていましたね。今思えば、2歳は早すぎました。言葉もまだおぼつかないんですもの。
ただ、隣に住んでたミチオちゃんが、よく歌を歌ってたんです。それで音を外すと、「ミチオちゃんのオトはヘン」って言ってたみたいです。たぶん早いうちにヴァイオリンで絶対音感が身についたからでしょう。

そういえば当時使っていた子供用の小さなヴァイオリンを今も大事にとってあるんですけど、ある時ヴァイオリンの中を覗いたら、ストラディバリウスって書いてあったんです! うちの家ってそんなお金があったの! と驚きつつその下を見ましたら、ローマ字で「KISO FUKUSHIMA」って書いてありまして(笑)。当時はその辺はおおらかだったんですね。
余談はさておき、そのヴァイオリンこそが私の音楽の原点になったと思っています。ピアノを始めたのはその後のことです。

残間
「音楽で生きて行く」って決めたのは東京藝大に入ってからですか? 仕事にしようと思ったのは。

その辺はわからないんですが、大学に入る一年前に既成の曲を弾くよりも、他の人が弾く曲を作りたいと思い立ったのはたしかです。作曲や即興は小さい頃からしていたんですよ。「雨の日の蝶々」とか「夢」「遠足」「グリーンのメヌエット」…。

残間
それで作曲科に行ったんですね。演奏家になろうとは思わなかった?

もちろん、最初はピアノ科に行きたかったんです。でも、初見が得意で楽譜を読むのがとにかく早くて…となると、ある程度まですぐに弾けてしまうので、さらに次の曲へ行きたくなって練習しなくなるんですね。まあ、演奏家には向いてなかったのでしょう。

残間
初見ですぐ弾けちゃうって、才能があるゆえの功罪ってあるんですね。

そうでしょうか。大抵の人は上手く弾けないところを何度も何度も練習して、技も音楽も極め、深めていくんですよね。

大学院卒業後はコンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽院)に行きたかったんですけど、藝大の大学院に入る時に母に言われたんです。「22歳まで仕送りしたのだから、後は全部自分でやりなさい。他の人はみんな社会人で自分で生活してるのよ」って。そこから私の運命は変わったんですよ。あの時に仕送りさえしてくれたら…。

何年か前、仲良しの加古隆さんを始め同級生の何人かに聞いたら、「えっ? 大学院も学費は親が出してたよ」ってみんな言うんです。当時は思いもしなかったこと。母が仕送りを続けていてくれたら、たぶん私はパリに行ってたんですよね。
とにかく仕送りが止まるので、焦りはしませんでしたが、食べなきゃいけないんで…。
残間
それで在学中からテレビの仕事をするようになったんですね。

はい。当時NHKで『テレビろうあ学校』という番組がありまして、映像を見ながら即興で音をつけたり作曲したり。それから『おはよう子供ショー』のポッポ姉さんをしましたね。三つ編みにして(笑)
子供番組には出てましたが、私は先生って向いてないんです。それより先頭に立って「行くぞー、ついていらっしゃい!」という感じのガキ大将のお姉さん。今でもそう。教えることは。あまり適してないと思っています。

残間
そうやっていつしかテレビで司会をやったり、エッセイも書いたりするようになるわけですね。

パリに対する思いは今も複雑

でも今思うと、当時は好奇心が旺盛すぎたというか、アンテナを張りすぎてましたね。ちゃんと音楽だけを、本業をやっておくべきだったと後悔しています。戻れるなら高校ぐらいからやり直したいです。
でも、こう言うとみんなそんなのイヤだって言うんですよね。若い頃に戻りたいだなんて。ならばみんな今に満足してるのかしら? 私は、そこがすごく知りたくて…。

残間
満足じゃなくて諦めでしょう。あるいは若い頃の苦労なんか二度としたくないのか。それに森さん、今もちゃんと本業やってるじゃないですか。側で見ていると、音楽というベースや軸がちゃんとあった上で、いろんな事にチャレンジして幅を広げているように感じますよ。そこが森さんの魅力というか。

そんな…、私の軸なんてフラフラと危ういものですよ。この歳になって本当にそう感じます。
やっぱりコンセルヴァトワールに行かなかったという事実が大きいんです。そのことを、ある女性作家の方にお話ししたら「今からでも行けば? 私なら行くわ。聴講生なら入れるでしょ?」って言われたんですけど、私はあくまでも“学生として”行きたいんです(笑)。でも、もうそれは所詮、無理なこと。
ですから私にとって「パリ」は憧れでもありますが、今でも心がズキンと痛む場所でもあるんですよ。




(Part3に続く)





Part1 即興演奏に惹かれるのは………

Part2 実は高校生からやり直したい

Part3 なぜか料理をしない女と思われる


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