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体の変化に耳を傾けてください 3/3

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vol.3 私は話を聞くことしかできない


残間
大学病院ではさまざまな経験もあったことでしょうけれど、2012年からは開業して地域のホームドクターとしてご活躍です。でも、この他にもいろいろとやっているんですよね。

常喜
産業医として、企業で社員の方の健康管理をしています。特にメンタルヘルスですね。それから慈恵医大の検診センターで、人間ドックでの診察・診断もしていますから、三足のわらじということになるでしょうか。

残間
大学病院を離れて、実際に開業してみていかがですか。

常喜
今はとても気分良く仕事をさせてもらっています。
大学病院の看板がなくなると信用してもらえない部分もあるんですが、やはり地域で継続して診察できる良さがあります。特にずっと診察している子どもの成長が見られるのは嬉しいですね。子どもは本当に可愛い!

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残間
長く医療の現場に携わっているわけですが、患者さんの変化みたいなものを感じることってあるでしょうか。増えている病気とか。

常喜
特に産業医をやっていて感じることなんですが、10年前に比べてメンタルを崩す人が本当に増えました。昔は企業にお邪魔しても暇で小説を読んでいたくらいなのに、今は面談が1ヶ月待ちという状態です。

残間
やっぱりそうなんですね。みなさん、どこにストレスを感じているのかしら。

常喜
管理職の仕事が増えているんだと思います。部署の管理をするだけでなく、自分も駒として働く必要があるみたいで。昔は管理する人、書類を作る人とか、細分化されていましたよね。ところがITのおかげで専門職が少なくなって、言ってみればみんな管理職みたいな状態。

ITといえば、パソコンのおかげで業務量が増えていますよね。手書きの仕事には限界があったんです。しかも他人の仕事が見えなくなって、集団で働いているはずなのに孤立感を感じてしまう。
追い詰められているんですが、愚痴も言えない場合が多い。愚痴って大事ですよ。

古き良き日本の会社というのは減ってきて、悪い意味で海外流になってきている部分があります。特に若い会社だと、そういう文化そのものがない。
朝、みんなでラジオ体操する会社がありましたが、面倒なようで、ああいう雰囲気はいい面もあったと思います。

残間
メンタルの相談は大変そうですね。どんなアドバイスをするんですか。

常喜
それはもう患者さんによってそれぞれです。何を考えているのかじっくり聞くしかないですね。それで場合よっては精神科をすすめたり、時には会社辞めたら?とか。会社に雇われてはいますが、私は会社の人間ではないので、あくまで患者さんの健康が第一です。

ホームドクターと専門医を上手に使い分ける時代

残間
それでは開業医や産業医として日々診察する中で、常喜さんが特に心がけていることって何かありますか?

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常喜
私は内科医なので、できることというのは、薬を出すことと患者さんの話を聞くことぐらいなんですね。ですから話をしっかり聞くことは意識してやっています。
言いづらいこと、恥ずかしくて言えないこと、そして何を望んでいるのか。そこをきちんと見極めるために、お話を伺いながら一生懸命に考えています。

でも難しいですよね。大人は子どもと違って具合が悪いのを隠そうとしたりしますから。嘘もつくし。子どもは簡単なんですよ。元気ならワーイ!だし、体調が悪ければクシュんとしますから。

残間
しっかり話を聞いてくれる医者って、いるようでいないんですよね。

常喜
医師は頑張って話を聞くべきなんですが、患者さんの方も信頼できて、気兼ねなく話せるホームドクターを見つけておくといいですね。

これからは町の開業医、つまりホームドクターと、大学病院などの専門医を上手に使い分ける時代です。
ホームドクターが医学の基礎知識をもとに患者をトータルに診察し、専門医はホームドクターが患者をスクリーニングした上で専門性を発揮して、難しい治療や先端医療を手がけるのが理想でしょう。
誰もかれもがいきなり大学病院に行くことは無駄が多いですし、専門医は診療の他にも研究や教育の仕事があって多忙です。現実的ではないですね。

残間
確かに最近、紹介状なしに大学病院に行くと初診料が高いんですよね。そういう流れになりつつあります。

常喜
私もケースバイケースで、必要がある場合には専門医を紹介するようにしています。

残間
高齢化が進んでくると、体にトラブルを抱えてからの人生が長くなります。信頼できるホームドクターというのは、大切になってくるでしょうね。

今日はありがとうございました。もう一度、心して本を読ませていただきます。

常喜
こちらこそ、ありがとうございました。



(終わり/2018年3月取材)

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vol.1 加齢としっかり向き合いましょう

vol.2 母に乗せられ、気がつけば医師

vol.3 私は話を聞くことしかできない

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