残間 考えてみると、三枝さんとは、
年齢を重ねることの意味とか、「シニアは〜」とか、
あまり話をしたことがないですね。
三枝さん68歳になりますが、
「歳をとる」ということを、どう捉えていますか?



三枝 歳をとる。歳をとるねえ………。
あまり考えたことないね。何か変化を感じるとしたら、
周りが死んでいくことかな。
このあいだ小学校の同窓会に行ったら、
36人中7人死んでました。約2割。それぐらいですね。
酒はますます強くて恥ずかしいくらいだし(笑)。
近頃は体調もいいんで食事が美味しいしね。
身体にいいとか悪いとか考えずに、しっかり食べてます。

あいかわらず化学調味料は大好きだし、
有機野菜なんて興味がないし、
おいしけりゃいいんだよね(笑)。
運動大嫌い。ついでに言えばエコロジーとかも興味ない。



残間 歳をとることを実感するって、
「衰え」を感じた時なんじゃないかと思うんですが、
そんなことは? あるいは趣向の変化とか。



三枝 衰えねえ。仕事のペースはますます上がってるしね。
と思ってるのは自分だけかな?(笑)
趣向といえば、相変わらず女性で一番好きなのは18〜19歳。
これは20代から一貫して変わらないね。
年上とつきあったことないもの。



残間 18〜19歳って………もう娘さんより年下でしょ。



三枝 そう。いったい何やってんのよ! って
娘に怒られてます(笑)。

要するに少年でいたいんじゃないのかなあ。
大人になりたくない。分別のあるようになりたくない。
大人的な発想をするのはダメだと思ってるし、
大人ならこうするだろう、ということはやりたくないね。






残間 既製の概念とか価値観にとらわれたくないと。



三枝 それもあるし、官僚的な身の処し方も嫌いですね。
頼まれたことは極力やる。できないことは別ですが、
できることは、何とかやるよう努力する。

かといって別に若くありたいとも思ってないんだよね。
歳を考えたことがない、というのが近いかな。



残間 異性に対する姿勢も、あい変わらず現役だと。
よくダイエットをしてますよね? 
昔はいつでも人前で裸になれるようにと言っていましたが。



三枝 異性に対しては、それは男として当然のこと。
でも体型維持は………何せ、運動嫌いだから。
「明かりを暗くして」って言うしかないね(笑)



残間 運動が嫌いなんですよね。



三枝 「運動は頭を悪くする」というのが持論だから。



残間 さっきのエコロジーや有機野菜もそうですが、
歳をとって分別がつくと受け入れそうなものは、
全部拒んでるんですね。
そういえば、このあいだ会った時、
仕事をする時間帯が変わったって言ってませんでした?






三枝 歳をとるのは気にならないんだけど、
「死にたくない症候群」というのは(笑)、
ずっとあるんですよ。
3年ぐらい前までは、夜の11時くらいに帰ってきて、
それから朝の6時くらいまで仕事をしてたんですね。
それから寝て午前11時に起きるという生活でした。
年間120日ぐらい徹夜。

それで平気だったんですけど、
ある時、血圧が245まで上がって、
まず脳梗塞の前兆みたいなのが来たんですよ。
黒内障といって、15分くらい目が見えなくなることが
立て続けにあって、さすがにマズイと思ったんですね。
病院に行ったら、医師から
「あなた、このまま今の生活を続けていると
重大なことが起こりますよ」と言われたんです。
重大なことというのは脳梗塞なんですが、
その日に3つ約束させられました。
まず、その日から煙草をやめること。
次に体重を20代の頃に戻すこと。
それから散歩すること。散歩以外は守ってます



残間 運動も一時期やろうとしてましたよね? 
ランニングマシンとか買ってませんでした? 
かなり高級なのを。



三枝 買うことは買うんですけど………。
今じゃ女房に、使わないなら早く捨てろと言われてます。
運動もそうだし、僕はネットもやらないんですけど、
パソコン嫌いというより、一日24時間のなかで、
それに費やす15分、30分が、
もったいないと思っちゃうんですよ。
本当に仕事が終わらないんで。



残間 三枝さんは10のオペラを作曲することを
ライフワークにしていますからね。
81歳で完成する予定なんですよね? 
今どこまで来ていますか?



三枝 『忠臣蔵』『Jr.バタフライ』『悲嘆』と来ていますね。
次は2013年に『特攻隊"KAMIKAZE"』というのをやります。



残間 もう上演されることが決まっているんですね。



三枝 されるって、僕自身が公演を行うんです。
要するにホールを借りただけ。



残間 そうやって自分を追い込んで行くんですね。



三枝 追い込まないとできないですよ。
頼まれて書いてるわけじゃないんで、
作品を書いただけじゃ世に出ていかないんですから。
というわけで、また金集めをしないといけない………。(タメ息)
まあ、全然儲からないわけですけど、
結局、自分が書きたいものを書いてるんですから、
しょうがないんですけどね。







『特攻隊"KAMIKAZE"』の次は喜劇で
『巴里から来たお嬢さん』、そして最後は、
4部作で上演に16時間かかる『平家物語』。
生きてるうちに書けるかなあ。

当初は『特攻隊』を最後にと思ってたんだけど、
先に書いておかないと、
その前に僕が死んじゃうかもしれないんで(笑)。



残間 そんなことはないでしょ。
この溢れるパワーを持ってすれば。



三枝 いや、80過ぎてオペラ書いてる人なんていないですよ。
やっぱり体力を使うから、書けなくなるんだよね。



残間 それに加えてお金集めもしないといけないし。



三枝 たいへんですよ。
この不景気の中で企業から協賛金を集めるのは。
「うちの会社はリストラしてるのに、
こんなものに金出せるか!」って言われますからね。
ごもっともなんですけど。



残間 私も企業に協賛をお願いすることが多いんですけど、
最近、企業の経営者がだんだん自分より
年下になってきたでしょ。
この辺もやりづらくありません?



三枝 そうなんですよ。知り合いの経営者で、
自分より年上は数えるぐらいになりました。
でもね、幸か不幸か若い格好をしてるせいで、
向こうが勝手に僕の方が年下だと
誤解してくれるんですよ(笑)。



残間 (笑)そこはトクですね。
私なんか年上でさらに"女"ですから、
70過ぎたら集金能力ないかも。



三枝 だからもっと若づくりしないと。






(つづく)