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古希を前にして考える。 3/4

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vol.3 21世紀がこんなことになるなんて思わなかった


残間
吉永さんのもうひとつの顔として、テレビのコメンテーターというのがあるんですが、テレビは最近どうですか。どうも私には、少し以前とは違うなあという印象なんですが。

吉永
気がついたら、もう25年もやってるんですけど、だんだん隙間を通してものを言う感じにはなってますね。それは25年前とは違います。忖度じゃないんですけど、言えないことが多くなってます。そういう雰囲気ありますよね?

残間
言葉尻を捕らえて、いろいろと言われることが多い様に思います。特に吉永さんは、社会時評を求められるから大変ですよね。

吉永
怖くなっちゃうんですよね。だからすごく言葉を選びます。言いたいことがあるとして、前は言いたいことをストレートに言えたけど、今はストレートに言うと、いろんなところからクレームが来ます。
そうすると言いたいことを曲げずに、どう言えばそこを突破できるんだろうと考えますね。これってこういうことですよね、ということを何かの例えにするとか。するとストレートな意見のところではなく、例えのところに「それは困るなあ」と思ってもらえたり。

残間
そこにちょっとしたクリエイティビティが求められますよね。

発言の場を与えられている人間には責任がある

吉永
こういうのは大昔にもあって、江戸時代だと倹約令で地味にしろって言われたら、裏に派手な布地を貼るような知恵? あるいはスターリン時代のショスタコービッチみたいに、音楽の旋律の中にスターリン批判を込めるみたいな。

日本はまだそこまで不自由ではないけれど、そういう時にただ黙るのではなくて、じゃあそれをどうやって言えるだろうと考える努力は、しないといけないと思ってます。実際、本当にものが言えない時代が、また来るかもしれませんからね。それまでは言う場を与えられている人間は、言うべきことを言わないといけない。

もちろん自爆テロ的に言ってしまうのは簡単ですよ。でも自爆テロをすれば、そこで終わりですから。“狂人”の一言で片づけられかねない。それもまた片腹痛いですよね。

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残間
知り合いに聞いたんですけど、最近、博多中洲の金曜の夜は、朝5時までタクシーがつかまらない、バブルのような熱気なんですって。この表参道界隈も先週末はそんな感じでした。それに株価は高い。
だけど一方でミサイルが飛んできたり、アメリカが実力行使するかもという話も聞こえてくる。いずれにせよ、そんなにいい時代とも思えないんですよね。
我々はかつてバブルを体験しました。バブルは後になって冷静に考えると“恥の時代”だったとも思いますが、あの時と今は全然違いますよね。

吉永
デカダンス的になってますかね。どこまで進んでいるのかわかりませんけど、世の中が真っ暗になる寸前の狂奔状態というか。

残間
今、国の中枢は2020年のオリンピックに照準を合わせて、日本が新しい道を突き進むようなことばかりが聞こえてきますが、私は悲観的なんですよね。2020年の作られたピーク以降は、いろんなことやものが下降していくんじゃないかって。
だから街で赤ちゃん見かけると、「ごめんね。大変な時代にしちゃって」と言いたくなってしまいます。

日本にも押し寄せる“分断”の時代

吉永
20世紀というのは前半にすごく苦労をして、その分、反省して、理想を掲げて、経済的にも文化的にも、ある程度の豊かさを獲得してきました。ところが21世紀になったら、すごく破滅的な方に向かっている気がします。それは日本だけでなくて世界的にそう。

今、一番胸が痛いなあと思うのは、この間テレビで見たスペインからのカタルーニャの独立問題。独立したくなる問題はあるんでしょうけど、あそこに日本食レストランを経営している日本人がいて、そこに独立賛成派と反対派のコックさんというか板前さんがいたわけです。すごくいい職場環境みたいで、独立派も反対派も休日は一緒に過ごしたりしてたんですって。店もうまく行っていた。独立派も反対派も昔からいたんですけど、共存できてたんですね。

ところが白黒つけようと、この間、住民投票をやったら、それが共存できなくなった。独立派だったか反対派だったか、どちらか忘れましたが、それで片方が店を辞めた。それで店中がもう片方一色になった。一緒には働けないよというほどの関係性になってしまった。

カタルーニャの独立問題
2017年10月1日、スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立を問う住民投票が実施され、90%以上の票が賛成に投じられた。しかし、投票率は43%と低く、反対派が投票を拒否したことが原因とされる。また、州政府は独立を宣言したものの、スペイン国政府(スペイン高等裁判所)は、独立宣言を無効としている。
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カタルーニャのことを見て思ったのは、これから日本が直面するのは国を二分する問題なんですよね。
憲法の問題にしろ、今までは護憲派と改憲派というのがいたかもしれないですけど、それでも何となく共存できてきたじゃないですか。変えるべきだ、いや絶対変えちゃいけないという二人が同じテーブルでご飯を食べていても、憲法の話でバトルをした後、違う話で笑い合えた。
でもこれから先は、カタルーニャで起きてることが、日本でも起きないとは限らないと思います。私の友達の中にも改憲派がいるし、護憲派もいますけど、その人たちが同じ店にはいられないよって、いがみ合うのかなと思うんですよ。
サンフランシスコの慰安婦像や姉妹都市の問題もそうですよね。気に入らないから、もうお前らとはつきあわないよみたいな感じになってます。

すごく大人気ない。でも世界中がそういう風になってきています。背中を向けたまま言い争うような、そんな時代に来年ぐらいから入りそうです。60数年生きてきて、最終的にこれかよって感じで情けないですよ。

残間
誰も望んでいない分断なんですけどね。

吉永
憲法のことで言えば、憲法のどこが都合が悪くて、どう変えたいのという時に、そこがはっきりしないんですよね。本当は多くの国民が憲法のここで困ってるんだよと思っていたら、いがみ合わなくても変えられるはずなんです。
どうしてこんなにもめるんだろうという感じ。ですから、面と向かって話せない人が増えているような気がするんです。昔は話せたのに。

残間
私たちはまだその変遷を知っていますけど、この状況の中で大人になっていった若者たちは知らないですよね。かつてはもっと自由にものが言えたとか。

吉永
パレスチナとイスラエルがしょっちゅう戦っている時に、これを何とかする知恵はないのかって思ったものですけど、むしろ世界があの方向に向かっているのを、どうにも止められない状況ですよね。
オリンピックで人の気持ちがひとつになるような時代でもないし。平壌オリンピックにロシアは来ないとか、北朝鮮は参加しないとか。人に忍耐力もなくなっている。そういう時代にどうやって自分を保っていけばいいのかなって思います。どう自分は死ぬのかなという問題も一方でありながら。

とにかく、世の中がいい方向に向かっていないことは、みんなが実感してるわけです。

残間
ほとんどの人はそうだと思います。

吉永
とてもじゃないけど、新年を寿ぐ雰囲気じゃないんですよね。



(つづく)

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vol.1 どう死ぬかが気にかかる

vol.2 取材はいつでも“真剣勝負”

vol.3 21世紀がこんなことになるなんて思わなかった

vol.4 仕事がなくなって、まだ身体が元気なら

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