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54th:「普通」という言葉の乱暴さ

2020.10.16

少し前の話になりますが、
東京都・足立区の区議会議員さんが
「同性愛が広がれば、
足立区はいずれ滅びてしまう」という内容の発言をし、
波紋を呼びました。

この報道を聞いたとき、
頭の中が「ハテナ」でいっぱいになりました。
「足立区が滅びる」という極論はもちろん、
「同性愛が“広がる”」という言葉も
その人々を全く理解していないが故にできる発言だと、
とても悲しくなりました。

先日、
草彅剛さんが主演で話題の
『ミッドナイトスワン』を観にいきました。
本作も、
トランスジェンダー(身体的性別と精神的性別が異なる人のこと)が
一つのテーマとなっており、
草彅さんは心が女性、身体が男性の役を演じています。

草彅さん演じる凪沙は、
ニューハーフショークラブで
夜の仕事に就いていたのですが、
とある理由をきっかけに、
一般企業の正社員の
就職面接を受けることになりました。

これまで通り、女性として、
長い髪に、メイクを施し、
素敵なピアスをつけて、スカートスーツで、
面接を受けにいくのですが、
面接官である中年男性は
戸惑いを隠すことができません。

そして、こう発言したのです。

「流行ってるもんね!LGBT!」と。

明るい声で笑顔で、
いかにも「僕は理解があるよ」と言わんばかりの
発言だったのですが、
凪沙の心に引っかかり、
明らかに傷ついた表情を浮かべました。

『ミッドナイトスワン』は
素晴らしい映画で、
たくさんの印象的なシーンで溢れているのですが、
このシーンはネガティブな意味で、
私の心に色濃く残りました。

LGBTという言葉や概念は
最近になって認知度や理解が広まっていますが、
決してその存在自体が、
最近生まれたわけではありません。

ずっと世の中にそういった思いを抱えた人が
存在し、それでも、世の中の風潮的に、
言い出せなかったり、
隠さなくてはいけないと
思ってきただけです。
いや、“思わされてきた”だけです。

彼らにとってはその感情は
流行りや他者からの影響で
醸成されたものではなく、
自然と湧き上がってきた気持ちです。

それなのに、
「男性は女性を好きなもの」
「女性は男性を好きなもの」
「身体が男性なら、心も男性に決まってる」
「身体が女性なら、心も女性に決まってる」

そんな風に自分自身がそうではないからという、
想像力の欠如故の、
傲慢な「普通」の押し付けが、
彼らの気持ちを無視し、
彼らを傷つけるのです。

同性愛が広がるものだと考えている区議も、
LGBTが流行っているのだと発言する面接官も、
無知故の言葉で、
誰かを傷つけ続けているのだと、
気づいてほしいと感じます。

区議は他にも、
「普通の結婚をして、普通に子どもを生んで、
普通に子どもを育てることが、
いかに人間にとって大切なことであるか、
学校で教えるべき。」と、
発言したそうです。

普通の結婚とは?
普通に子供を産むとは?
普通に子供を育てるとは?

区議の言葉の中にある「普通」を
大体はイメージができるのですが、
どうしてそれを誰もができることだと、
望むことだと、
決めつけることができるのでしょう。

とても乱暴で、想像力に欠ける、
本当に悲しく、ふつふつと怒りの湧く発言でした。

そんな風に「普通」という言葉に
違和感と乱暴さを感じていた、
今日この頃なのですが、
ふと、
「そういえばこの話どこかで聞いたなぁ」と
思ったのです。

記憶を辿ったところ、
2017年の「willbeアカデミー」にご登場くださった、
落合陽一さんが、
講義内で「『普通』という言葉が今、日本人をダメにしている」と、
発言していたのです。

当日のレポートを読み返してみると、
こう書かれていました。

今後日本は少子高齢化がさらに進みます。
人が高齢化するということは、
それだけ多様化が進むということです。
耳が悪くなったり、目が悪くなったり、
足が悪くなったり…。


多様化が進むということは、
「普通」がどこにあるのか、
不明瞭になっていくということだと、
私は思います。

★当日の落合さんの講義のレポートはこちらから読めます

「普通」という言葉で、
なにかを括る考え方が存在するからこそ、
そうでないものを「異常」と捉え、
差別的な感情を抱きます。

LGBTの話だけでなく、
今後の日本は多様化が進み、
「普通」の所在はなくなります。

どうか「普通」という、
乱暴な言葉で誰かを傷つけず、
多様性を受け入れ、
優しい心で他者を認めることができる、
そんな空気感が広がるといいなぁと願っています。

それこそが
「未来」だと、
私は思います。
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