1/26(火)トマト鍋。

icon_zamma.jpg1月26日(火)24時53分

今日のランチはトマト鍋だった。
最近流行っているらしいが、
私は初めての経験だった。

ご馳走してくれたのは、
このトマトを製造販売している、
朝日工業の赤松社長だったのだが、
単にご馳走してくれたのではなく、
自らの手でトマト鍋を作ってくれたのであった。

「面白い男がいるから会ってみない?」と、
言ってきたのは「面白人紹介魔」のモリベ氏なのだが、
「そいつの会社、鉄が本業だったんだけど、
今はトマトも作っているんで、
うまいトマト鍋を食わせるよ」と、言っていたのに、
待ち合わせ場所が、
溜池の蕎麦処「さ和長」だったので、
「予定が変更になったのだろう」と、
思っていたのである。

しかし、出かける直前になって、
「まてよ、あのモリベ氏のことだから、
トマトが突然、蕎麦に変わるわけはない。
何かあるのではないか.........」との思いが頭をもたげ、
急ぎネットで調べてみたら、
「さ和長」のメニューの中に「トマト鍋」があったのである。

何故、本格的なお蕎麦屋さんにトマト鍋があるのか。
「モリベ氏に詳しく聞いておくのだった」と反省しつつ、
お店に入って行くと、
胸にトマトのイラストが入った、
真っ赤なトレーナーを着た、
ニコニコ顔の赤松氏が待っていた。

「僕が無理に頼み込んで、
トマト鍋をメニューに加えて貰ったんですよ。
普通は夜メニューなんですけど、
今日は特別に用意して貰いました」と言うや、
「汁が飛ぶかも知れませんので、これを着て下さい」と、
園芸用エプロンをさし出すのであった。

「これも自社製品です。
園芸は両手が空いてないと出来ないでしょ。
そこで、カンガルーの袋からヒントを得て、
前に野菜や植木を容れる、
3段切替の簡易ポケットを付けたんですよ」

赤松氏は実に手際よく鍋にオリーブ油を入れ、
そこに湯通ししたどんぶり一杯のミニトマトを入れて、
丁寧にほぐしながら鷹の爪を入れて煮ていくのだが、
最初は浅利、次が牡蛎と帆立、最後が豚バラ肉という具合に、
3種類のトマト鍋を作ってくれたのだった。
仕上げは「さ和長」自慢のキリッとしたざる蕎麦だったのだが、
これも普通のタレの他に、
さっきのトマト鍋の残りを煮詰めて作ったタレもありで、
最後の最後までトマト尽しなのであった。

「残間さんのお腹の中には、
多分30個分のトマトが入っていますよ」
というくらい沢山いただいたのだが、
少しももたれず、
爽やかな満腹感だった。

赤松氏は1948年生まれの団塊世代。
岸和田出身で、5歳の頃から「だんじり」に参加し、
今でも毎年9月の「だんじり祭」に出るために、
身体づくりを欠かさないのだという。

「朝のひげ剃りも片足立ちをして、モモの筋肉を鍛えています。
会社は49階にあるんですが、
毎日49階から1階まで6分で駆け降りてるんですよ。
ええ、今日もやって来ましたよ。
山手線の内側は歩くことにしていますし、
だんじりの直前は1か月に200キロは歩きますから、
年間平均すると、1500キロは歩いていますね」
150センチも歩きたくない私からすると、
超人的である。

氏の会社は、
モリべ氏の言う通り、
鉄鋼、肥料・種子・園芸用品、環境コンサルタント、
そしてトマトと、多岐に渡った業務内容なのだが、
完全な能力主義で、昨年暮れには18歳で会社に入って、
真面目に働いてきた開発セクションの社員に、
ボーナスだけで900万円を払い、
テレビでも取り上げられたのだという。

「僕も赤松も旧興銀出身ですけど、
昔の日本興業銀行には、
赤松みたいな面白い男が結構いたんですよ。
今はみんなおとなしくなっちゃって、
つまんない世の中ですよねぇ」
と、モリベ氏が言うように、
政界にも財界にも「世直し」を標榜する、
暴れん坊はいなくなっているような気がする。

会社に戻り、
お土産にいただいたトマトをスタッフに配り終えて、
メールチェックをしたら、
さっきまでの明るく楽しいトマト気分が、
一瞬にして消滅するようなメールが届いていた。

昨日、膵臓癌の疑いの友人が何でもなかったと、
「喜び」を伝えたばかりなのに、
この時受け取ったメールには、
別の友人から「肝臓癌になった」との報が入っていた。

2人に1人が癌になるという今、
癌はもはや不治の病ではなく、
ある日突然完治したという例も数多く聞かれる。
だからあまり悲観してはいけないのだが、
せっかく2人で新しい仕事をしょうと、
張り切っていただけに、
残念でならなかった。

しかし、彼は類い稀なる幸運の持ち主だから、
きっと元気になるに決まっている。
明後日から入院をするということだが、
退院したら、トマト鍋を食べに行こうと思う。

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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。