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残間 |
『成熟日本への進路』では、 波頭さんは日本がシフトすべき新しい主要産業として、 医療・介護産業を上げています。 特に介護は、これからますます需要が高まりますが、 働く人の低賃金がネックで、人もなかなか集まりませんし、 事業としてもあまりうまくいってないですよね。 波頭さんは景気対策なんかより、 ここに税金を集中投入すべきだと書いています。 本当にそれで変わりますかね。 |
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波頭 |
まとまった公費を投入すれば、 あっと言う間に変わると思います。 今、介護士の方はフルで働いて月に15〜18万円くらい。 これを税金で補助して倍にすれば、 間違いなく人は集まるし、質も上がります。 そんなお金がと思うかもしれませんが、 工事現場で交通整理で旗を振っている方いらっしゃいますね。 公共工事だと、あの人の日当として 一日2万5千円以上払っています。 一方で介護の人の標準賃金は一日9千円くらい。 公費の補填で倍の金額にするのは無理どころか、 むしろ公正なことだと思います。 ところが厚労省は、全く逆の方向に行ってますよね。 お金をカットして、介護を家庭内でやらせようとしている。 |
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残間 |
それから本を読んでて不安に思ったのが、 「所得の分配」というのが、 今のエゴイスティックに見える日本人に理解されるかどうか。 波頭さんは富裕層に対しては金融資産も含めた、 資産への大幅課税を提案しいてますよね。 でも本で紹介していましたが、 「自力で生きていけない人達を国や政府が助けるべきだ」という 考え方に対して、「そうは思わない」と答えた人の割合が、 日本は38%もいます。あのアメリカですら28%。 先進国ではイギリス8%、フランス8%、ドイツ7%。 中国でも9%に過ぎなくて、 日本は世界でもっとも弱者に厳しい国だというデータです。 この本で掲げている 「国民の誰もが医・食・住を保証される国作り」には、 お金に余裕がある人達が、そうではない人を 支えましょうという精神が欠かせないですよね。 |
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波頭 |
僕はていねいに語りかければ大丈夫だと思っています。 日本人だってみんな自分の医・食・住の心配がなければ、 弱者を助けてあげようという気持ちになれると信じています。 |
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残間 |
"分配"という考えは、私たちの世代は 受け容れる気がするんです。 誰かのためになりたいと思っている人って結構いるし、 根が平等主義ですから。 久しぶりに昔の仲間と会って、飲みに行くとしますね。 それで何を飲もうかという時、何となく自然に、 その場で一番お金を持ってなさそうな人間に合わせるんですね。 「じゃあ、今日は久しぶりに懐かしいホワイトでも飲もうか」って。 「いいよ、俺が驕るから『響』飲もうよ」という人間も たまにいるんですが、そういうのは次から誘われなくなります。 |
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波頭 |
(笑)それは大人の集団ですね。 |
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残間 |
出世して社長になった人間と、 ずっと平のままだった人間とが、 屈託なく一緒に酒が飲めるんですね。 どちらも偉ぶるわけでなく、卑屈になるわけでもなく。 まあ、ラブ&ピースの甘い世代だからかもしれませんが。 だから民主党政権にも期待したんですよ。 最近の民主党には、ちょっと違和感を 感じていると思いますが。 |
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波頭 |
僕ぐらいから上の世代(波頭さんは現在52歳)は、 そうだねって言ってくれる人は少なくないんです。 ただ若い人が嫌がりますよね。 介護が大変、高齢化が大変って言われてるから、 自分たちに稼がせて上の世代に手厚くするのはやだ、 という感じで。 でも、日本の一人当たりGDPは年3.8万ドルですが、 1万ドルちょっともあれば人は十分食べていけるんです。 道路工事の人の日当を介護の人に 半分あげればいいということです。 |
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残間 |
これからの日本を考えると、 私もこの先どうなるかわからないな、 と思うことはあります。 そういう不安がなくなるって、 実はすごく大きなことですよね。 日本ではうつ病になる人が増えてますし、 毎年3万人を超える人が自殺しています。 未遂者はその10倍はいるといわれてますから、 日本という国は毎年30万人以上もの人が 本気で自殺を考えている国なんですよね。 自殺の原因は孤立とかいろいろあるんですが、 その背後にはこうした不安も影響してると思います。 |
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波頭 |
日本の人口10万人あたりの自殺者数というのは、 先進国の中でも飛び抜けていますよね。 (※'09年で24.4人) やはり、みんな茫漠たる不安を抱えながら 生きてるんだと思います。 すべての国民に<医・食・住>を保証することで、 人間らしいつながりや他人を思いやる余裕も 持てるようになると思います。 そうなれば、自殺する人も減るはずです。 |
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残間 |
成熟時代に見合った税負担と、それに応える社会福祉、 そして所得の分配。これは緊急の問題だと思うんです。 我々の世代だって、もう5〜6年も経てば、 他人のことなど言っていられなくなるかもしれません。 その前に道筋だけでもつけられるといいですね。 |
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(終わり/2010年9月) |
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