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次の世代のために、デザインができること 3/3

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vol.3 若い人の役に立ちたい


残間
海外で仕事をするとなると、当然、現地のスタッフと一緒にやることになりますよね。法律も制度も違いますから労働協約の問題などで訴訟になったり、いろいろ大変みたいです。自分はこのポジションで契約したはずなのに、どうしてこうなんだとか。

妹島
それはありますね。特にフランスが大変です。雇われている人が強いんですよ。
以前、日曜日にフランスの現場を歩いていたら、通報されて警察に捕まりました。

残間
誰がですか?

妹島
私です。
ルーブルの仕事だったんですが(『ルーブル=ランス』)、向こうは、日曜日に働いちゃいけないんですね。私は雇い主なので、私が一人で現場を歩くのはいいけれど、担当の人と一緒に歩いたので、日曜日に働かせたということで、警察が来ちゃったんです。


article-6__Louvre-Lens
『ルーブル=ランス』
https://artche.co.jp/exhibition/article/6


残間
ええっ!?

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妹島
捕まって、パスポート出させられました。クライアントがなんとかしてくれて、事なきを得ましたが。

残間
グローバルな展開になればなったでなかなか難しいですね。政治も絡みますし。中国も大変だと聞きますし、インドは州ごとに法律が違って、さらに大変だといいます。

妹島
税金のこととか、全然わからないんですよ。結局、同じ仕事で、向こうと日本の両方で払う羽目になったり。

残間
妹島さんにはご自身の設計事務所で進める仕事とは別に、建築家の西沢立衛さんとのユニット、『SANAA』(サナア)としての活動があります。『金沢21世紀美術館』もSANAAの作品のひとつですが、とても緊張感のあるデザインでした。
ユニークな仕事の進め方ですよね。特定の建築家と継続してコラボレーションするのって。

西沢さんは、元々は妹島さんの部下だったわけですが、あのユニットは、どんな風に始まったんですか。

妹島
西沢は、私の二人目のスタッフだったんです。だから、独立したかなり初期の頃から一緒にやってました。最初はアルバイトで入って、確か再春館製薬のコンペを取った時からですね。

残間
そんなに古くからだったんですね。でも、そのまま同じ事務所にいて、代表、副代表みたいな形も取れたんじゃないですか?

妹島
それは、西沢が「辞める」と言ったからです。じゃあ、それなら一緒にやろうよと。それまでも一緒に仕事するのは、すごく面白かったですから。

残間
なるほど、それで新たに建築ユニットを作ったんですね。

妹島
西沢も、一人でやりたいけど、一緒にやるのもいいかと言ってくれたんです。彼は彼で、一人でやっている仕事もあります。
でも難しいところもありますよ。

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残間
強い個性が対峙するんですからね。そこは妹島さんの淡々としたキャラクターが救っているのでしょうか。

妹島
いえ、最初の頃は大ゲンカでした。コンペでも、どっちかがやるとか、やめるとか。
でも今はお互いに年を取って体力がなくなってるので、片方が「絶対これだ」と言うと、「そんなに言うならそうかなー」みたいな感じになってきましたね(笑)

残間
そこは互いに解り合えているから。信頼感なんでしょうね。

妹島
それでも、いまだに彼が何を良いと言うか解らないところはあります。私とは、全然違いますから。

残間
少しプライベートなこともお聞きしますが、
これまで結婚とか出産とかは考えたことはありますか?

妹島
結婚は考えたんですけど、うまくいきませんでした(笑)。
出産は………躊躇しまして、それはもったいなかったですね。残間さんは良かったじゃないですか。きちんと産めて。

残間
でもこの年になると、やっぱり基本は一人ですよ。成人してしまうと、男の子なのであまり会いませんし。
やっぱり友だちの方が、結びつきは強くなりますね。

では、今後についてはいかがでしょう。

妹島
自分にやれることを、やっていくだけですね。大きな組織を動かして大きな建築を作るのは、確かに面白いですが、一方で、小さくても静かでいいものを、ゆっくり作るのもいいかなと思ってます。
それから多少、年長ですから、何か若い人の役に立つことがやれればいいなと。

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残間
教えるとか?

妹島
やっぱり絶対、若い人の方が新しいことを考えられると思いますから、何かサポートできたら。
本当は子供食堂みたいなものをやりたいんですよ。でも、中途半端なことになるとまずいので。

残間
お母さんの血筋ですね。お母さんがご存命だったら、そういうことをやってたでしょ。

妹島
そうそう。一緒にやれれば良かったんですけど。

残間
今、青山で、児童相談所の建設に反対運動が起きてますけど、そういう問題もデザインが解決できる気がするんですよね。空間の作り方で全然違って来ると思います。
社会的な問題って、デザインというか、美しさに転化すると溝が埋まる部分が大きいように思うんですよね。

妹島
それは確かにそうです。建築家がそれを言っていかないといけないですね。

残間
もうそれを言っていい、年齢やポジションですものね。

妹島
もう年ですからね(笑)。

残間
伺っていると、妹島さんも、建築をやる上で人とのつながりを重視していますよね。

妹島
やっぱり、みんなで作るのが好きですね。

残間
今日はありがとうございました。是非、新しい形の子供食堂も作ってください。みんなで共に作っていくような空間があれば、活動も奥行きを増すと思いますから。



(終わり/2018年10月取材)

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vol.1 子供の頃に見た、一枚の住宅の写真

vol.2 ひとつの作品をきっかけに、世界へ

vol.3 若い人の役に立ちたい

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