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時代が変われば、扱う事件も変わります。2/3

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vol.2 最近の離婚事件では、夫が子供にこだわる


残間
さて訴訟というのは、ある意味、時代を反映するものだと思います。最近はどんな事件が増えてますか、あるいは減ってるんでしょうか。

田中
離婚事件が多いですね。離婚件数自体は横ばいか、やや減っているんですが、調停や訴訟に持ち込まれる件数は増えています。

残間
どのあたりで揉めるんですか。

田中
子供をめぐる権利です。親権や離婚後の面接や交流に関するもの。月に何回会わせるかとか。離婚の協議というのは、婚姻の解消自体もありますが、いろいろな枝葉の問題が出てきます。慰謝料とか生活費とか財産分与。それで最近は、最後まで残ってしまうのが子供の問題なんです。

原因は男性側の変化ですね。昔は男の人は子供にこだわらなかったんです。
私が弁護士になった頃は、離婚後は新しい女性と結婚して子供ができると、そっちの方が可愛いものですから、養育費を払わないというケースがあったぐらいですけどね。

ところが最近は、条件的にはすぐにでも再婚できそうなのに、再婚はしないで親権を欲しがったり、面会の回数を増やしたがる男性が増えています。それで争うことになる。 ひと月に何回会うとか、一回何時間とか、どこまで連れて行っていいとか。そんなやり取りばかりですよ。どうして男がこんなに子供に執着するようになったのかと思います。

残間
へえ。揉めるのは何歳ぐらいの男性が多いのかしら。
田中
三十代後半から四十代ですね。

残間
するとまだまだ人生やり直せる歳ですよね。

田中
子供が大きいと本人の意思がありますから、揉めるのは子供が小さい場合です。生後まもなくとか1歳2歳。

残間
そんな歳の子の親権を取ったり、一緒に暮らすにしても大変でしょうに。

田中
面接は一週間に一回、それも一日中とか。いろいろと要求しますよ。

残間
田中さんは、夫婦どちらの側にも立つことがあるんですよね。

田中
ええ。でも夫の側に立ったのは一回だけかな。
妻側にしてみれば、別れた夫とは距離を置いて子供と一緒にいる方が平穏なんですよ。離婚の原因がDVやモラハラだったりすると、もう顔も合わせたくないんですが、子供が小さいと自分が元の夫のところへ連れて行くか、向こうに来てもらわないといけない。PTSD(心的外傷後ストレス障害)状態になったり、体調を崩してしまう方もいます。

それから子供が小さいうちは親権は母親に行くのが当たり前と思われてきましたが、先日、父親側が綿密な養育計画書というのを作成・提出した結果、親権が認められたという例が出ました。母親に何か問題があったのかもしれませんが、ちょっとびっくりしました。
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残間
ふーむ‥‥‥何なんでしょうね、男性側の執着する心は。

田中
子供が少ないことも影響しているかもしれません。昔は3人4人普通に子供がいましたけど、一人だと“跡取り”として見ているんですよね。両家のおじいちゃん、おあばあちゃんも絡んできたりしますから。

残間
遺産相続についてはいかがでしょう。

田中
遺産相続はですね、もう古今東西変わらずあるんですが、最近は高齢社会なので、相続の前に“親の取りっこ”になる場合がよくありますね。

残間
成年後見の問題ですか。

田中
それもあるんですが、まあ親がかなり高齢になって認知症になる。でも結構お金を持ってたりする場合が多いんです。年金や遺族年金なども入ってきますが、年寄りなので本人は使わないから、預貯金がいっぱいあったりします。そういう親を囲い込もうとするんです。

残間
それで囲い込めなかった側が訴えるわけですね。

田中
そうです。

残間
本当は親本人が任意で後見人を決めておけばいいんでしょうが、あれも公証人役場に行ったり大変なんですよね。

田中
本人の意識がはっきりしている時に、公証人役場で公正証書を作って登録をしておかなければなりません。最近は成年後見の申し立ても多いです。

残間
認知症になってしまってからだと、療養費がかさんだりして本人の預貯金を取り崩したくても、できないということが起こります。

田中
やっちゃってる人も多いですけどね。ただ相続人になる予定の人同士で、関係がまずくなることがあります。

残間
あいつ使いやがって……と。

田中
そう言われちゃうんで、成年後見を申し立てて、第三者後見を立てる場合がありますね。

残間
あの第三者後見というのは、裁判所が勝手に決めるんですか?

田中
勝手というか、名簿があるんです。私も名前が入っていますよ。
昔は裁判所が一本釣りしたり、申立人の縁故で決めてたんですけど、弁護士も行政書士も含めてなんですけど、財産を横領する不心得者が多くいまして。
まあ、目の前に何千万円ものお金があって、かたや持ち主は認知症でわけがわからない。そして裁量権は自分にあるとなると、お金に困ってるとつい手が出ちゃうんでしょうな。

今は弁護士会で登録して、研修を受けて問題のない人間を名簿にしてあります。それで裁判所から話が来ると、弁護士会が名簿の中から推薦するというシステムです。

残間
田中さんも後見人になることはあるんですね。

田中
まだなっていませんが名簿には載っています。それは顧問先から「いざという時に頼むよ」と言われているんで。実は後見人は裁判所への報告があって、結構めんどくさいんです。すると多少のお金で解決できるならと頼まれる場合がありましてね。

残間
離婚後の男性の子供への執着、高齢化が相続にもたらす影響と、やはり弁護士の仕事も変わってくるものですね。

(つづく)

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vol.1 日本に弁護士は根づかない?

vol.2 最近の離婚事件では、夫が子供にこだわる

vol.3 弁護士に引退はないけれど‥‥‥








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