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次の世代のために、デザインができること 2/3

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vol.2 ひとつの作品をきっかけに、世界へ


残間
妹島さんが最初に注目されたのは、『再春館製薬女子寮』(1991年)だったと思います。話題になりましたね。
再春館製薬は妹島さんの建築で、イメージ的にもずいぶん得したんじゃないですか。

妹島
さあ、どうでしょうかね。

残間
デザインが斬新でとても美しいんですが、そういうことに理解のあるクライアントだったんですか。

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妹島
当時女性の社長さんだったのですが、彼女がまず気に入って下さいました。

そういえば完成後にみんなから床が白い白いと言われたんですが、最初は舗石ブロックで仕上げていたんです。事前に打ち合わせもして。ところが出来てみると、インテリアなのに暗すぎると言われてしまいました。とにかく、きれいにしろと。

きれいにと言われても舗石ブロックを全部敷いた後ですから、もう上から色を塗るしかありません。最初は薄いグレーとも考えたんですが、中途半端なことをしてまた何か言われるのも困る。じゃあ、真っ白に塗っちゃえ、となったわけです。
白い白いと言われましたが、元々は私の考えじゃないんです。とにかく、施主に出来たものを受け取ってもらわないと。


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『再春館製薬女子寮』
https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_1655.html


残間
そういう事情があったんですか。
あの建物は80人くらいの女性が住む寮でしたよね。

妹島
そうです。全部で20室。社長からは、4人一部屋で暮らすようにという注文がありました。1年間、女性社員の研修の場なわけです。
それで4人で一部屋はしょうがないにしても、一人になれる空間も必要だろうと。ですから居室以外は全部大空間にしたんですね。誰かと一緒にいたくない時は、離れたところに行けばいいと。トイレも一箇所じゃなくて分散して。

つまり居室以外は「半外部空間」ですから、床を普通は屋外で使う舗石ブロックにしたわけです。当初は向こうも「あ、それでいいですよ」ということだったんですが、出来上がってみると暗いと。

それでクライアントは満足なんですが、外部の人から「白い」と言われてしまいましたね。でも悪くも言われたのは、新人類っぽいデザインに見られた面もあったかもしれません。
社長はともかく、会長はちょっとどうかと思われたみたいなのですが、会長が信頼している方が褒めて下さいまして、何とか収まりました。

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残間
そういうドラマがあったんですね。その方に「これは駄目だ」と言われたら、大変でしたね。

妹島
そうですね。

残間
メディアにもずいぶん取り上げられましたね。私も妹島さんを知ったきっかけでした。

妹島
再春館製薬の仕事をしたことで、『MOMA』の建築展に呼ばれて、それが海外のコンペから声がかかるきっかけになったと思います。「ライト・コンストラクション」というテーマでした。

残間
まさに妹島さんの世界ですね。それまでの重厚長大なものとは違う。

妹島
その展覧会では、いろいろな建築家が取り上げられていたんですが、なぜか私の作品の写真が、パンフレットの表紙に使われたんです。それも大きかったかもしれません。

たぶんコンペに呼ばれるようになったのは、最初は毛色の違うも人間も入れてみよう、という意図だったと思います。5人ぐらいの指名コンペで、少し方向性が違う人が入ってると、比較検討にいいじゃないですか。
今では日本の軽い建築が世界で大流行りですけど、最初はヨーロッパの人たちも、あまり信じてなかったように思います。

残間
最近はだいぶ変わってきましたが、ヨーロツパの人にとって威容を誇るような建物がいい建築だと思われていた頃ですものね。

妹島
そこは10年ぐらいで、すっかり意識が変わったように思います。コンペに勝てるかどうかは、また別なんですけど。

残間
コンペに呼ばれるようになって、いよいよ海外での活躍が始まったわけですね。最初の海外の仕事はなんだったんですか。

妹島
最初の仕事はシドニーだったんですけど、現場から遺跡が出て来て、キャンセルされてしまいました。初めて実際に建ったのは、オランダのアルメラ市の劇場『スタッドシアター』です。
今では仕事の数は日本の方が多いんですけど、規模が大きいのはほとんど海外ですね。ここ10数年は、年に三分の一は海外にいる感じです。


article-6__Theatre-and-Arts-Centre-De-Kunstlinie
『スタッドシアター』
https://artche.co.jp/exhibition/article/6




(つづく)

18-10-22cwMs.Sejima.090

vol.1 子供の頃に見た、一枚の住宅の写真

vol.2 ひとつの作品をきっかけに、世界へ

vol.3 若い人の役に立ちたい

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