10/27(火)電気自動車に試乗した。

icon_zamma.jpg10月27日(火)10時27分

今、話題の電気自動車「Eliica(エリーカ)」に試乗した。
随分前から「乗ってみて下さい」と言われながら、
なかなか実現しなかったのだが、
ベネッセの星さんのご案内で、
遂に乗せていただいた。

30年の歳月をかけて、
この電気自動車を完成させたのは、
慶應大学環境情報学部の清水浩教授だ。
ここ何年、団塊世代関連の仕事が多いせいで、
同世代らしき人を見ると生まれ年が気になるのだが、
清水先生のプロフィールに「1947年生まれ」と出ていたことで、
「同じ、団塊だ!」という同胞意識があったのと、
もうひとつ、出身が仙台という共通点もあったので、
お会いする前から、勝手に「親近感」を抱いていた。

慶應大学新川崎タウンキャンパス。
キャンパスと言っても、
官(川崎市)・産・学の共同プロジェクトを推進している場所で、
研究棟らしき建物もあるが、
プレハブみたいな簡素な空間で、
全体に職業訓練所に近いイメージだ。

研究棟の2階にある事務所で会った清水先生は、
「いつ頃まで仙台にいたの?」
「あの宮城県庁のそばにあった残間果実店(*注参照)の娘さん?」
「アッ、その言い方って、仙台流だよね」
「そうか、浅野史郎ともそんなに親しいんだ。
僕も入院の前の日、連絡貰ったんだよ
「えっ、小野寺(KDDI社長)も清野(JR 東日本社長)も知り合い?
そういえば東北の団塊世代は元気だよね」.........等々、
とても初対面とは思えない親しい会話を交わした。
あまりに楽しい「故郷話」が続いたので、
「いざ試乗!」という時には、秋の日がとっぷり暮れていた。

(*注「残間果物店」について
仙台には有名な「残間果実店」という「仙台の千疋屋」みたいな、
大きなフルーツ屋さんがあったのだが、
仙台では私をこの家の娘だと思っている人が多いのである。
どうやら、この家には娘さんもいるらしく、
時々「お姉さんに会いましたよ」と言われることもあるのだが、
もちろん、私は、この家の娘ではなく、姉もいない。
それどころか、お店の前を通る度に、
「この家に生まれていたら、違った人生になっただろうなぁ」
(貧しくはなかっただろうから)と、ある種の感慨を持って、
このお店を眺めていたのである)

さて、いよいよ試乗だ。
作業棟の前庭部分に陸上競技のトラックのような、
走行路が造られてあるのだが、
今日はここを清水先生の運転で走るのである。

倉庫のシャッターが恭しく上がり、エリーカが姿を現わした。
昔SF映画で観た「未来の車」みたいな斬新なデザインだ。
シルバーが基調の外観は、
スポーツタイプのようなシャープなラインだったので、
轟音が鳴り響いても不思議ではないのに、
エンジン音は無音に近い静けさだった。
「本当は右側の長い走行路で走ったらガソリン車にはない、
スムーズな加速を体験して貰えるんだけど、
あいにく今日は工事中なので短い方だけど、
それでも滑りのいい走行でしょ」
闇の中の一本道を走っていると、
周りの住宅街も横須賀線の線路も消えて、
現実が見えなくなり、
半月だけが輝くロマンティックドライブだった。

エリーカの完成は2004年。
今までの車は中央にエンジンが置かれてあるのだが、
エリーカは車輪にインホィールモーターを置く、
というのが最大の特徴で、
車輪に直接駆動モーターを組み込むので、
車体設計が自由にデザイン出来るのと、
稼働力を効率良く車輪に伝達出来るので、
充電一回当たりの走行距離を最大2倍延ばせるのだという。
「排ガスは出ないし、必要なエネルギーは、
ガソリン車の四分の一ですむというのも環境時代に相応しいでしょ」
ロマンティックな夢心地は、
清水先生の技術者そのものの、真面目で朴訥な説明で、
一瞬のうちに消し飛んだ。

