残間
現在のところ、巴馬プロジェクトはどこまで進んでいるんですか。



最初の話に出てきた大富豪の陳総裁ですが、
彼には彼なりの夢があるようでね。
なかなか実現は難しそうなんですが、
鍾乳洞や洞窟と一体となったホテルなどを考案中です。



残間 小黒さんのプロジェクトって、
いつも雲をつかむようなところからスタートして、
いつの間にかそれが形になっているようなことが
多い気がするんですが。



小黒 (笑)。構想としては、2012年12月12日に
そのホテルのオープンだったんですが、
もう間に合いませんね(笑)。



中国の人に対しては、
「できない」と言ったらダメなんですよ。
とりあえず「できるかもしれない」と言っておけば、
後からある程度、融通が利くんです。





残間 それが世界と戦うということですか(笑)。



小黒 現在、中国では、いわゆる
ロハス的な生き方を求める人が増えつつあります。
そんな中、陳総裁は巴馬を中国の理想郷にしたいという
思いを持っているようです。
今後、「自然」と「長寿」を柱にした
「巴馬理想郷」に向けて
プロジェクトが進んでいくと思います。





残間 巴馬の人達に「死についてどう思うか。」
という質問をしたら、「考えたことがない」
という回答が多かったそうです。
先のことは考えず、孫の幸せ、次の次の世代の幸せを
考えていると。そこには、私たちのこれからの
生き方のヒントが潜んでいるような気がするんですが。



小黒 僕はアフリカのマサイが好きで、
何度も行っているんだけど、マサイにはお墓がないんです。
酋長が亡くなった時だけ、部落の真ん中にある
塔に祀られる。巴馬でも同じように、お墓がない。
そういう民族の死生観って、
一体どういうものなんだろうと不思議に思いますよね。







そんな事を考えながら日本民族の今後を考え出したら、
「懐かしい未来」って言葉が気になり始めたんです。
昔の日本は、自然と共生し、五感で命を感じるような
暮らしをしていましたよね。
現代の我々の生活は、便利なものに囲まれ、
何不自由のない生活をしている。
しかし、人々は充足感を得られず、
むしろ空虚感を感じてしまっている。
日本人の歴史を50Mプールに例えるなら、
今、我々はちょうど25Mを
折り返したところではないかと思います。
「懐かしい未来」というのは、単に昔に戻るのではなく、
未来的な要素を取り入れながら、
過去を捉えていこうとすることです。
そういう意味で、僕達は今、巴馬のある種の
懐かしさを感じることができる場所に
気持ちが向いているんじゃないでしょうか。



残間 巴馬には人間の暮らしの本質があって、
それこそが、人々が希求する幸せの
形なのかもしれませんね。
小黒さんは、4月に全く新しい三世代マガジン『孫の力』という
雑誌を季刊で出されるということですが、
この雑誌は、従来の家族形態がなくなりつつある今、
親子間でストレートにコミュニケーションを取りあうよりも、
親子の間に一つ隔たりがあった方が想いは
伝わりやすいんじゃないか、
ということに着目されたんですよね。


小黒 巴馬で気づいたんだけど、孫をみると
「懐かしい未来」があるんです。
子供はもういいや(笑)。次は孫だよ。
孫を通して未来をみるということが、
老後に楽しい人生を送る秘訣じゃないかって思います。









残間
最後にお聞きしたいのですが、
小黒さんは何歳まで生きたいと思っていますか。


小黒 小学生の頃は、毎晩寝るのが怖かった。
起きたら死んでいるんじゃないかとか思って(笑)。
まぁ、僕自身これまで決してキレイな生活を
送ってきたわけじゃないから、
長生きできるとは思ってないけど。
それはそれでいいかなと(笑)。



残間
福岡さんはいかがですか。



福岡 私の場合は、あと何冊本が書けるかな、
と考えていますので。
もう少し書きたいから、あと10年くらいは・・・。





小黒 僕は福岡さんに小説を書いてほしいと
思っているんですよ。



残間 「生物と無生物のあいだ」(2007年刊)の あとがきに書かれている、少年時代に自然と遊ぶ描写などは、 まるで小説のようですよね。
難しいことを書いていても、どこか叙情的で美しくて。
編集者としては、フィクションも書いてほしいと
思う気持ちはわかるような気がします。



小黒 文化系の人達と違って、福岡さんは生物学者として、
我々が普段目にすることができないものを
たくさん見ていると思うんです。
そこから生み出される物語、人間がどういうものなのかを
見てみたいんですよね。



福岡 無理です(笑)。



小黒 残間さんは。



残間 昔は90歳くらいまで生きたいと思っていましたけれど。
母は現在95歳なんですが、見ていると
そこまでは難しいかなと思います。
ゾロ目が好きだから、77歳とかいいかもしれません。



小黒 いくつになっても、皆が「幸せ」と思える
国にしていきたいですね。
巴馬のように、若者が老人を大切にして、
尊敬する家庭環境があれば、歳をとることも
悪くないと思えるかもしれません。
日本は世界に誇る長寿国ですが、
巴馬から学ぶべきところはたくさんあると思いますよ。





(2011年2月)