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映画に魅せられて 3/4 

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vol.3 娘たちのこと


残間
ご自身だけでなく、お嬢さんたちも大活躍です(長女・安藤桃子さんは映画監督、次女・安藤サクラさんは女優)。私は小さい頃から知っているので、こんな風になるとは思いませんでしたけど、父親として予感みたいなものはありましたか?

奥田
長女は本当は絵描きにしたかったんです。(※奥田さん本人も、個展を開くなど画家としての活動あり)だからオギャアと生まれた時から、絵描きになるように布石を打っていました。もちろん娘には黙ってね。
部屋の壁に絵を描いても、怒るどころか逆に一緒に描いたり。絵の具はこれを使ってごらん、この紙を使うとこうなるぞとか。それから細密画を教えたりね。 本人に素質もありましたし、まあ順調に育っていったわけです。

高校からは本人の意思で、イギリスに留学しました。美術系の高校に入ったのですが、桃子が描いた絵を見た先生が、飛び級にしてくれました。

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残間
すごいですね。

奥田
大学はロンドン大学の美術科に合格して、次席で卒業しました。

映画製作の現場を知り、父と同じ道へ


奥田
大学一年の夏休みに桃子が日本に帰ってきたのですが、僕の初監督の映画『少女』の撮影と重なり、現場の手伝いをさせたんです。美術監督が日比野克彦さんで、その下に見習いでついてね。それで現場を見ちゃったものだから、もう映画監督なりたいってなっちゃった。

本人は自分の希望を正当化するために「映画は総合芸術ですよね、お父さん」とか言って。僕がそうだよと答えると、もうロンドン大学の教授に相談したって言うんです。短期留学の推薦状をいただいたので、「私、ニューヨークに1年間行ってきます」ということで、行っちゃいました。

そこでショートフィルムを作ったりしたのですが、次にハリウッドに行くって決めたんですね。僕がたまたまアメリカン・フィルム・インスティチュートのフェスティバルに招待されて、ハリウッドに行った時に桃子も現地に来て、向こうのプロデューサーと一緒にランチを食べたんです。

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すると桃子がそのアメリカ人と英語で何かベラベラと喋ってるんです。
それで話し終わると、そのプロデューサーと桃子が僕の顔をじっと見るんです。何を話してたかというと、桃子がハリウッドでやりたいと言ったら、ハリウッドは止めろと言われたそうなんです。
「なんで?」と聞いたら、「ハリウッドに来る必要はない。目の前にすごい監督がいるじゃないか。君はすごい監督の下で映画の勉強をした方がいい。僕はエイジ・オクダの映画が大好きだから、それが一番いい。君は親子だから嫌だと言うけど、それは関係ない。親子だからいいこともたくさんあるから」と言われたそうなんです。僕はすごく嬉しかったのを覚えています。

で、東京に帰って来て、ある時、麻布十番を歩いていたら、桃子が大事な話があると言い出しました。
「私、映画監督になりたいので、お父さんのもとで勉強させていただけませんか。お父さんが私の師匠です」と。

残間
桃子さんはその時、いくつだったんですか?

奥田
ええと二十歳かな。飛び級してたから。

僕は、よしわかった。徹底して教えるから、と答えました。茶道だってそうだろう。何々流ってあるだろう? 狩野派っていう絵描きの流派もある。じゃあ奥田流の映画の撮り方、方程式を教えようと。

それで、今でもずっと一緒です。すると方法論もイデオロギーも共有してるわけで、それは映画を学ぶ上ではいいことなのです。ところが女優の方は、そうはいかないんですよね。女優は教えられない。
お願いだから女優にはならないでくれって、ずっと思っていました。

小学生みたいな芝居してるんじゃねえ!


残間
今度はサクラさんの話ですね。小さい頃から芽吹きはあったのですか?

奥田
小学校の5年生の時でしたね。学芸会の主役のオーディションに受かっちゃったんですよ。『夕鶴』のおつう役です。
それで僕が仕事が早く終わって3時頃に家にいたら、サクラが演技を10分でいいから見てくれと。じゃあ10分ね、と居間で見てやることにしました。そう言って始めたら、気がついたら3時間経っていた(笑)

「もう一回。もう一回! 違うだろ、バカヤロー! 学芸会みたいな芝居してんじゃねえんだよ!」てな調子になっていましたね。こっちも夢中になっちゃって。 そうしたらサクラが「だってこれ、学芸会なんだもん………」って泣いていました。

残間
(笑)

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奥田
それで僕もやっと気がついて、ああ、これは学芸会だなと。でも引っ込みがつかなくて、「学芸会だからといって、小学生みたいな芝居してるんじゃねえ!」とまた怒鳴ったんです。
するとサクラが「だって小学生なんだもん………」とまた泣いて。

本番は僕も観に行きました。上手かったですよ。でも将来を考えると、本人に良かったよと言ってやるのもいいのか。ちょっと悩みましたね。

残間
プロである奥田さんに時間を忘れさせるというのは、すごいことです。

奥田
それで正式にお願いしに来たのが、高校を卒業する少し前でしたね。僕の前に正座して、「女優になりたいんです」と。
僕が言ったのは、「お父さんは何も手助けはしないし、したくない。お父さんも一人で役者になったから、君もその覚悟があるのならいいけど」と答えました。サクラもそれはわかっていると。
それで女優の道に進みました。アルバイトをしながらワークショップのお金を自分で稼いでね。

残間
今、女優としてのサクラさんはどうですか。毎朝、ご覧になってるそうですが(NHK連続テレビ小説『まんぷく』で主演)。演技が自分と似ていると感じることなどありますか?

奥田
仕草とかは、たまに「おーっ」と思ったりすることはありますけど、僕はもう単なる一人のファンですよ。

残間
演技の批評なんかはしない?

奥田
しないしない。僕が批評したりしたらおかしいでしょ? カンヌで評価されたような女優さんなんですから(カンヌ国際映画祭にてパルムドールを受賞した『万引き家族』で、演技を絶賛される)。

残間
そこに関しては対等ですからね。

奥田
そう。役者同士としては対等です。むしろ僕の作品に出てもらいたい時に、どうやってお願いしようかなという存在ですよ。もう何も言えない(笑)。



(つづく)

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vol.1 死ぬまでカメラを回していたい

vol.2 振り返れば、全てが宝物

vol.3 娘たちのこと

vol.4 主演映画『洗骨』
 

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