▲撮影:佐野篤 ▼デザイン:柳澤篤












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残間 オバマ大統領がホワイトハウスで
初めてサルサパーティを催したり、
今、サルサには追い風が吹いている気がするんですが。



渡部 オバマがホワイトハウスで
サルサを踊ったことは、僕も感慨深いですね。
米国では今年、人口でラテン系が
黒人を上回ったはずです。
そして「ラティーノ(ラテン系)を押さえるなら、
サルサを押さえろ」と言われているんですから、
オバマも無視できませんよ。
それからイスラムの信条主義と
アメリカの帝国主義の対立を打開できるのは、
ラテン文化しかない、と言う知識人もいます。
このラテン文化というのは、つまりサルサです。






残間

ジョージさんたちがやっているイベントも
大盛況ですし、この風に乗って、
この先さらにサルサが日本で広まるためにも、
「日本サルサ協会」設立、という風に
組織化は考えてないんですか? 
つまり、今のサルサ・ホットライン・ジャパンって、
ボランティアがいるといっても、
まとめ上げているのは
ジョージさんの個人の力じゃないですか。
ジョージさんが引退した後のことを考えると、
ちょっと心配です。
せっかく盛り上がっているのに。



渡部 わかってはいるんですが、実は僕は、
NPOとかいうのが大嫌いでね。
やっぱり経済活動を伴いながら
切磋琢磨して育っていくのが、
本当の市民文化だと思うんですよ。
今、日本でサルサで食べていけているのは、
30人くらいだと思いますけど、
もっと増えていかないと。
それからクラブ文化として育ってきたサルサと、
"協会"というものの相性も
考えなくてはなりません。



残間 社交ダンスのようにトップクラスを
"競技"として取り上げて、
その下に一般愛好者の裾野が広がっていくという
やり方もあると思うんですが。
NHKが大会を中継したりすると、
一気にメジャーになるのでは。






渡部

僕らが競技的なことを
まったくやっていないわけではないんですが、
それも違うんですよね。
それはさっき言ったクラブ文化と
絡むことなんですが、社交ダンスと違って
固定パートナーと踊るものじゃなくて、
サルサはその場で出会った男女が
自由に踊るのが大事なところですから。
それにサルサって、
本来1位、2位、3位みたいに、
順位をつけちゃいけない踊りなんですよ。



残間 そういえばこのあいだのイベント
(ジャパン・サルサ・コングレス2009)でも、
海外からのゲストを紹介する時に、
「○○のコングレスで1位になった」
というんじゃなくて、「もっとも長い
スタンディング・オベーションを受けた人」
という言い方をしていましたね。



渡部 そうそう。






残間

では競技ではなく、
「芸術」という路線はどうですか?



渡部 文化庁がサルサを「芸術」と認めれば、
いろんな支援や助成を受けられるでしょうけどね。
僕、一度文化庁に電話したことがあるんですよ。
別に認めてもらいたかったわけじゃないんですが、
どんな風にサルサは受け止められているかなと思って。
それで一時間程、文化庁の人と話したんですが、
結論としては、文化庁はサルサを芸術とは認めない、
ということでした。
まあ、望むところなんですけどね(笑)。
みんなで、誰とでも踊れるというのが
サルサなんですから。



残間 それこそ本当の意味での市民アートですね。
でも、文部科学省とか文化庁のお墨付きがあれば、
公共団体の支援や企業協賛なんかも
つきやすいんじゃないですか。



渡部 その「外務省 キューバ政府後援」
とかいう世界も嫌なの。
学園闘争世代だからなんだろうけど(笑)。
でもね、それで企業協賛が付いてお金が出るのなら、
いくらでも僕は役所に頭を下げますよ。
ところが全然、話が進まなくて。
企業や行政にお願いするのは、
もう疲れましたね。
最近は、自分のやれることを
やり続けるしかないという感じです。
それで僕の後は、きっと誰かが
サルサをケアしてくれるだろうと信じるだけです。



残間 うーむ、聞いてみると、
なかなか難しいものですね。

(つづく)