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58th:情熱は色あせないと思った話

2021.01.22

非常に私ごとではございますが、
2021年は1ヶ月に1つは、
美術館的なものに足を運ぶと決めました。

あまり高い目標ではございませんが、
これまでそういったものを、
日常に取り入れる習慣がなかったし、
コロナの影響もあるので、
実現可能な優しめな条件にしておきました。

その第一弾としてどこに行くか迷っていたところ、
清澄白河の東京都現代美術館で開催されている、
アートディレクターの石岡瑛子さんが、
生涯で手掛けた仕事を一挙公開している、
『血が、汗が、涙がデザインできるか』を
見に行くことに決めました。

正直、私は石岡瑛子さんを存じ上げませんでした。
それでも見に行こうと思った理由は、
この展覧会のタイトル。
「血、汗、涙」これらをデザインできるのか、
という、全人類の哲学的悩みみたいなタイトルが、
とても心に響いたからです。

入社して初めて手掛けた、
資生堂の美容用石鹸の広告、
初めてできたパルコの広告、
角川書店の表紙。
仕事の転換期を迎え、
手掛けた映画衣装、
シルクドソレイユの衣装。

彼女の手掛けてきたそれらは、
決していつまでも古臭いとは言われようのない、
フレッシュなものばかりでした。

展示の途中に、
打ち合わせ段階のメモや、
作品の仕上がる直前の、
指摘書などが展示されていたのですが、
いずれも、大昔のものとは思えないほど、
生身の人間の熱量と息遣いが感じられるのです。

展示の最後に、
彼女のポートレイトが飾られていたのですが、
彼女のことを知らない私が、
「きっと石岡さんはこんな女性」と、
思い描いていた人そのものでした。

そして、
「この人はなんとなくZammaと通ずるところがある。」
と、感じていたのですが、
展示を見終わって
「石岡瑛子 残間里江子」と、
グーグルの検索エンジンで検索をかけたところ、
二人はやはり仕事の場で、
同席したことがありました。

この展示を見て私が感じたことは、
仕事にかけた情熱は、
こだわればこだわるほど、
思いが強ければ強いほど、
色あせることはない、ということです。

1世紀ほど前の作品が古臭く感じられないのも、
そこに「人間の情熱」という、
決してどの時代にも変わらない
エッセンスが確かに加えられているからでしょう。

インターネットが発展し、
世の中は大きく変わったと言われています。
デジタルで出来上がった世界は、
なんだか軽薄で、
寂しいもののように言われることも多々あります。

ですが、
今回の展覧会には、
クリエイティブ業界に携わり、
そこに情熱をかけてそうな人が、
緊急事態宣言中にもかかわらずたくさん集まっていました。
(もちろん美術館自体は、
 入場制限等、感染症対策をとっています。)

それは「情熱」を大事にしなくては、
と思う人の量だと私は思います。

様々なことがデジタル化し、
効率的に働くことを求める人が増え、
なんとなく冷たい世の中になっているように思うかもしれませんが、
実際はそうではなく、
思いがたくさんこもったものはしっかり評価され、
「思い」があるものにはしっかり答えたい。
そういう思考に人々は育っているのかもしれません。

人の体温が感じられないといわれていた、
ネットワーク社会も、
どんどん進化しているのだろうと、
遠回しに実感させられた展覧会でした。


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