残間 前から思ってるんですが、北村さんみたいな人、
日本の演劇界に他にいないんじゃないですか。
舞台のプロデュースと役者のマネジメント、
つまり空間と人を縦横無尽に仕切っているというのは。
特に女性はいませんよね。



北村 でも最近、小劇場の制作や
プロデューサーやろうというのは、女性ばっかりですよ。



残間 というより、女の人しかできないかもしれませんね。



北村 確かに、絶対とは言いませんが、
この仕事、女の人の方が向いてます。
まず第一に細やかな気の配り方ができなければ、
人がついてきませんから。



残間 舞台に出てる側の生理もわかってなくちゃいけないし。
北村さんは役者もやっていたから、その辺がわかるでしょ。
これは役者は傷つくなとか、
「傷ついてもさらにこれを踏み台にせよ」とか。



北村 (笑)わかりすぎて困っちゃうこともあります。
傷つくのがわかっていても言ったほうがいい時もあるでしょ。
でも、わからないよりは、わかった方がいいかもしれない。



残間 5〜6年前かな。北村さんのところに所属している
八嶋智人さんのインタビューを何かで読んだんですね。
そこで彼が、何が不安かと言えば、
いつ北村さんに切られるかが一番不安だって言ってたんですよ。
もう「トリビア」とかに出て顔が売れた後ですよ。
テレビに出て売れてることと、
役者としての評価は別だって思ってるんですね。
それで北村さんが、来年も事務所にいてもいいって
言ってくれるか、とても心配してたんですよ。



北村 (笑)うちは一年契約ですからね。
へえ、そんな事を言ってましたか。



残間 でも八嶋さんの考え方って、
自分の軸足がどこにあるのかがわかってて、
いいなって思ったのを覚えています。
だからその後、彼を舞台で見るたびに、
ああ、今年もやってるんだなって(笑)。
ずっと印象に残ってるんです。

やはり演劇が大好きだっていうことなんでしょうね。
緊張感があっていいいですよ。
高橋克実さんなんかも、そんな感じですよね。



北村 そうですね。うちの役者は、
みんな演劇ベースというのがありますから。



残間 最近はテレビが疲弊してるせいもあって
事情が違うのかもしれませんが、
以前は演劇の人もテレビで売れると、
テレビの方に行きたがる人いたでしょ?



北村 むしろそっちの方が多かったです。
それで演劇をやめちゃったり。




残間 今は逆のパターンが増えているんじゃないですか。



北村 そうですね。テレビで売れた人で、
演劇の世界に入りたいという人が増えています。
ただ、それは流行りという面もあって、
野田さんやって、蜷川さんやって、
それで松尾スズキさんやってケラさんやったら終わり、
それで"上がり"みたいなところもありますね(笑)。
ただ流行っているから出たいという感じで。

でも、それでもいいと思うんです。一回か二回やったら、
役者さんだから、芝居の面白さってわかるでしょ。
媒体としては何よりも面白いものですから。
彼らが人気商売で一回出たいと言って入ってきても、
きっと続いていくと思うんです。
だから、どんな理由であれ、
一回は舞台を踏んで欲しいなあって思いますよ。



残間 「ここはあんたなんかが来るところじゃない」って
いうわけではないんですね。



北村 ええ。どんなに心がけの悪い人も(笑)ウエルカム。



(つづく)