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“人口減ニッポン”の未来 2/2

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後篇 あまり良くない将来を「見える化」する


残間
増田さんは東京生まれの東京育ち。大学卒業後に建設省(現・国土交通省)に入省した後、1995年から岩手県知事を務めました。改革派知事の一人として、宮城の浅野史郎さん、岐阜の梶原拓さん、三重の北川正恭さん、高知の橋本大二郎さんらとともに、それまでの霞ヶ関への陳情型政治からの脱皮を図っていましたね。当時としては画期的な動きだったと思います。その流れは次の世代の知事たちに、着実に受け継がれていますし。
2007年まで三期12年の知事時代を振り返ってみていかがですか。

増田
変な話に聞こえるかもしれませんが、三期目10年を過ぎた頃から改めて責任の大きさを実感しましたね。知事がひとつのハンドリングを誤ると、後々、大勢の人が大変なことになるなと。
知事の仕事を軽くみていたわけではないですけれど、一期目はやらなきゃいけないことを一生懸命やるだけでした。それが10年経つといろんなことが見えてきて、どんどん責任の重さが身に迫ってきました。

ですから知事を辞めて3ヶ月くらいブラブラしていたのですが、肩書きのない解放感というのはいいものでしたね。発言も自由ですし。責任がある立場でものを言うのと、そうでない立場でものを言うのは本当に違います。
晴耕雨読の生活。あの頃が一番良かったかもしれません。

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残間
普通、肩書きがなくなると落ち着かなくなる人が多いのですが、実際、知事をやめた直後の増田さんは、はたから見ていても『本当にこのままでいいのかしら?』 と思ってしまうほどゆとりがありましたよね。もっともほどなく総務大臣になり、やはり地方の再生、 脱・東京一極集中をテーマにされてきたわけですが。

増田
そうですね。知事時代の岩手からだけでなく、総務大臣をやって東京からもこの問題を見ることが出来たのは良かったと思います。それは国と自治体の両方を経験したこともそうです。

残間
現在は東京大学公共政策大学院で学生を教える立場でもあります。こちらは?

増田
大学では教えたかったんです。ああいう場、つまり社会人学生も含めて20代から30代の人たちを相手にしていないと、なかなか真剣に議論する場がないのです。放っておくと私たちの年代は、あるいはもっと下でも、気づくと周りがオッサンばっかりになっていくんですよ。大学は若い世代に私の経験を少しでも伝えられる貴重な機会だと思っています。

残間
さて、簡単に解決がつく問題でもないですが、これから地方はどうすべきなのでしょうか。おそらく最後は、消滅自治体からいくつかの中核都市に移り住む、という形になるような気がしますが………。

増田
私が知事をやっていた時よりも、状況は難しくなっていると思います。消滅するとか撤退する時に何か将来像を描くのは大変で、今、地方自治に関わっている人たちの苦労はわかります。
でも人口が減るというのはもう大前提なわけです。それは変えようがない。その中でやれることといったら、もっと多くの地域の人に参加してもらい、ちょっとずつでもいいから、やれることを並べて見せていく。それでもう一段上を目指して行く。それしかありません。大変は大変なのですが、どこも同じ話ですから。

残間
気がついたらある地域には、人が誰もいなくなっていたというのは仕方ないと言えば仕方がないことかもしれません。そこにどうしても留まりたいのなら一人で住み続けてもいいでしょうが、その人一人のために公共財を使っていくのは難しいですよね。

増田
ええ。国土交通省の2050年ビジョンを見ても、今、国土の半分くらいのところに人が住んでいますが、2050年にはそのうちの約6割の地域は人口が急激に減って、2割ぐらいは人がいなくなる。
そこにどうしても住みたいのならどうぞ。そのかわり公共整備は難しいですね。ただ、そこに住みたい人はそういう整備を期待しているわけじゃなくて、自力でやるでしょう。医療などはきちんとアクセスできるような配慮は必要でしょうが。

あとは都市居住が増えるでしょうけど、少しでも土の匂いがあるような環境を作って、楽しく豊かに過ごせるようにしないといけません。

残間
念を押すわけではありませんが、都市居住といっても増田さんは東京一極集中はまずいと思われるのですよね。

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増田
東京一極集中は東京のためにもいけません。それに地震は必ず来ます。そのあとの復旧を考えると、大阪や福岡、札幌は、東京みたいにならなくても、もっと強くしていかないと。

残間
都心に近い横須賀あたりはとてもいいところで、私の友人も大阪から移住しましたけれど、一方でどんどん人が減ってるらしいですね。

増田
横須賀が地元の小泉進次郎さんと街を歩きましたが、住宅地から居住者が減って、もうボロボロになっていますよね。
別に新たなものを建てなくてもいいんです。北九州あたりでもエレベーターなしの築40年の公団住宅をきれいにリノベーションして、1、2階は高齢者に、3〜5階は若い世代に安く貸しているという例があります。

残間
3戸を2戸にするような手法で、時代のニーズに寄り添ったリノベーションをするというやり方ですね。

先ほど「2050年」という数字が出ましたが、その頃には日本は人口が8千万人ぐらいになるんですよね。もう私はいないでしょうが、その頃のビジョンを誰がどう策定するのか。一見遠い未来のようですが、確実にやって来る未来ですから気になります。

増田
2100年だってえらく先のように思えますが、今年生まれた子供は普通に生きているんです。82歳ですから。無責任に考えちゃけない未来なんです。少なくとも2050年はきちんと考えないといけない。

残間
それが夢色にならないのはわかるんですが………。

増田
今これが困っているから、という問題は現役世代にまかせないといけません。
しかし黙っているとこれだけ空き家が増えます。自治体もこれだけなくなってしまいます。要するに「あまり良くない将来を見える化する」少なくとも黙っているとここまでひどくなるよと言うことは、逆に我々の世代の責任かなと思いますね。

残間
「あまり良くない将来を見える化する」ですか。そこにきちんと向き合わなければなりませんね。
日々のことに流されがちな私たちですが、増田さんには、これからも注意喚起をしていただきたいと思います。今日はありがとうございました。

増田
ありがとうございます。



(終わり/2018年4月取材)

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前篇 “消滅”という激辛スパイス

後篇 あまり良くない将来を見える化する

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