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大学院での研究テーマは、政党における“女性性“

残間
安藤さんはニュースキャスターとして活躍する一方、
学究の徒として、上智大学の大学院で
政治学の研究をなさっています。
授業は全部英語だそうですね。
 
安藤
ええ。2005年から修士課程を3年やりまして、
今は博士課程で来年の9月に満期終了になります。
普通はそれまでに博士論文を書き上げるんですが、
間に合いませんので(笑)、そこから一年以内、
つまり今から2年以内に論文を書いて、
博士号をいただいて、大学院はひとまず終わりにしようかと。
 
残間
一番忙しい時に大学院に行き始めましたよね。
あの頃に話をした時、海外のメディアで
働いてみたいとおっしゃってましたね。
 
安藤
そうでしたね。
私、最初はハーバードのJFKに行きたかったんですよ。
試験も受かってたんです。
それで2年ほどお休みしたいとフジテレビに言ったら、
「行くのなら、俺を殺してから行け。いったい何を考えてる!」
という方がいらして(笑)、当たり前かもしれませんが
猛反対されまして、すごいしょげました。
 
 
※JFK=ハーバード・ジョン・F・ケネディ・スクール。
 ハーバード大学の行政大学院。
 アメリカ政府高官の有力な人材供給源として知られる。
 
 
なぜJFKに行きたかったかというと、
英語のネイティヴではありませんが、アメリカのメディアの
オーディションを受けてみたかったんですね。
JFKを足がかりにして、チャレンジしてみたかったんです。

一時は何もかも放り投げて、行ってやろうかとも思いましたが、
結局、日本に残ることを私は選んだわけです。
で、日本でやれることとして、
上智の大学院に行くことにしました。
 
残間
仕事と並行ですから、大変だったみたいですね。
 
安藤
最初は後悔しました。
なんでこんなこと始めたんだろうって。
私、どうかしてたんだと思いましたね。
 
残間
(笑)
 
安藤
さっき言った外国人とのディスカッションもそうですが、
全然ついていけないわけです。
みんな機関銃のようにしゃべりますし、
出される課題というのが半端じゃないんですよ。
一週間で300ページくらい本を読んでこないといけないんです。
もちろん英語です。それを読んだ上でディスカスするんですが、
読んでない人間というのは一目瞭然なわけですよ。
言ってることがおかしいし。
しかも私なんてしゃべる機会を失って終わったりすると、
ますます読んで来たのか怪しい‥‥ということになっちゃう。
当然、ディスカッションが終わった後にはペーパーが出まして、
そのことについて十何ページ英語で書けと。
もう、涙がでましたよ。
 
残間
寝る時間がないくらに勉強してましたよね。
 
安藤
修士論文の時が一番辛かったです。
リサーチと執筆に一年かけたんですけど、
あの時のことはあまり思い出したくないです。
壁一面にベタベタと資料を張り出して、
延々とキーボードを打ってました。
 
残間
でも、それを乗り越えたんですから。
論文のテーマはなんだったんですか?
 
安藤
「小泉政権」です。大統領型と言われた小泉官邸が、
なぜ政治主導をなし得たのか。
これをしゃべり始めると8時間くらいかかるので言いませんが。
 
残間
取材もして。
 
安藤
キャスターという地の利を使ってね(笑)。
飯島秘書官とか総理の周りを固めていた人みんなに
インタビューして、イギリス内閣府とのあり方の比較をし、
何故政治主導をなし得たかを
小泉首相の言葉を入れつつ論文を書きました。
辛いと言いましたが、燃えましたし、面白かったですね。
 
残間
それは読みたいですね。
 
安藤
英語の論文なんですけど、日本語の要約もあるんですよ。
本にしようと思ったんですが、
出版社に持っていって怒られました。
こんなわけのわからないもの持ってくるなと。
 
残間
えー!? 私は読みたいですけど
 
安藤
今度お見せしますよ。でも、やっぱり論文なんです。
注だらけだし、論文調なので書き直さないと。
書き直すのなら、と言ってくれた出版社もありましたが、
そんな暇はないのでそのままになってます。
 
残間
是非、書き直して出して欲しいですね。
そういう領域の本を書くあたりから、
新しい展開が出てくるんじゃないですか?
もうひとつの安藤さんの軸として。
 
安藤
そうですね。
今書こうと思ってる博士論文は
「政治政党が求める女性性」というものです。
面白いでしょ?
 
