12/18(金)旅立つ人たち。

icon_zamma.jpg12月18日(金)25時03分

今週は水曜日に、
厚労省のメンタルヘルスポータルサイト、
「こころの耳」プロジェクトで、
ご一緒していた京都文教大教授の島悟さんが亡くなって、
ショックを受けていたところに、
今朝、元NHKの理事の伊東律子さんの訃報に接し、
二重の衝撃だった。

島先生は享年58。
慶大医学部出身の精神科医で、
研究分野が勤労者のメンタルヘルスだったことから、
「こころの耳」の委員に任命されていたのだが、
委員会の席で初めてお会いした時、
臨床医学に根ざした自説も素晴らしいものだったが、
誰をも受け入れる穏やかな風情と説得力ある話っぷりに、
すっかり魅了され、いつか改めてメンテルヘルスに対する、
氏の考えを伺いたいと思っていたのである。
どこか飄々とした感じが、
少なくとも私よりは年長だと思っていたら、
訃報を告げる新聞記事で1歳年下と知り、
なおさら先生の死がいたましく感じた。

大学教授以外にも、
神田東クリニックの院長も兼務していたので、
病院に2度ほど電話をかけてもみたのだが、
電話にでた受付の女性に、
「先生はとてもお忙しくて、
最近はこの病院にはめったに見えないのです」と言われ、
来年もう一度委員会が開かれることだしと、
いつかどこかでお目にかかれる「幸運」を信じて、
そのままにしていたのである。

今にして思えば、クリニックの女性は、
先生の病気のことを知っていたのだろうと思い至るが、
鬱病や自殺者が増加する一方のこの国においては、
氏の存在はますます必要とされていることを考えると、
返す返すも惜しい人を亡くしたと思う。

伊東律子さんは享年66。
解説委員、福島放送局長、番組制作局長等を経て、
NHK初の女性理事という輝かしい経歴の持ち主で
ワ−キンブウーマンの先輩として尊敬していた方だ。
国の委員会などで何度かお会いするうちに、
ご主人である建築家の伊東豊雄さんとも知り合いだったことから、
親しく会話を交わすようになり、
随分前に癌になったことも知っていた。

当初、お休みもしていたが、
ここ数年は仕事に復帰していたと聞いてもいたし、
今年に入ってからだと思うが、
ホテル・オークラのロビーでバッタリお会いして、
お元気そうにしていらしたので、
今日の訃報は驚きでしかなかった。

今は亡き森瑤子さんとも親しくて、
今から20年以上も前に森さんが、
この先の理想の女性像を「ハンサムウーマン」
(coolでsmartな女性)と称した時、
NHKでこのハンサムウーマンをテーマに、
女性の新しい生き方を探る番組を作ったのも伊東さんだった。

病気になってからは、
手紙を差し上げるとお返事を下さるという関係が、
続いていたのだが、
ある時、私の母のことを聞いて、
「お母さまとご一緒に如何ですか?」と、
歌舞伎座のチケットを送って下さり、
母がお礼状を出したことをきっかけに、
以来、母とまで文通をして下さるような方だった。
(母ががっかりすると思うので、まだ母には訃報を伝えていない。
明日、夕食を一緒に出来ると思うので、その時伝えようと思う)

先頃、ホテル・オークラのロビーでお会いした時、
「病気をして、いろんなことを識ったわ。
辛い闘病ではあったけど、
このことで随分成長したような気もしているの。
今度ゆっくり話すわね。
ところで、お母さま、お元気?」と、明るく語っていたのに、
「今度」は訪れなかった。

いつも泰然としていて、カッコよく、
リーダーシップに長けていた男前の女(ひと)
伊東律子さんこそ、
ハンサムウーマンそのものだった。

伊東さんのご葬儀の場所を確認すべく、
インターネットを見ていたら、
またお一人、知人の訃報を知った。
団塊世代論などでお馴染のノンフィクション作家の加藤仁さんが、
亡くなったのだという。
加藤さんとはラジオ番組や雑誌で、
「団塊世代」についての対談をさせていただき、
私がガンガン話すのに比して、
妹のヤンチャに手を焼く穏健派の兄貴という感じで、
微笑をたたえながら見守ってくれているようなやさしい方だった。
享年62歳。
仲間がいなくなったようで淋しい。


2009年という激動の年に、
自らの激動の歴史にピリオドを打たれ、
静かに旅立たれたお三人に、
心からの哀悼を捧げたい。

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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。