12/19(土)「歳月」の重み。

icon_zamma.jpg12月19日(土)24時53分

「どよう楽市」も、
来週で今年の放送が終わるというので、
中継を担当している「江戸むらさき」の2人が、
目黒で中継をしたあと、
所属事務所のスタッフを伴って、
NHKに年末の挨拶に来た。

芸能界も最近は大分緩くなって来ているとは言うものの、
歴史の古い大手芸能プロダクションは、
昔通りのしきたりを守っていて、
年の瀬の挨拶は欠かさない。

余談だが、
今日のゲストの芹洋子さんもそうだったが、
年季の入った芸能人はオンエア後にスタジオを出るや、
真っ先に副調整室に行き、
「ありがとうございました」と挨拶をする。
自分をブッキングしたのはスタジオにいる私や大沼アナではなく、
副調整室にいる制作スタッフだということを知っているからである。

芸能界は一見すると如何にも派手で、
いい加減な世界だと思われがちだが、
中に入ると思いの外、序列構造や業界内ルールが厳しく、
「一般人」より制約が大きい部分もないではないという、
世界なのである。


局から一度自宅に帰り、
着替えをして14時に会社に向かった。
14時半に演出家の宮本亜門さんが会社に来て、
「こころの耳」の巻頭インタビューを、
受けて下さることになっていたのである。

亜門さんとは、
亜門さんが演出家として華々しい成功を収めて間もなくの頃、
雑誌の取材でお会いしたことがあるのだが、
ここ何年かすれ違うことはあっても、
きちんと話したことはなかったのである。

亜門さんは、
高校時代に登校拒否や引きこもりを体験し、
精神科医の助けを借りて、
再生したという経験を持っているのだが、
サクセスストーリーの頂点にいた時にも、
周囲の称賛と自己評価の間に乖離があって、
絶えず「これでいいのか」と言う気持が拭えずにいたという、
そのあたりの「葛藤の歳月」を熱く語って下さった。
(詳しくは新春の「こころの耳」ホームページでご覧ください)

17時に会社を出て、母の夕食の買い物をして、
再び自宅に戻り、母に夕食を届けてから、
打ち合わせのため、朝から3度目の外出をした。

打ち合わせのあと、
このところずっと気になっていた青山のバーに行ってみた。
最近しばしば、長年のつき合いだったレストランやショップが、
閉店する話があちらこちらから聞こえてくるので、
久しく行っていない「あのバーはどうなっているのだろう」と、
心に懸っていたのである。

.........そして、そのバーは、
以前と同じ佇まいのまま、
そこにあった。

青山には「大人のバー」と呼ぶに相応しいバーがいくつかあるが、
中でもここは単なる「飲むところ」ではなく、
大人同士が会話を交わしながら、
お酒を楽しむピアノバーである。
私が初めて来たのは40代になった頃だったと思うが、
時々素敵な若い男性たちに囲まれた森瑤子さんの姿も見かけた。

壁には懐かしい洋画のポスターが丁寧に額装され、
顔があからさまに見えない照明が、
「大人の女」には有難い。
グランドピアノの周縁にバーカウンターが設えられているのだが、
その席はノドに自信がある客が歌を歌うスペースにもなっていて、
今日もウィスキーを飲んでいた白髪の紳士が、
ジャズのナンバーを歌っていた。
約束事になっているわけでもないのだろうが、
何度来ても日本語で歌っている人を見たことはない。

近くに「ブルーノート」があるので、
ステージがはねた歌手が飛び入りで歌っていたり、
井上順さんが歌っていたのを見たこともあるが、
全員原曲で歌っていた。
ハードルが高いせいで、
相当の自信がないと歌えないので、
歌っても1曲、
間違ってもカラオケのようにはならないのである。

「長らくご無沙汰していたので、
どうなっているかなと思って来たのよ。
でも、変わっていなくて.........嬉しかったわ。
これからは、こういう大人のための空間は、
大いに可能性があるような気がするのよね」と、
最初の頃と雰囲気が全く変わっていない、
もの静かなマスターに言うと、
「ええ、これからも頑張ります。
実は.........私、58歳なんですけど、
今年子供が出来たんですよ。結婚して7年目にして.........」

こういう台詞を持ち合わせているようには、
「全く」と言っていいほど、
見えないイメージの人だったので、
一瞬何のことを言っているのかピンと来なかったのだが、
レジの横から恐る恐る出してきたフォトフレームに、
赤ちゃんにやさしく頬ずりするマスターの写真があるのを見て、
この店に流れていた「歳月」を初めて意識した。

昔の私なら、
「こんな私的なものを見せるなんて.........」と、
気持ちがトンガッタかも知れないが、
今夜は実に穏やかな気持ちで親子写真を見ることが出来たし、
それどころか、
とても幸福な気持ちになれたことに、
私の上を流れた「歳月」をも意識させられた。

心にも皺(しわ)や襞(ひだ)が出来るという意味で、
「歳月」は悪くないかもしれない。
(顔の皺や襞は、何とかしなくちゃいけないけれど.........)

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コメント(1)

親から、挨拶だけは、うるさく言われて育ちました。今になって、そのことも、私の中で当り前となりました。が、立派な会社へ勤め肩書きもあるのに、挨拶が出来ず、仕事下さいだけの時に調子がいい人の話しを、出先でよく耳にしました。私自身に、今週、クリスマスカードが何通か届き最近メールばかりになっていたので、こうやって手書きでのカードを、下さった方々の気持ちを、大切にして行こうと改めて思いました。挨拶、礼儀、大切ですよね。

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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。