残間
確かに。
 
安藤
つまり、名前を出すのは憚られますが、
例えばある時代からの自民党の女性議員。
あの人たちの存在意義は何だったかという疑問ですね。
自民党に限らず、公明、民主、みんなそうですけど。
 
残間
みんな火中の栗を拾うための係ですよ。
 
安藤
あー‥‥‥。
 
残間
見てると、火中の栗は男は拾わないですね。
女に拾わせてます。
 
安藤
なるほど。
 
残間
しかも拾った栗を、新たに女が調理したようにも見えた。
 
安藤
うーん‥‥‥。
そして一方で市川房枝さんや
土井たか子さんのような存在があったんですが、
いったい日本の政党というのは、女性に何を求めてきたのか。
そこを突き詰めていくと、
日本の政党の特性が露わになるんじゃないかと‥‥
 
残間
面白いですね。
それは政党がどういう女性を求めたかと同時に、
どういう女性が求めに応じたのかも重要です。
 
安藤
その通り!
 
残間
まあ、一般の女性との隔絶感といいますか(笑)、
みんな、同じタイプになっていくでしょ、
政党を超えて。どうしてなのかしら?
ファッションも独特な世界があるし。
 
安藤
(笑)
 
残間
それにしても、
女性議員に着目するというのは面白いですね。
数が少ないとかいう問題じゃなくて、
質というか、何をしたくて議員になったのか、
どうして同じイメージになるんだろうとか。
 
安藤
そう、何をしたくて
政治の世界に入ったのかがわからないんですよ。
もちろんリクルートした側にも、
なぜ彼女たちを選んだのか取材したいと思います。
みんな引退が近いからベラベラしゃべってくれるでしょう(笑)。
 
残間
やっぱり自分たちが、
ああいうタイプが好きなんでしょうね。
 
安藤
そういう調査をやってみて論文を書いてみようと思います。
そこから日本の政党が何を考えているのか、
わかると思うんです。
 
残間
先進国とか言われてますが、
そこは旧態依然としてますから。
 
安藤
もう周回半ぐらい遅れてます。
 
残間
志のあった市川房枝さんたちは、
ある種の広がりがあったけど、それ以後の人は、
やっぱり人寄せに使われているのを
良しとしている感が拭えないですね。
というより、「人寄せ」の自覚すらないかもしれませんが。
安藤さんの研究テーマは面白いというより、
いま掘り下げるべきものですね。
 
安藤
海外の女性議員のキャリアパスを見てみると、
例えば『アメリカの女性議員の誕生』という
本があるんですが、スローターさんという
女性下院議員のキャリアを追ったものです。

とにかく彼女は叩き上げなんです。
最初は普通の主婦だったんですが、
公衆衛生の専門知識を生かして環境問題のリーダーになり、
それがきっかけで民主党の下院議員になるんですけれど、
本当にひとつひとつ積み上げてきて、
自分はこれがやりたいというのが一貫してるんですね。
ずっと環境問題をやってきたんですが、
気がついたら主婦から下院議員になっていた。

ところが日本の場合、それを全部スルーして、
いきなり国会議員になるわけですよ。
例えばプロレスラーがいきなり国会議員になる。
 
残間
そこを一足飛びにさせる図式を男が作ってきましたね。
 
安藤
何とかチルドレンとか。
その辺が政治の劣化につながってますよね。
ぶっちゃけて言えば、
「あの人が政治家になっていいの?」という、
政治に対するある種の見下げた気分を
作り出している根幹にあるのはこれですよ。
 
残間
そういう意見は、
アカデミズムから発するのがいいんでしょうねえ。
 
安藤
ええ。場合によっては、
ただの批判と取られかねないですから。
 
残間
たいへん興味深いテーマなので、
今度の論文も頑張ってください。
 
(つづく)