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自分の人生は自分で決める 後編

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後編 ほったらかし療法でガンが消滅


残間
さて、昨年に発表された著書、『作家がガンになって試みたこと』についてお聞きしましょうか。たいへん面白かったです。
私の周りにもガンになった作家が何人かいますが、こんな風には書けないと思います。というより、この本が出てしまったので、もうガンの闘病記は書けないんじゃないかしら。

高橋
(笑)そうですかねえ。

残間
書いても、もっと病気の中に没入してしまうと思います。この本は淡々とというか、体は大変だったんでしょうが、ところどころ笑いさえあります。

高橋さんは肝硬変がわかって余命4ヶ月と診断され、さらに糖尿病、食道ガンを発症。6年前にはグループ5の胃ガンの宣告もされ、医者には手術しなければ余命半年とも言われました。この本は、そこから病と向き合い、どうするかを真剣に考えぬいた記録ですね。

先進医療もいろいろと勉強し、時には試し、そして出た結論が、ほったらかし療法(笑)。体力や免疫力を奪うしストレスになるので、手術、抗ガン剤はやらない。食べたいものを食べて、お酒も飲む。
医者の言うことを全然聞かないんですが、よく医師から見放されませんね。

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高橋
とっくに見放されてますよ。でも、糖尿病のせいでインシュリンを処方してもらわないといけないので、病院には行ってます。医者にかかってるのはそれだけ。あとは2ヶ月に一度の血液検査ですね。


ゴジラにガンを凍らせる!?


残間
末期の胃ガンが見つかったけれども、手術は拒否。それから6年になるわけですが、お元気そうですよね。

高橋
胃ガンはいつのまにかなくなっていました。これはですね、僕が自分で治したんですよ。僕は「冷凍療法」と名づけてます。ガンを冷凍させちゃうんです。

残間
本にも書いてありましたが、そこをもう少し詳しく。

高橋
瞑想です。妄想でもいいんだけど(笑)。
朝起きてですね、窓から外を見るんです。すると空中に巨大なゴジラが浮いている。そのゴジラが僕に向かって放射線を吐くわけです。僕はそれを胃で受け止める。すると放射線でガンが凍結する、と自分でイメージする。

残間
(笑)

高橋
これを半年ぐらい続けていたら、なくなっちゃった。検査しても何も出ないんです。きっと元々、ガンじゃなかったんですよ。誤診だったんでしょうね。
でも、これをある有名な作家に言ったら、それは絶対に誤診じゃないって言うんです。

残間
私も医者の診断を信じてしまうでしょうね。

高橋
医者も本心からガンだと思っているんですよ。嘘で寿命はあと半年なんて言うわけないですから。その作家にも、医者は自分が間違えてることに気づいてないと言ったんです。それでも彼は「そんなはずはない!」と。

僕は思いましたね。こんな知的な人でも医者の言葉を信じちゃうんだと。じゃあ一般の人は信じて、勧められた通り手術しちゃうなって。

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残間
私も病理の専門家から聞いたことがありますね。ガンと診断されている人の中には、ガンじゃない人が結構いると。一方で、本当のガンを見逃されてる人もいる。

高橋
でも見逃してもいいんですよ。どうせゆっくり死んじゃうんですから。

残間
そうですね。人はいずれ死にます。

高橋
それを手術しちゃうから、体が弱ってガンが暴れ出す。寝た子を起こしちゃう。
そもそもガンって、そんなに強いものじゃないみたいなんです。どんな人も20や30の小さなガンを持っていると思いますよ。ところがガンを見つける機械ができて、どんどん発見されるようになった。それで告知されると、みんな気が変になっちゃうんですよ。

残間
実際のところ、今の健康状態は?

高橋
ポチポチ、といったところですね。

残間
胃ガンはなくなったといっても、重度の肝硬変はまだそのままなんですよね。そちらは進行はしてない?

高橋
進んでます。自分でわかります。肝硬変はきついです。でも年齢とともにというやつで、速度は遅いですよ。

残間
食事制限などは?

高橋
一切してないです。朝は奥さんの作る京料理というか、おばんざいみたいなもの。高級旅館の朝ごはんみたいな感じですね。ご飯は白米8割に玄米2割。これは体にいいというより美味しいからです。昼は蕎麦って決めてます。で、夜はたいてい晩酌。

残間
やはり病気の元凶は生涯の友と呼んでいる、お酒ですか? 昔は日本酒を日に六合以上飲んでたとか。

高橋
今はそんなに飲まないですよ。威張るわけじゃないですけど、今日で三日飲んでないですし。

残間
生きているのが不思議なくらいの肝硬変になっても、それでも飲みたい?

