■撮影:岡戸雅樹 ▼デザイン:柳澤篤





三田誠広さんのプロフィール
1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒。
1977年、「僕って何」で芥川賞。作品はほかに「いちご同盟」「空海」など。
日本文藝家協会副理事長。日本文藝著作権センター理事長。著作権情報センター理事。
日本点字図書館理事。著作権問題を考える創作者団体協議会議長。

[オフィシャルサイト]
http://www.asahi-net.or.jp/~dp9m-mt/index.htm




残間 三田さんは誰に向かって作品を書いてます?
どんな人に読まれることを想定しているんでしょう。



三田 私と同じ世代、団塊世代が中心ですね。
これからは仕事を終えた人たちが、本をたくさん
読むようになると思うんです。すると今まではそれほどでもなかった、
哲学的なものや宗教的な題材、あるいは教養として
読んでおくべき名作への需用が高まるでしょうね。

私の次作はドストエフスキーの『罪と罰』なんですが、
ただの翻訳ではありません。
あの作品は犯罪者の視点から書かれていますが、
それを彼を追いつめる判事の視点から書いてみました。
この判事のポルフィーリというのは、
刑事コロンボのモデルとも言われている登場人物で、
去り際に「すみません、もうひとつだけいいですか?」という、
相手を油断させておいて、鋭い質問を投げ掛けるあたりはそっくりですね。

視点の変化だけでなく、
『罪と罰』が発表されて以後の、評論の要素も盛り込んでいます。
それからあの作品を本当に理解するには、キリスト教の要素や
当時のロシアの状況を踏まえておくことが必要なんですが、
そういった点も登場人物の台詞として織り込んでみました。




残間

私みたいに体系的に本を読んでこなかった人間には、
とてもありがたい本ですね。



三田 ドストエフスキーの面白さのエッセンスが詰まっていると思いますよ。
ドストエフスキーについては、同じようなアプローチで、
『白痴』や『カラマーゾフの兄弟』も手掛けようと思っています。



残間 三田さんの本を読んでから、
あらためてドストエフスキー版を読み直すのも楽しそうですね。

三田さんは先ほど、団塊世代に向けて書いている、と言いましたが、
私がこのクラブを作ろうと思った理由のひとつには、同世代同士、
自分たちが親しんできた文化を支え合おうということもあります。
それで、文化を仲立ちに集うことができればと思ったんです。



三田 特に男性は、エコノミックアニマルだった人ほど
会社を出ると行くところがないですからね。
ネットだけでなく、人間には互いの顔を見て集えることが大事ですよ。



残間 ネットといえば、三田さんはパソコンとのつきあいは、
どんな感じなんですか?








三田

25年前にはワープロ専用機を使っていました。
これは結構、早い方だったと思います。
パソコンも、自分でプログラムを作らないと動かないという
代物だった頃から使ってました。

インターネットが出てきたのは、
子どもが大学生になったぐらいからです。
それまでのパソコンというのは、まったく役に立たなかったですね。
といってもインターネットも最初の頃は、つないでも見るものが
ありませんでした。しょうがないから、用もないのに
ホワイトハウスのホームページを覗いてみたり(笑)。



残間 かなり早い時期からなんですね。
でもそんな、まだ不完全な機械を、どうして使ってたんですか。



三田 やっておかないと取り残されると思ってました。
勘が働いたんです。これは「なしでは済まされないな」と。



残間 勘が当たりましたね。私はかつては
パソコンもネットも知らないまま死のうと思っていたんですが、
途中から「そうはいかないな」と思って、
気がつけば悪戦苦闘しながらですが毎日ブログを書いてます。
今となっては、もっと早くからやれば良かったという感じです。

(続く)