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ジョフロワ江美のパリ便り vol.10

2025.02.27

南アフリカ・サファリ……そしてシングル・アゲイン

2018年2月、
冬休みの家族旅行は、
アフリカ最南端の国、
南アフリカ共和国でした。
旅の目的は、
Kruger National Park(クルーガー国立公園)のサファリ。
日本の四国と同程度の面積を有する鳥獣保護区です。

子ども達の希望で決めたアフリカ旅行でしたが、
結果的には、
これが最後の夫婦揃ってのバカンスになりました。

当時の私は「離婚」に関して、
数ヶ月に渡る迷いの時期を過ごしていました。
「離婚……今すぐ?
もう少し先延ばしにする?」
「外国人の自分にはフランスでの離婚は、
ハードルが高すぎる」
「フランス人弁護士とのコミュニケーションは大丈夫?」
「フランス語の法律用語を理解出来るの?」
様々な葛藤に悶々とした日々を送りながら、
精神的に辛い状況でした。

12時間のフライトと国内線を乗り継いで到着した、
Kruger National Park は、
20代前半に観た映画『Out of Africa』の世界そのものでした。
エッセイを書いている、この瞬間も、
アフリカの果てしない地平線から昇る、
オレンジ色に輝く壮麗な太陽が目に浮かびます。


【『Out of Africa』
原作者はデンマーク人の、
Caren Blixen(カレン・ブリクセン)。
英語のペンネームは、
Isak Dinesen (アイザック・ディネーセン)】


サファリのスケジュールは、
早朝(5時出発)と夕方(17時出発)、
オープンジープで移動します。
初日から、
滅多に見られないアフリカンワイルドドッグの家族に遭遇。
数十頭で移動する象の群れ、
狩りをするライオン、
穏やかな歩みで高木の中に点在するキリンの親子……。
そして、野生動物の中で1番好きな、
パンテールの荘厳な美しさに、
魅了されました。

宿泊はKruger National Park内の小規模なロッジ。
1週間の滞在中、
旅行者はオランダからのゲイカップル、
イギリス人のミドルシニア母娘……個性的な人達でした。


【Kruger National Park のロッジ。
夜はハイエナが出没するので、
散歩は不可です】


ロッジでの夕食はサファリガイド、
宿泊者達と打ち解けた会話を楽しみました。
キャンドルの温かい光と、
ワイン(南アフリカ共和国は美味しいワインの産地)で、
リラックスタイムの本音トークがいっぱいです。

ロッジ所属のアメリカ人サファリガイドは30代、
ニューヨーク・ウォールストリートの元ビジネスマン。
「バーンアウトになり、
全く別の人生・サファリガイドになる事を選んだ。
金融ファミリーの親族達は大反対、
何度も説得されて、
サファリガイドになる事を諦めかけた事もあったけれど、
自分の心の声に確信を持ち、
自分らしく生きる事を決心した。
アメリカを遠く離れてしまったけれど、
現在はアフリカの大地と野生動物に囲まれて、
幸せな日々を満喫している」
と健康的に日焼けした笑顔が印象的でした。

「みんな、迷いながら一生懸命、
何かを選択して生きている」

パリに戻る機内での眠れない時間の中、
非日常を過ごした、
100%の自然と動物達を思い出していました。
群れを作らず単独で行動するパンテール。
人間の乗ったジープの前を悠然と通り過ぎる、
凛とした輝く姿を間近に見たことで、
自分の中から湧き出てくる、
勇気とエネルギーが実感できたのです。

2018年春 離婚申請。
2022年5月 離婚成立。
27年間の結婚生活を終了しました。
そしてシングル・アゲイン……。





フォトアルバム 撮影:Emi


【サファリはオープンジープで移動します】


【サバンナシマウマ】


【絶滅危惧種のアフリカンワイルドドッグ。
滅多に遭遇しないので、
ガイドの人も写真撮影していました。】



【アフリカ水牛。
気性が荒く獰猛。
ライオンを倒す事もあります】



【強力な顎を持つハイエナ】


【至近距離を優雅に通り過ぎるパンテール(豹)】








ジョフロワ 江美
1963年広島県生まれ。
神戸松蔭女子学院大学卒業。
1995年からパリ在住。
日本在住時は雑誌『CLASSY』編集部勤務。
渡仏後は雑誌『25ans』の
パリ現地コーディネーター、
ライターを担当。
在仏日本人会「絵本の読み聞かせ」、
生活困窮者を支援するフードバンクなどの
各種ボランティア活動に従事中。



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