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目指すのは、シニアの第三の息子。 2/2



(後篇)ロマンとソロバンは両立する


"生産の好き"を大事にしたい

残間
先ほどから、"好き"という言葉が何度か出ていますが、菊川さんがCEOを務める会社、オースタンスのビジョンは、「私の好きが、世界を、動かす。」だそうですね。

菊川
ええ。そのビジョンに共感して、うちの会社に入ってくる社員は多いです。ですからロマンの部分が大きい会社なんでしょうね。
要するに、半径5メートル以内の人をメチャクチャに幸せにしようということ。それを起点にビジネスを作って、世の中を動かしていくようなことをしていこうと。

それで"好き"には二つあって、美味しいものを食べたり旅行に行って楽しいというのは、"消費の好き"なんです。僕は"生産の好き"を大事にしたいと思ってます。
例えば、ご飯を作って誰かが喜んでくれるのが好きとか、旅行を企画してみんなが楽しんでくれるのが好きとか、つまり誰かに喜んでもらえる"好き"。

そこには愛情と意志があって、それを大事にしながら事業をやり、その事業をやっている自分も納得感がある状態を作りましょうと。そこにうちの社員も共感してくれてるんだと思います。みんな何かしら、会社がやっていることと自分がやりたいことに接点がありますね。

残間
最近は、若い人ほどそういうことを言うので、個人的にはとても喜ばしいことだと思っています。「そんなことやったって、1円にもならないよ」という思考には行かない若い人が少しずつ増えてますね。
菊川
日本のGDPもこれからあまり伸びないだろうし、一方で僕らは個性みたいなことを言われ始めた世代ですから、自分なりの幸せ感とかがあるのかもしれません。

とは言っても「なんでそんな儲かりそうもないことやるの?」って言われますよ。起業して5年くらいはジリ貧で借金もしてましたし。でも、「やりたいことをやるしかないでしょ!」というのが僕の信条なんで。

それからソロバンとロマンはトレードオフじゃないと思ってます。両方取れるんですよ。要は本気でソロバンを弾いたかということなんですよね。

残間
私もソロバンは駄目です。会員数としては「趣味人倶楽部」にはとても及びませんが、素敵なメンバーが集まってくれているのに、ビジネスとしてはうまくいっていないので、ビジネス界で活躍している男性からは「中学の生徒会長みたいだ」と、言われています。「高校生でももっとマネタイズが上手だ」と。

でも、そういう風に考える若いエリート層が連鎖していくと、世の中も変わるんでしょうね。これまでならソロバンの方に向かっていた人が、ちょっと歩みを止めたり、ソロバンもいいけどロマンがないと続かないと気づいたり。

「体験」に加えて「情報」「物」へと提供価値を広げたい

残間
シニアって私もそうですけど、一日一日老いていく。要するにいろんな機能が劣化するわけです。その劣化を遅らせるのは、生きがいだったり、やりがいだったりします。あるいは「これだけは私、得意なの」「小さい頃から、これは褒められたのよね」と言えるもの。それが趣味だとすれば、菊川さんのビジネスは、今後大きく広がりそうですね。
シニアマーケティングの面では、すでに東京大学や博報堂とプロジェクトを進めていると聞いていますが。

菊川
「趣味人倶楽部」をどうやってお金に換えていこうかと考えた時、まず最初にウェブ広告がありました。「趣味人倶楽部」のサイトはいま月間3千万PVあって、そこに広告を出してもらっていたんですが、そのせいか企業に「趣味人倶楽部」は広告を出すことしかできないところと思われてたんですね。

でも僕らは会員と一緒に商品を作って売って行くとか、商品開発の際の調査やモニターを募っていくとか、あるいは企業がコミュニティを作りたい時にナレッジを提供するとか、いろんなことをやりたいと考えていたんです。
ここがあまりやれてなかったので、『趣味人倶楽部シニアコミュニティラボ』という組織を作って、そこからいろんな取り組みを発信して、「ああ、趣味人倶楽部ってこんなことができるんだ」というのを法人向けにアピールしているところです。

残間
今後の展開についてはどうでしょう。

菊川
二つあって、まず一つは会員をもっと増やすこと。
今現在コミュニティに参加している会員さんも、もっと新しい人に来て欲しいと思ってるんです。やはりコミュニティって、人が入れ替わることで活性化していくので。
会員登録してから継続するところは、今までかなりテコ入れができたんですが、これからは新たに集客するところに力を入れていきたいですね。

