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新春特別インタビュー 栗原はるみさんのお宅に、遊びに行ってきました。
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第4回
ハンバーグが永遠です
残間 栗原さんが料理の仕事をするようになったのは、
30代半ばくらいからだと思いますが、
料理に対する考え方や思いというのは、変わってきましたか。

栗原 変わりましたね。
一時はもっと職業っぽく考えてた気がしますが、
今は、それは間違いだなって思ってます。
さっきのレシピを出すところは別なんですけど、
料理が仕事になっちゃいけないなって。
楽しくやらないとね。そういう余裕は出てきました。

残間 それって、ここ数年くらいのことですか。

栗原 10年くらい前からですかね。
というのは、
読者に新しいものを提供しなきゃいけないと思うんですけど、
やっぱり主婦の方がやり続けている、
彼女たちが好きな料理が喜ばれるんですよ。
だってハンバーグは永遠じゃない。

残間 はい確かに。

写真:栗原はるみ

栗原 だけどハンバーグを、
毎回デミソースや和風ソースでやってたら、
「誰でも知ってるよ」ってなっちゃう。

残間 (笑)そりゃそうです。

栗原 そこで、冷蔵庫に残っていたレンコンを入れてみたり、
ゴボウを入れると、ちょっと身体に良さそうだなとか、
歯触りがいいなって思ってもらえるじゃないですか。
ハンバーグの生地でレンコンを挟んだり。

そういうちょっとした発想ですよね。
それが甘いタレで食べるのが美味しいのか、
わさびが美味しいのかわかりませんけど、
さらに鴨に変えてみたり、エビも入れてみたり。

彼女たちがやっている道から、あんまり外れちゃうと、
ついてこれなくなっちゃう。
「これ、私の料理とはちょっと違うかも」と受け取られる。

写真:栗原はるみ 残間里江子

残間 料理家には、だんだん凝ってくる方っているんですよね。
どうやって作るのかなあ、というのがあったり。

栗原 それはシェフにお任せの分野ですね。
だから、そこの基準を、ちょっとはみ出るのはいいんだけど、
枠の中にはいないと。

残間 そこは自分でも葛藤があるんじゃないですか。
歌手でも、大ヒットがバーンと出ると嬉しいんだけど、
本人はもっと先に行きたくなるわけです。
ところがコンサートに集まったお客さんは、
大ヒット曲を聞きたいわけですよね。
でも歌手の方はもうそんなの歌いたくなくて、
複雑なリズムを取り入れたものなんかをやると、
スーッと水を引いたように、
人がいなくなってしまうことってあります。

マンネリとの闘いもありますし、
やっぱり少しずつ変えていきたいんだけど、
そこの変え方を間違うと、周りがついてこれないですよね。

さっき栗原さんが、職業っぽくなっちゃいけない、
楽しくなきゃって言ったのわかります。
ひとつのことをやり続けていると、つい求道的になって、
どんどん進化していきたくなっちゃうんですよね。

栗原 別に、無理に進化を押さえ込んでいるわけじゃないですし、
私の考え方がベストとも言いませんけどね。

ただ、冷蔵庫に残るものって、
誰でもだいたい同じじゃないですか。
だから、そこに原点を置いておけば大丈夫かなとは
思ってますけどね。

残間 栗原さんの料理の原理・原則は、家庭料理らしく、
「簡単」と「冷蔵庫の残り物」ですからね。

栗原 そう、残り物なんだけど、残り物のようには見せない工夫!
それは、楽しくやらないと。


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