予定

安心こそが眠りに誘う

残間 他にも睡眠に関する
「常識のウソ」というのはありそうですね。
「春眠、暁を覚えず」と言いますが、
これはどうでしょう?
内山 実はあれは、まったく違う意味なんです。
残間 そうなんですか?
内山 「春の気配はとっても楽しい」
というぐらいの意味ですね。
「春眠、暁を覚えず」は
今どういう風に使っているかというと、
まず日中眠たいというのがひとつ。
それから寝床の中にいると気持ちいい、
というのですね。

本当は、春になって自然が生き生きしてきたことが、
嬉しく感じられるという意味だそうです。
以前、このテーマでコラムを書いたことがあって、
その時に中国文学に詳しい友人に聞いたことがあります。

「春暁」という漢詩の一節なんですが、
春になると夜明けが早くなって、朝起きる頃には、
もう鳥がさえずったりするようになります。
詩を詠んでいる人は、そういう季節の移り変わりに、
寝床の中から思いを馳せているわけです。
つまり「幸せな春の目覚め」のことなんです。

じゃあ医学的に春は人間が眠たくなる季節かというと、
そうでもなくて、一番眠たいのは秋から冬です。
残間 でも、みんな春になると眠たいと言いますね。
内山 暖かくなって気持ちがいいんでしょうね。
残間 眠りたい人は寝具に凝ったりしますが、
どんな寝具がいいんでしょうか。
枕とかいろいろありますが。
内山 寝具は眠りには大きなファクターではないと思います。
ただ一晩でコップ一杯ぐらいの寝汗をかきますので、
吸湿性が高い方がいいんですが、
別に30万円の布団を買う必要はなくて、
スーパーで売ってるので十分だと思います。
残間 硬い、柔らかいはどうでしょう。
フカフカの方が眠れる気がしますが。
内山 これも好みの問題でしょうね。
外資系の超高級ホテルのベッドは
僕には寝にくいと思います。
ホテルのベッドで一番気に入ってるのは
「東横イン」ですね。
残間 硬いんですか?
内山 いえ、ほどほどで普通です。
外資系の超高級ホテルのいいベッドというのは、
僕にはちょっと硬いようで
寝にくいものが多いように感じます。
まあ、僕の個人的な習慣でしょうけど。

それよりも寝具に凝ってしまう人は、
眠れなくて心配になってきてるので、
誰かの推薦状が欲しくて、
それにはまってしまうんでしょうね。

心地良さについては自分で判断することが大事で、
それぐらい我がままになるというか、
少なくとも生活、眠りについては、
物事を好き嫌いで決めるということが
とても大切なことだと思います。
残間 不安が眠りの大敵のような気がしますね。
必要なのは自信かしら。
内山 そうです。よく眠るには安心が必要です。
残間 ちなみに内山先生は
どんな風に寝るのがお好きなんですか。
内山 僕ですか?
僕はリビングの皮のソファの上で
テレビを見ながらうたた寝するのが好きですね。
良くそのまま朝まで眠ってしまいます。
残間 ええっ! そうなんですか?
内山 そのせいでソファが長持ちしないんですよ。
さっき睡眠中は寝汗をかくといいましたが、
皮は汗を吸うようにできてないので、
ある程度経つと皮がダメになってしまいます。
残間 (笑)睡眠学の先生がソファでうたた寝ですか。
今日、一番意外な話のような気がします。

内山先生、話はまだまだ尽きませんので、
今度はウィルビーのメンバーの前で、
また睡眠に関するお話をしていただければと思っています。
その時はよろしくお願いします。
今日は長い時間、ありがとうございました。
内山 こちらこそ、ありがとうございました。
(終わり/2011年10月)