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大切なことは母に教わりました 2/3

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vol.2 出産の際に贈られた“言葉のプレゼント”


残間
加藤さんは建築家の黒川雅之さんと再婚されて、息子さんが一人いらっしゃいます。お母さんからの影響ということで言うと、子育てについても大事な教えを授かったと聞いています。

加藤
母からは“言葉のプレゼント”をもらいました。90歳の初孫だったのですが、産湯を使って運ばれてきたばかりの息子を愛おしそうに眺めながら、私にこう言いました。

「ずっと待ち望んできた子供だから、きっとあなたは猫っ可愛がりするでしょうけど、愛情をたっぷり注ぐことと、過干渉・過保護とは紙一重で違うんですよ。」
「きっとあなたは、この子はこういう幼稚園に行って、こういう小学校に行って、あんな大学に行って、あんな職業に就いてほしいと考えるでしょう。でも夢を持つのはいいけれど、理想の枠を作ってはいけません。理想像を描いた瞬間から、無意識のうちに子供をその枠にはめこもうとしますよ」と。

それからこうも言われましたね。
私の職業はAさんとBさんをつなぐコーディネーターです。AさんとBさんの国籍が違うことも多いのです。すると言葉や文化・風習の違いがあるから、言葉にしていなくても、片方が感じたことを察して、代弁・代行するのがコーディネーターの役目なのですね。
要するに私って、すぐ気づいてしまうんですよ。気づくから先回りして何でもするわけです。それが仕事でしたから。でも母からは、仕事で役立っているその特徴が、子育てにはものすごく邪魔になると言われました。

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残間
なるほどね。私も思い当たります。

加藤
子どもがこうなった時に、あ、今これを欲しがっているんだな、こうして欲しいんだなと、気になるのです。例えば勉強をしている時も、「あ、今この言葉を辞書で調べようとしているな」という感じで。それが過干渉・過保護。

残間
小学生だった頃の息子さんにも言われたそうですね。先回りして言われるのが嫌で、「ママの言いたいことはわかっているから、口に出して言うのは3分待って」と。

加藤
(笑)母に言われて頭ではわかっていたのですが、なかなか実践できてなかったみたいですね。


「早いとこ挫折することね」という言葉に唖然!?


加藤
あと母に言われたのは、子どもには自分の足で立ち、自分の頭で考え、自分の心で感じられる人間になってほしいということですね。今でも覚えているのが、「ま、早いとこ挫折することね」という言葉。
その時は「今生まれたばかりの子に挫折!?」と思いましたけれど、母は真面目なんですね。私は、真剣に物を申しています、と。

親は子が挫折しないようにしたがるものだと。でも早いうちに挫折すれば、次はどうすれば挫折しないで済むか自分で考えるようになるし、同時に他人が挫折した時にその痛みを感じられる。それは本当の強さと優しさになる。

まったく同じことをオードリー・ヘップバーンさんがおっしゃっています。 プライベートの会話の中で「どういう男性が好きなの?」と聞いたら、「ストロング・マン!」と力強く即答したんですね。するとヘップバーンさんは、「タキは今、マッチョな男性を想像した?」と聞くので「イエス」と答えたら、そうじゃないと。
それは挫折を味わったことのある人だと。そういう人は他人の痛みが本当に理解できる。それは強さであり優しさだと。

あー同じこと言っているなって思いましたね。
まあ、自分の息子が挫折を味わっているかどうかはわかりませんが、考えたら私自身がそのような育てられ方をしていました。

母は国会議員でしたし、すごく忙しい人でしたから、私が小さい頃は学校から帰っても家にいたためしがありませんでした。でも、私は全然淋しくなかった。密度の濃い母の愛情を、しっかり感じていましたから。
家に帰ると母はいないのですが、必ず短い手紙とおやつがありました。学校でのことを尋ねていたり、何気ない内容なのですが、「私はあなたが大好きよ」というメッセージが込められていました。
たまに他所の子のところに遊びに行くと、「お母さんいなくてさみしいでしょ?」と向こうのお母さんに言われるわけです。私が大真面目に「淋しくありません」と答えると、「いいのよ、淋しいって言っても」と言われて、「淋しくありません!」と言い返す感じでした。

53歳の父と48歳の母との子、それも戦時中の空襲が続くさなかに、よくぞ覚悟を決めて産んでくれたと思いますし、両親が勇気を持って子離れをしてくれたことに感謝しています。そのことが今の私につながっています。

残間
息子さんの話に戻りますが、だいぶ前に「息子さんお元気ですか?」と聞いたら、バックパッカーになってヨーロッパに行っていると言っていらっしゃいましたね。

加藤
外国で勉強したいと言って、自分で学校も探して決めました。
今は東京で建築に打ち込んでいます。父親のオフィスのスペースを家賃を払って間借りして、自分の道を切り拓いて苦闘中かな。でも自分で選んだ道だから、楽しそう!

残間
お父さん嬉しいでしょうね。

加藤
嬉しいみたいですよ。同じ道に入ったことが。週末は3人で食事するのですが、二人でいろいろなことを喋っていますね。父と子というより、先輩・後輩といった雰囲気で。

残間
やはり親は子を適度に離したほうがいいみたいですね。



(つづく)



vol.1 母から学んだ女性としての生き方

vol.2 出産の際に贈られた“言葉のプレゼント”

vol.3 「ねばならぬ」からの解放

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