もう一つは、お客様への提供価値を広げようということを社内で話しています。
今、「趣味人倶楽部」の価値というのが、同世代の人との"出会い"と、そこで知り合った人との"お出かけ"という体験が大きなものになっています。ここをもっと広げたいんです。

例えば、「来週どこに行こうかな」と思った時に、僕らから平日にお得に外出できる情報を、加工した上で提供するとか。『王様のブランチ』じゃないですが、自分たちでは情報の収集ができづらいものを僕らがピックアップして提供するという、情報の価値を充実させたいですね。それから会員さんが欲しいけれど、まだリーチできていない物を僕らで作って届けるとか。
今のコミュニティでの体験に加えて、情報や物という領域に価値を広げていきたいと考えています。

第三の娘、息子あたりがちょうどいい

残間
私はシニア周りのことに菊川さんのような若い人が関わるのは、とても素敵なことだと思ってます。「club willbe」でも、ここ数年は「クロス・ジェネレーション」をテーマに掲げて、若い論客やアーティスト、クリエーターなどの話を積極的に聞く機会を設けています。
若い世代の人たちは、私たちが知らない新しい情報や価値観を持っています。今のシニアはいろいろなことに関心をもっていますから、しつらえさえきちんと作れば興味を持ってくれますよね。一方、若い人たちも、私たち旧世代の経験や知見に聞く耳を持ってる人も少なくないはずです。自慢話とお説教はいけませんが(笑)

菊川
社内で、何で僕らがシニアのことをやるのかとか、僕らは一体何屋さんなんだという話になった時、「第三の娘、息子」という言葉が出てきます。コミュニティは第三の場所と呼ばれますよね。

残間
ええ、サードプレイスですね。職場でも家庭でもない心地いいところ。

菊川
だから僕らの存在は第三の娘、息子ではないかと。第一ではちょっとキツイというか距離が近すぎます。立ち位置としてはその辺りでしょうかね。「お母さん、こんなのあるよ」とか、「これって、どうなってるの?」と聞かれて気軽に答えてあげたり。そういう役割なんじゃないかと思ってます。
残間
そうそう。実の息子や娘ではなかなか難しい面があるんですよ。ITのことを聞いても「こんなこともわからないの?」なんて邪険にされたり………。いいですね、第三の娘、息子。

今日は「club willbe」で混声合唱団を担当している、willbe事務局の涌田も同席させていただいているのですが、涌田さん、菊川さんのお話を聞いて何か感想がありますか? 同じくらいの年齢で同じ大阪出身、しかも同じ慶應大学のOBですよね。

涌田
幾つになっても好きなことを真っ直ぐにやるのはカッコいい、というのは私も同感です。willbe混声合唱団は2年に一度くらいのペースでサントリーホールでコンサートを開催してるんですが、それに向けて練習しているうちに、みんな顔が変わっていくんです。コンサート当日、メンバーがステージで歌っている姿を見ていると、私も涙がこぼれてきます。

そんな体験を重ねていたら、いつしか私も親の世代と私たち世代をつなぐ仕事がしたいと思うようになりました。今日の菊川さんの話を伺って「趣味人倶楽部」と「club willbe」がコラボレーションをしていけたらいいなぁとも思いました。及ばずながら、私も橋渡し役をさせていただきたいです。

残間
私も元気でいる限りは仕事を続けますが、不死身ではないので、いずれは去らなければなりません。ですから、菊川さんのような若い方が牽引してくれることには大いに期待しています。

ソロバンは大事だし、それがないと継続はしないですが、ロマンがないと大人世代は気が削がれ、離れて行きます。シニアを老人扱いせず、これからも新しい生き方を提示してあげてください。涌田が申しましたように私たちも「趣味人倶楽部」とも何かでご一緒できたらと思っています。
お忙しいところを今日はありがとうございました。

菊川
そうですね。ぜひ一緒にやりましょう。
こちらこそ今日はありがとうございました。



※右はclub willbe事務局 涌田帆南




(終わり/2021年3月取材)





(前篇)自分の“好き”をやり抜くのはカッコ良い

(後篇)ロマンとソロバンは両立する


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