予定

基本は体内時計にしたがうこと

残間 伺っていると、いろいろと眠りに関する
「常識のウソ」みたいなものがあるようですね。
内山 ありがちなのは、夜に頑張らないといけない時、
昼間にそれに備えて熟睡しておくと
いいんじゃないかと考えてしまうんです。
これは反対で、昼に熟睡してしまうと
頭がボーっとしてしまうんですね。
ちょこっと寝る分にはいいんですけど。
残間 ちょこって、どれくらいですか?
内山 30分くらいですね。
昼間に熟睡まで入ってしまうと、
身体全体が休んでしまうんです。
すると起きた時に頭がボーッとして、目が覚めない。
コーヒーを飲んでも効かない。
一方で、夜になると体内時計の働きで、
否応なく身体は眠る準備を始めてしまいます。

テストの前の日に徹夜で勉強しようと思って、
昼間眠っておいたけれども、結局、
夜もいつも通り眠ってしまったという、
よくやってしまうパターンです。
残間 (笑)ありますね。
内山 僕たちは睡眠を、不足すると眠たくなって、
足りていれば眠たくならないと単純に考えがちですが、
必ずしもそれだけではないんですね。

夜になると眠たくなって、昼間のある時刻になると
目が覚める、というのが一番大きいんです。
そこに昼間の活動量や睡眠不足が絡むと、
少し睡眠が増えていくという形です。
それから起きていないと
自分の身に危険が及ぶようなことがあったら、
目が冴えるということがあります。

2000年を過ぎた頃から、
こういう仕組みの全貌がわかってきました。
個々の分野で新薬の開発が進んでいくと思います。
残間 コントロールが可能になるということですよね。
内山 おそらく、ある程度はできるようになると思います。

ナタニエル・クライトマンという、
かつて睡眠の研究の最先端にいた人は、
1960年に書いた本で、今のペースで科学が進めば、
我々はそのうち睡眠をすべて意のままに
コントロールできるようになるだろう。
そして昼間の覚醒もコントロールできるようになると
予測していました。
より長く起きていることで
"未来の"人間は仕事に喜びを見いだし、
かつ余暇にも時間を割いて、短い時間でぐっすり眠り、
幸福な暮らしを送るだろうと、
皮肉ではなくて本気で考えていたんです。
まだベトナム戦争前で、
科学の未来がバラ色だった頃です。

ただ、「休息」と「活動」というのは、
人間のものすごく本質的な部分ですよね。
そこを完全にコントロールできるようになるとは、
僕は思ってないです。
残間 まず大切なのは、
自分の体内時計に従うということなんですね。

先生がいつも言うのは、睡眠は個々人、
それぞれ違うんだということですよね。
自分なりの睡眠をどうやって知ることができるんでしょう。
内山 まあ日中眠くならない程度に眠るということですけど、
難しいのは、睡眠不足でも朝6時に目が覚めたりします。
特に年をとってくると朝型になってくるので、
自分のことを考えると
なかなかそうは言えないなあという感じですね。
残間 睡眠不足で朝早く起きて、
それで身体のバランスはとれているんですか?
内山 たぶんとれていないと思います。
若いうちはともかく、年をとると、
睡眠不足でも疲れていても朝早く目が覚めるわけですから。

私についていえば、50歳を過ぎてからは、
土日で取り返せないため、
夜更かしで無理をすることができなくなりました。
残間 年をとったら無理をするなと。
(続く)