残間
還暦になるということについては?



大石
何の感慨もないですね。
リスタートもリセットもする気はないし、
何かを変えようとも思わないし、
ましてやパーティなんて、する人の気持ちはわかりません。


坂村 僕もそうです。パーテイ自体は嫌いではないんですが。
20年前くらいだと、だいぶ違ったんでしょうけどね。
60歳でみんな定年になって会社辞めたから。
会社勤めをしていない人間も、
周りがそうなれば影響されますし。



残間 でも60年生きてると、ひどい目にも遭ってるでしょ。
それこそ坂村さんは技術者ですから、
進歩と制度のあいだで、悔しい思いもあったでしょうし。
還暦を機にその辺りの整理は?



坂村 ひどい目って、確かにそうだったかもしれないけど、
大石さんだって、残間さんだって、
みんなひどい目には遭ってるでしょ?
それに、周りが言うほど本人はそうでもないんですよ。
先の事をやろうと意欲を燃やしてると、
忘れちゃいますし、どんどん薄れていきます。






大石

それは本当にそうですね。時間が過ぎていくと。



坂村 いつか殴ってやろうと思ってた奴も、
だんだんどうでも良くなってきて、
そのうちに相手の名前も顔も忘れていく。
それぐらい、今やっていることが面白いしね。



残間 先に進む意志が、いろんなものを洗い流すと。

大石さんは、もう2011年の仕事は
だいぶ決まっているんですか?
たぶん『セカンドバージン』と似たようなのを
やってくれって言われてるんでしょ。



大石 ええ、どこからも"濡れ濡れのラブストーリー"をって
言われます(笑)。
でもそればっかりに興味があるわけでもないし、
『セカンドバージン』で、
あの手のは出し尽くした気がしています。



残間 いやいや、まだまだあるでしょう。
大人の恋愛ストーリー。



大石 少なくとも、"女が年上"というのは
出し尽くしましたね。
それにドラマって、別に歳のいった人を
主人公にしなくても、30代でも高校生が主人公でも、
大人がしみじみできるものは作れるので。
『セカバー』と同じものを求められてもねえ。





残間

還暦でも何も変わらないと言いましたが、
では、ドラマづくりの現場に何か変化はありますか? 
大石さんが歳を重ねる一方で、一緒に仕事をする相手は、
どんどん年下が増えてると思いますが。



大石 坂村さんが大学で感じておられるのと同じで、
スタッフは常に若いです。
プロデューサーは30代後半ぐらいが多くて、
歳を取ってくると偉くなって卒業していきます。
それで、現場の使いっ走りの子は20代。



残間 でも、坂村さんは相手に教える立場だけど、
大石さんは発注されるというか、



大石 (笑)使っていただく立場です。



残間 発注してくる人間がどんどん変わっていくわけですよね。
ドラマづくりの現場にずっと居続けていて、
発注側の変化を何か感じますか?



大石 粘りはなくなってると感じますね。



残間 あんまり人間ドラマみたいなものに関心がないとか?



大石 いえ、映画やドラマを作りたいんですから、
人間ドラマに関心がないわけじゃないんです。
だけど、ゼロからオリジナルを発想する力は、
あまりない人が多いですね。

本屋で原作を見つけてくるセンスはあるけれど、
ゼロからあなたはプロデューサーとして何をやりたいですか?
と訊ねると、何をやっていいかわからない。
原作を出してきて、これをやりたいです、
これもやってみたいです、というのはあるんだけど、
あなた自身のテーマは? というと、
何もない人が多いです。
それで私がこんなのどう? って言うと、
乗ってきたり、乗ってこなかったり。

昔はプロデューサーというと、こういうのをやりたい、
ああいうのをやりたいというのが、
溢れるようにあったんですけどね。



残間 確かに、先ずは自分がこういうものを表現したいという、
意志がありましたよね。



大石 現場の若い子たちも微妙に踏ん張りがきかなく
なりつつあるかも知れません。
ドラマのADとか、最近はつらくなるとすぐ辞めちゃいますから。

現場で倒れていても、
「お前、邪魔だから、ここで倒れるんじゃない」って
言われるような、厳しい世界ですけど、
ちょっと前までは、みんな死ぬほど頑張ってました。
身体を壊して辞めていく人も多いんだけど、
そこを勝ち抜いた人だけがディレクターとかになっていくんです。
その厳しさを私は素敵だと思ってたんですけど。