「本当は自分で自動車会社を作って、
製造から販売までをやりたかったのですが、
今年1月にベネッセの福武会長と会って、考えが変わったのです。
会長は『清水さん、これで儲けたいの?
儲けるのは悪いことではないけれど、ただ儲けたいわけじゃないでしょ?
普及させたいんでしょ。だったら、この技術をオープンにして、
世界中のどこの会社にも技術と情報を提供して、
開発の手伝いもしたらいいのではないのか」と言うのです。

「たしかに僕は、30年かけて創り上げた車をみんなに乗って欲しいのです。
そこでこの夏、福武会長らとシムドライブという会社を作り、
先ずはこのプロジェクトに興味を持ってくれた企業に集まっていただいて、
オープンソース方式で情報を提供し、
私たちの会社と開発を共にすれば誰もが加入可能にしたのです。
つまり、我々の技術は誰もが持ち去ることが出来、
自社製品に利用が可能とし、先行開発車を試作する。
そして車が売れたらわずかの期間、わずかなロイヤリティーをいただく、
というのがシムドライブのビジネスモデルなのです」

私は、この車はトヨタ等既存の自動車会社とは、
敵対するのかと思っていたのだが、
「いろんな種類の電気自動車があればいいわけで、
これまでの方式で創ったものもあればいいし、
僕の創ったインホィール方式のものもあってもいいということで、
競合はしないのですが、
日本にはそう思ってくれない企業が結構あって.........」
と、清水先生は淋しそうな顔をする。

日本の「凋落」を考えれば、
既存の考え方ややり方に拘っている場合ではないのに、
この期に及んでも、
いいものが出て来たからといって、
これまでの業界のしくみをガラッと変えるほどの、
勇気はないみたいなのである。

「何しろ自動車は日本の基幹産業ですからね。
今は、僕らは既存の自動車会社にとって、
敵ではないということを解ってもらうためにも、
いろんな世界の人に会っています。
最近、中国が強い関心を示していますから、
うかうかすると中国の方が早く採用したがるかもしれません。
電気自動車時代になれば、
車は自動車会社が作るものではないかもしれません。
洋服屋が作っても、情報産業が作っても不思議ではないのです」
清水先生は、時々仙台訛りをまじえながら、
熱く語るのだった。

その表情は、
ファンタジーミュージカル映画「チキチキバンバン」の中で、
夢の車「チキチキバンバン号」を作った発明家、
カラクタカス・ポッツみたいだった。

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コメント(3)

>既存の考え方ややり方に拘っている場合ではない

ですよね。ハブ空港の問題も果たして狭い国土に広大な土地のいるハブ空港を作ることに本当にメリットがあるのかどうか検証すべきでしょう。

「俺が俺が」意識を捨てて、主役を狙うのではなく渋い脇役で全うする人生もあるのではないでしょうか?

いや、「先進国」日本のキャリアプランですけどね。


きっど

> 、、、狭い国土に、、、
きっどさん、こんにちは。
◆残間代表が試乗された8輪?のEVカーの設計思想(車輪にモーター装着!)に、以前から注目していました。
◆これからは、電気エネルギーで動く自動車ではなく、自宅蓄電池システムに車輪が付いている!・・・と認識した方が、今日の車社会の世界観(価値観も)が大きく変わります。各家庭で、EVカーと太陽電池を直結すれば、地域で電力がまかなえます。
◆狭い国土にEVカーさえ!、、、不要!!!・・・と考えます。
【将来の夢】
キャパシタ(大容量コンデンサの意。注.現実は未だ電池仕様)電動アシスト付き折りたたみ自転車(総重量10Kg強)を、折りたたんで、新幹線(在来線)に乗せ目的地まで移動し、組み立てて走れば、都内でも省エネで快適に移動できます。
 ※バスに自転車を乗せて移動できないのが大きな問題!
【実現した夢/蛇足】
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(text end)

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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。