残間
では、今度は大石さんに2010年を
振り返ってもらいましょうか。
2010年はとても素晴しい年だったんじゃないでしょうか。



大石
外側から見るとそうらしいですね。
私的には、厳しかったですけど。


残間 『セカンドバージン』は小説版も、
昨日見たら文庫ランキングの4位に入ってましたね。
あのドラマはいつから準備してたんですか。



大石 2009年の秋ごろに、NHKから大人の鑑賞に堪えうる
ラブストーリーを作ってくれ。
例えばトリフォーみたいなものをって言われたんです。
映画とテレビは違いますが
男と女の深淵に迫れと言われているのだと解釈し、
あの企画になりました。



残間 みんなに言われたでしょ?
あの内容でよくNHKを通りましたねって。



大石 すんなりと通りましたよ。
NHKにしては珍しいと皆さんおっしゃいますが、
別にNHKは踏ん張ったわけではなく、普通にスルッと。



残間 でも、ああいうセリフがNHKの画面から出るのって、
そうはなかったじゃないですか。



大石 そうなんですけど、
結局みんな自主規制していただけで、
大丈夫なんだ、と思いましたね。



坂村 (笑)



大石 私は2011年で60歳でしょ。
だから、長く生きてきた者が素敵に見えないと、
年を重ねることが淋しくなるじゃないですか。



坂村 確かにそうだ。



大石 主人公の年齢は、本当は55くらいで
やりたかったんですけど、その歳で
ヒロインに相応しいような女優がいないんですよ。
主役をやった鈴木京香さんは実際は42ですけど
45歳の設定にしました。
それで相手役の20代の男性が、
若い女の子よりも長く生きてきた45歳の女性が素敵だ、
と思えるドラマをやりたいと思ったのです。






残間

大人が対象というのは、
NHK側の要求だったんですよね。




大石 ええ、あの時間帯は新しいドラマ枠だったので、
大人の客を定着させてくれ、ということでした。
だけど、大河をやった時も朝ドラをやった時もそうでしたが、
面白いものは子供も大人も面白いと思うので、
私自身は視聴者の年代を意識することはありません。
とにかく面白いものを作ればいいのねと、
お引き受けしたわけです。

私はずっとドラマの脚本を書きながら生きて来たわけですが、
55歳ぐらいまでは30代と気分も変わらず、
仕事も忙しくてイケイケな気分だったんです。
ところが55くらいから体力も集中力も落ちるし、
老いるって悲しいなあって、初めて感じました。

私は10代より20代、20代より30代。
30代より40代がいいと思って生きて来たのに、
ガクッと来てしまって。
もしあの作品に力があり、セリフにも迫力があったとすれば、
ラブストーリーとしての展開だけではなく、
その中に私にとって切実な、
老いる悲しさがあったからではないでしょうか。



残間 それは大病したからではなくて、
55歳くらいの時に自然に感じたの?



大石 急にね。体力がないとか、
すぐ仕事も飽きちゃうとか。
前だったら10時間でも15時間でも、
それこそ3日も寝ないでも頭は回っていたんですが、
そういうことはもう出来なくなりました。



残間 坂村さんは年齢を感じる事あります?



坂村 強く年齢感じる人って、若い時とずっと同じことを
やろうとするからじゃないですか。
体力は永久に同じではありません!
僕なんか大学だから、いつも若い人と一緒にいますよね。
僕だけが年をとっていって、学生は常に入れ替わっているから
若いというかずっと同じ歳で。
でも、彼らみたいにはいつまでも出来ないですよ。






それは40代後半から少しずつ感じてて、
昔は徹夜しても次の日ちょっと仮眠すれば平気でしたけど、
いま徹夜なんかしたら、一週間寝込んじゃいます。
食べる量も20代と同じだけ食べてたら、
体調悪くなるに決まってますし。



残間 そうか、いつも若い人のそばにいるから、
かえって解るのね。



坂村 そうそう。だから早い段階から気づいたんですよ。



残間 学生はいつも若いですからね。
自分の子供は同時に歳をとっていくから、
そこからはあんまり感じないんですよ。



坂村 悔しいけど、若い奴とは違うものは違うんです。



大石 確かに違うんだけど、私の仕事の場合は、
ある程度の歳になったらリタイアし、
年金も入るというのとは違うので、
死ぬまでこのスタイルなわけです。
まあ、どこでペースを落とすかは
私の意志なんですけどね。



坂村 「ペースを落とす」と考えるからダメなんじゃない?
落とすんじゃなくて、「ペースを変える」。



大石 だけどクライアントは30代の私に求めたものと、
同じものを今の私に求めてると思います。
それについて行こうと思うと老いを感じる。



残間 でも、大石さんが積み重ねてきた経験は、
評価されていると思いますよ。



坂村 クオリテイが同じという事ですか? 要求が?
でもそうだとしたら
若い時と同じものを要求されているということは、
成長してないってことじゃない。



大石 はあ〜、そう言われてしまうと身も蓋もないですが(笑)
私はずっと大河もやる、朝ドラもやる、恋愛物もやる、
時代劇もやると、フットワークの良さが売りだったんですけど、
確かにここ3〜4年は、『セカンドバージン』もそうだし、
その前の『ギネ』もそうなんですが、
クォリティの高い個性的なものを求められてるなあ、
とは感じますね。
『セカンドバージン』のように、
ひとつのテレビドラマが、DVDになったり、
もしかしたら映画にもなったりして、
長い命を持つようになるように、
私もシフトチェンジして行ければいいんですが、
それってクライアントが私をどう使うかですから、
簡単ではないですけど。



坂村 なかなかいい感じの
60前になってきたんじゃないですか(笑)。



大石 ただ、私自身が、まだ体力勝負でやってきた自分を
吹っ切れないんです。



残間 そういう部分は若い脚本家に求められてるんですよ。
突っ走るような作品は。
大石さんには、もうそういうものを
求めていない気がしますし、それは大石さん自身が
そう仕向けてきたところもあるでしょう?





大石

寂しいですね。私って、生き急いでる奴が好きなんですよ!
他の人の生き方見てても。



坂村 (笑)危ないなあ。



大石 だから本当は、私もそう生きたいの。
生き急ぎたいんです。



残間 もう、ほとんど生き急いでいるじゃない。



大石 残間さんも生き急いでいるように見えますけどね、私からは。
ペースをコントロールできる生き方よりも、
美しいなあと思うのは、生き急いで倒れる奴です、断然!



坂村 (笑)



大石 だから私自身、そういう風に
セルフプロデュースをしてるような気もします。



残間 そういえば私もそうだわ。比喩的に言うんだけど、
ずっと寝込んでいるみたいなのは嫌だな。
生きてるんだか死んでるんだか、わからないようなのは。



大石 坂村さんのおっしゃる事はよくわかるんですけれども、
私の中で、すごくせめぎ合いがあるんです。
走り続けてバッタリ逝きたいという自分と、
そうは言ってもそんな風には行かないよという客観的な自分。
私が今、不安定な気持ちになるのは、
そのあたりなのかなあと思います。