高橋
毎日、飲みたいですよ。今も頭の中は「飲みたい!」って言ってます。でも体の方が「受けつけない」って言ってる時は飲みません。僕の中で頭と体が交信してるんです。

30
ガン=死病という誤ったイメージ


残間
この歳になると、私の周辺でもガンになる人が多いです。一方で治る病気にもなってきましたよね。ただ手術で治っても、何年か後にはまた再発という方が多いようです。

高橋
僕がなんでこの本を書いたかというと、今だにガンというと死病のイメージがあるからなんです。ドラマでも「実は俺はガンなんだ」と言うと、女が泣いたり、家族は涙をみせず明るく接しようとかなるでしょ? 僕はガンなんかよりも、脳の病気の方がもっと大変なんだよって言いたいです。

それでガンというのは、たいていゆっくり死ねるわけ。最後の方までは、ほとんど痛みもない。いよいよ痛くなったらモルヒネがある。とにかく死までの準備期間が長いんです。手術と抗ガン剤治療さえしなければ。
告知もする必要ないですよ。僕はガンの告知は医者の傲慢さだと思ってます。ガンのことなど考えずにゆっくり死ねるなら、それが一番幸せじゃないかと。

残間
でも、つい悪いところを切り取ってしまえば、きれいになる、というイメージがありますよね。ガンを異物みたいに思っているから。本当はガンも自分の一部なんですけどね。高橋さんも医者に手術するように、何度も勧められたんですよね。

高橋
勧められましたね。日本でその道の権威と言われてた医者から。その人に今手術しないと、半年もたないと。それで僕が拒否していたら、院長と二人でうちの奥さんを雪隠詰めにしました。あなたから何とか説得しろと。
問題はここですよ。家族はどうしても心配する。もっとも彼女は、僕に何か言っても無駄とわかっていましたが。

とにかく、僕はあくまで拒否。その医者が患者に手術を勧めると、100人中100人が手術するそうで、僕は唯一の例外だったそうです。あの医者は、僕に早く死んでくれないかと思っていたかもしれませんね(笑)。でも、あれから6年経った。もうガンはどこにもない。
レントゲンに何かの影でも映ったんでしょうね。僕も見たんですけど、ガンは二つあって、一つはゴジラみたいな形してました。それで同士討ちにしてやろうと「冷凍療法」。

残間
(笑)

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人生はセルフサービスじゃないと


高橋
ガンを放っておいて死ぬ人もいると思います。でも、どっちにしても人は死ぬんですよ。だから手術しなければ痛まずに済む。
僕も食道ガンの時に、内視鏡で簡単だからと手術されたんですが、簡単じゃないんですよ。手術後に腹部の激痛で死ぬ思いをしました。トイレに行くと、痛くて気が遠くなるくらい。肝硬変から来る肝性脳症は出るし。やっぱり内臓はそれぞれ関連しているでしょうから、なくなると影響が出る。食道ガンの手術もするべきじゃなかったですね。

残間
この本に書いてあるのは、自分で判断して、医者とも対決して、勝手にしています。でも、それでいいんですよ、ということなんですよね。ガンとどう向き合うか、手術や抗ガン剤治療をするのかしないのか、どう治療するかは個人の問題であって、自分で判断するということが大事だと。

高橋
僕は医者に責任は求めていないんです。人生はセルフサービスでないと。
あ、こりゃ、いい言葉だなあ。

残間
「人生、セルフサービス」。メニューは自分で選んで、自分で片づける。

高橋
そう思うと、何でも納得できる。
僕の病気とのつきあい方をみんなも少し真似すれば、もうちょっと良い方に変わるんじゃないかと思うんですけどね。僕のやっていることは、考え方だけなんですよ。
楽天家でいられるかどうかは持って生まれた性格もあるので、なかなか変えられない。でも、考え方なら多少は変えられる。これは、三千綱教です。

残間
高齢社会になって、これからますますガンになる人が多くなりますが、参考になる本だと思いました。
今日はありがとうございました。これからも素敵な作品を書いてください。

高橋
こちらこそ、ありがとうございました。



(終わり/2019年3月取材)

110

前編 僕に日本は合わない

後編 ほったらかし療法でガンが消滅


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