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古希を前にして考える。 4/4

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vol.4 仕事がなくなって、まだ身体が元気なら


残間
我々は人生の終盤を迎えているわけですけれど、その前にやるべきこととか、何か考えられます? 吉永さんがというより、世代としてでもいいです。私たち団塊世代は800万人くらいはいますからね。

吉永
たくさんいるんですよね。
私たちの世代はある意味、何もないところから、時々間違えることはあったけど、いろんなものを得ながらここまで来たわけです。
人生って放物線でしょうから、これから落ちていくわけです。その時に得たものの中から、何を失っていくのか。失ってはいけないものが失われつつあるのなら、やはりこの世代が防波堤にならなきゃいけないのかな、って気はします。
私たちはあと、せいぜい10年、20年の世界。でも若者は60年も70年もあるんですから、彼らの未来を守ってあげないといけない。

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……という気はしてるんですけど、そんな勇気があるかな、というのもあり、もう、いろいろ考えないといけないことがあって大変ですよ。死ぬ覚悟もしないとしけないですからね(笑)。

残間
私は身近なところで言うと、いよいよ身辺の整理をやらないといけないと実感しています。

吉永
それ、お互いもう10年くらい前から言ってますよね(笑)。

残間
(笑)確かに。でもなかなか片づけられないんですよ。どうしてなんですかね……

ゼミ生として大学に通い始めました

吉永
私個人の場合は、仕事がなくなったとして、体がまだ元気だとします。その時に何をするかを本格的に考えないといけないと思ってますね。趣味というものがない人間なので。

ボランティアをやりたいリタイア男性が、「何のボランティアをしたいですか?」と尋ねられて、「何でもいいからやりまーす」と言うのを今まで笑ってましたけど、じゃあ自分は何なんだろうと考えてみました。

それでとりあえず、今年(2017年)から明治学院大学のゼミに通ってます。
別に試験を受けて入ったわけではなくて、たまたま飲み屋で明治学院の先生と一緒になったんです。それで先生が言うには、明治学院の生徒はおとなしいんで、ゼミは半分は社会人の人が来てるんですって。学生10人、社会人10人。それならっていうんで、通い始めました。

飲み屋で一緒になった先生が法学部だったんで法律のゼミなんですけど、ゼミ以外に「高齢社会と法律」という授業があって、面白そうなんでこれにも通ってます。要するに成年後見制度とか、私たちに関係のある法律ですよ。そういうのをまとめて勉強するのもいいかなと思って。

成年後見制度
精神上の障害 (知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように 家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度。
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残間
どうですか、この歳になって大学に通うのは。

吉永
大学の授業ってこういうもんか、って感じですね。私、ほとんど大学には行かなかったから。

「高齢社会と法律」の方は社会人は5人くらい。勉強が趣味みたいなおじさんと、介護施設の職員の方が2〜3人いますね。

残間
今に吉永さんが先生になっちゃうんじゃないですか? 下手な先生より詳しいこともあるでしょう。

吉永
とてもとても。まず、読めない法律用語がいっぱいですよ。英語の辞書引くみたいに、調べながらじゃないと頭に入っていかない。それにどうして法律の文章って、こんなにわかりにくいんだって感じです。「口語訳しろ!」って言いたくなりますよ。
それでも法律の解釈って、こうやっていくんだなあということはわかってきます。

“上手く生きられなかった人たち”の役に立ちたい

吉永
それで私が最終的に何のお役に立てるとかと考えると、私自身がそれほど恵まれた家庭に生まれたわけではないし、いつもいつも薄氷を踏むというか、薄氷の八艘飛びみたいな人生を送って来たました。どこで転げ落ちてもおかしくなかったです。幸い転げ落ちなかったですけど、なんてありがたいことだったと思ってるんで、落ちちゃった子を拾い上げたいという気持ちが強いんですよ。

社会的に弱者と言われている子たち。虐待などの家庭的な問題や格差の問題から、落ちてしまった子たち。家庭が裕福でも転げ落ちちゃう子もいるんですけれどね。
そういう子たちは一回失敗することで、もっと状況が厳しくなるわけです。そこを何とか社会で生きていけるように、手助けしたいなあという思いはあります。

残間
社会的弱者への視点というのは、吉永さんに昔から通底しているテーマですよね。性同一障害についてもいち早く取り上げていましたし。※『性同一性障害〜性転換の朝(あした)』集英社新書/2000年

吉永
何て言うんでしょう。いろんな理由から“上手く生きられなかった人たち”の役に立ちたいですね。こういう風に言うと、すごくいやらしいですけど。

残間
そんなことはないですよ。むしろ、そういうことを外に向けて言ったほうがいいと思います。吉永さんはNPO活動なども経験して、善意だけではままならいことがわかった上での発言ですから。

吉永
もちろん、そういうことに時間が取れないうちに死ぬかもしれませんが、今も更生保護施設などを回ったりしてます。微力ではあるけれど、何か役に立てるかなあとは思ってます。
だから2017年は法律を勉強してきましたが、子供たちのことを考える上で、そろそろ心理学も勉強しないと、という感じですね。

まあ、長々生きてきたので、役に立てることもなきにしもあらずなので、力を貸せる場があれば手伝いたいし、その時のために学んでます。でも歳だから、なかなか頭の中に入って行かないんですけどね(笑)。

残間
吉永さんらしい“終盤”だと思います。
今日はありがとうございました。2018年もよろしくお願いします。

吉永
こちらこそ、よろしくお願いします。



(終わり/2017年12月取材)

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vol.1 どう死ぬかが気にかかる

vol.2 取材はいつでも“真剣勝負”

vol.3 21世紀がこんなことになるなんて思わなかった

vol.4 仕事がなくなって、まだ身体が元気なら

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