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上向きの日も、下向きの日も、今を楽しむ 2/4

浅葉克己さん(アートディレクター)

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vol.2 卓球も人生も、来たものを打ち返してここまで来た


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残間
卓球生活といえば……7月20日に、卓球の全日本クラブ選手権大会が開催されましたね。「男子50代の部」の優勝チームは、浅葉さん主導のチーム「東京KINGKONG」でした。
おめでとうございます。

浅葉
ありがとうございます。全日本での優勝は18年ぶりでした。嬉しかったですね。

残間
今「東京KINGKONG」はどれぐらいの規模のクラブなんですか?

浅葉
参加したことがあるのは全部で400人ぐらいですかね。
毎週土曜日に練習をしていますが、毎回30人ぐらいが集まります。

残間
浅葉さんも毎週参加なさるんですか?

浅葉
もちろん。それから他にも特訓場があって、一週間に一度は指導を受けています。
……実は、「卓球生活40年」と言っていますが、中学校・高校でも卓球部に所属してはいたんです。

ただ、本当に弱小チームだった。あの頃の写真、お見せしたいですよ。全員ペンホルダーで、「これじゃ、どこの試合でも負けるよな」みたいな。それで実際負けてた(笑)。

34歳の頃、カメラマンの十文字美信という人と酒の席で話していたら、偶然、同じ高校出身で、しかも同じ卓球部に所属していたことがわかって。にわかに卓球熱が再燃したんです。それで「東京KINGKONG」を設立することになりました。

残間
そこから全日本優勝。すごいですね。

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浅葉
僕はわりと、特訓合宿とか修行が大好きなんですよ。
小学校4年生のころから18歳までずっとボーイスカウトをやっていて、それが関係してるんでしょうかね。

桑沢デザイン研究所で担当しているゼミでも、毎年夏に書道合宿をやりますよ。2泊3日で。「3食は食べさせるけど、寝ないで描け!」っていう授業。僕が寝てしまうとみんなも寝るから、ずっと起きて、生徒の前で描いている。

ボーイスカウトといえば、以前タナカノリユキさんと日比野克彦さんの3人で、オーストラリアにアボリジニを訪ねて行ったときなんか、その経験が活かされましたよ。みんな、全然外で用が足せないの。いちいち僕が指導したんです。

あれはね、地面がちょっと斜めになっていて、木が生えているところが良いの。その木に掴まって、素早く用を足すんです。
彼らに「猛獣がいるから急げ!」「風上でするな! 風下に行け!」って、訓練しました(笑)。

テントも無いので、スリーピングバッグで雑魚寝をしたんです。一週間ぐらいかな。楽しかったですね。
広告を作るのに、世界中で撮影場所を探し回りもしましたね。世界各国、だいたい行きましたよ。南極はまだですが……。

残間
そうそう。インドの水中ヨガの写真とかありましたよね。
私が印象に残っているのは、イスラエルの死海で、浅葉さんが卓球をしている写真です。

浅葉
あぁ、ありましたね。広告には使わなかったものですが。
あれは、イスラエルで個展をやってほしいと頼まれたときのものです。

イスラエル大使館に行ったら、「死海は塩分濃度が高いから、ボウリングの球でも浮くんですよ」と教えてもらって。その瞬間、「死海に卓球台を浮かべてピンポンをする」というアイデアを思いつきました。

残間
卓球台も浮くんですか?

浅葉
そのときは発泡スチロールを噛ませて浮かべました。
大変ですよ。放っておくとヨルダンに流れていってしまうから。戦争になっちゃう(笑)。

一緒に写っているのは、ヤコブというイスラエルの卓球チャンピオンなんです。撮影が始まると、まず僕がサーブして、ヤコブがそれを受けそこなった。その瞬間、僕が最強チャンピオンに(笑)。

あの卓球台は、イスラエルのホテルに今でも置いてあるみたいですね。
三枝成彰さんがイスラエルに行ったとき、「お前の写真と卓球台がホテルにあるぞ!」と電話がかかってきましたよ。

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そういえば、『卓球王国』という月刊誌でもう何年も「ひとりピンポン外交」という、写真と文章のコラムコーナーを連載しているんです。来月号の特集はもちろん、全日本優勝のこと。

写真をどうしようかなぁと悩んでいたんですが……「オノマトペ」を使う、というのを閃いたんです。
オノマトペというのはフランス語で「擬音語」という意味なんですが、卓球のチームメイトのスマッシュの音が本当に鋭い音でね。「ズキューン」という感じ。この音を図案化しようと思いました。
漫画で「ゴーッ」とか「ドカーン」といった音が表現されていることがありますが、あれと似たようなイメージですね。
「ズキューン」の形にチーム6人の顔を切り抜きで貼ってみてはどうかなんて、今考えているところです。

残間
浅葉さんって、そういうデザインのアイデアはどこから出てくるんですか? 頭の中に“財宝小屋”があるみたい。

浅葉
うーん。手が動いちゃうんですよね。書いているうちに思いつくというか。
卓球で足腰を使うおかげか、身体はずっと元気ですからね。それから動体視力を使うからかわからないけど、近眼でも老眼でもない。
卓球って100歳の選手が4人いるらしいんです。ぜひ一戦まじえてみたいですね。

残間
死ぬまで卓球ですか。

浅葉
もちろん。今は、スマッシュした瞬間に死ぬのが一番いいんじゃないか、と思っています。バーンと打って、ドーンと卓球台に倒れ伏す。
「スマッシュ死」です(笑)。
(つづく)

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vol.1 アートも卓球も書道も、まだまだ続きます

vol.2 卓球も人生も、来たものを打ち返してここまで来た

vol.3 飽くなき文字(タイポグラフィ)へのこだわり

vol.4 誘いが来ないなら、自分から行けばいいんです

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