8/23(日)一人で動く。

icon_zamma.jpg8月23日(日)23時57分

本当のことを言うのも「大人の要件」だが、
一人で行動することも、
大事な「大人の要件」だと思うので、
遅ればせながらではあるのだが、
出来るだけ一人で行動するようにしている。

これは多分に「club willbe」に登録してくれた、
メンバーの影響が大きいのである。
それというのが、
willbeメンバーは、一人でインターネットでメンバー登録をし、
一人で各種イベントに参加申し込みをしてくれて、
さらには一人でイベントに参画してくれる、
独立心旺盛な人ばかりなのである。

いつかもこの欄に書いたことがあるが、
私は「一人」が大の苦手なのである。
一人で外食するくらいなら、
どんなに空腹でも食べないで我慢するし、
映画も一人で行くのは試写会ぐらいで、
必ず誰かを誘ってしか行けないという具合に、
こと「日常の活動」に関しては、自立が出来ていなかったのである。
(「いなかった」と過去形で書いたが、
意識的に一人で行動し始めたのは、ごく最近のことなのである。
愚息がいなくなったことと、
ナカヤマが私以外の友達との遊戯日程が増えて、
私を振り始めたことと、
何よりも還暦が射程に入ってきたため、
ここらで真剣に一人で動かないとまずいと、
一大決心をしたからである。
........トホホ、何ともお恥ずかしい話だ)

そこで、
今日は鴻上尚史さん率いる「虚構の劇団」の第3回公演を、
一人で観に行くにしたのである。

会場の「座・高円寺」は、
今春完成した斬新なデザインの多目的ホールで、
設計は建築家伊東豊雄さん、
芸術監督には佐藤信さんが就任しているとい
う、今話題の空間だ。
昨年、指定管理者として業務提携している、
NPO法人「劇場創造ネットワーク」の理事長である劇作家の斎藤憐さんから、
何かの時には手伝って欲しいと言われていたホールだったので、
(willbeでも使いませんかとのお話もいただいていて)
一度、是非来たいと思っていたのである。

劇場に一人で行くというのもめったにないことなので、
それなりに緊張(?)していたのだが、
直前になって、
willbeサポーティングメンバーでもある鴻上さんの、
担当者(番記者みたいな感じ)になっている事務局のセキが、
「いつも、鴻上さんの事務所の方にお世話になっているので、
ご挨拶を兼ねて、僕も一緒に行っていいですか?」
と聞いてきて、(それはそれで嬉しかったのだが)
結局、セキと劇場前で待ち合わせをすることになったのである。

まぁしかし、
劇場までは一人で行くのであるから、
それならいつも一人では行かない場所をセットにして、
どこかに一人で行ってみようと考えた結果、
西荻窪の「動物霊園」に行って、
亡き愛猫ジェリクルのお参りをすることにしたのである。

ここも一人で行ったことはなく、
最近は一年に一度、年末に愚息と行くのがほとんどで、
昨年12月に2人で行って以来だった。
(最初の頃は2月の命日と盆・暮れにお参りしていたのに、
いつしか薄情な母子になってしまったのである)

何があったというわけでもないのだが、
このところ何となくジェリクルのことが心に引っかかっていて、
機会があったら訪ねてみようと思っていたので、
高円寺に行くのなら、
駅3つしか離れていない西荻にも行ってみようと、
思い立ったのである。

「霊園」と言っても、
土の上にお墓があるわけではなく、
商店街の中に建つビルの中に設けられた施設で、
動物たちの遺骨が30センチ四方ぐらいのガラスケースの中に安置され、
花や飾りとともに祀られているだけなのである。
ジェリクルが12歳4ヶ月で死んだ時、
かかりつけの獣医さんの紹介で、
葬儀から火葬、収骨までの全てを、
ここで取り仕切って貰ったのが始まりで、
一ブロックを借り、
1周忌、3回忌、7回忌の法要もここでしたのである。

外からは判らなかったのだが、
建物の玄関を入って行くと、
内部の様子がいつもと違っていたのである。
以前は事務所だった一階部分が改装されて、
葬儀などをやるセレモニー空間になっていたのである。

動物たちのケースは2階、3階にあり、
ジェリクルのケースは、
2階左奥の真ん中あたりだったのだが、
階段を上っていくと、.........ないのである。
2階も少し模様替えをしているようなので、
移動したのかしらと思って、
周辺を探したのだが、見つからないのである。

急いで階下の事務所に行って、
「見つからないのですが.........」と告げたところ、
黒の僧衣らしき着物を着た男性が、
机の中から出してきた、
ケースの分布図を指で辿ってくれるのだが、
やはり見つからないのである。

「私ももう一度探しますので、そちらも書類を見て確認して下さい」
と言って、再び2階に行き、
改めて探しても、見つからないのである。
「命日もお盆も来なかったからかしら?
でも去年から8ヶ月しか経っていないのだし、
護持費もお払いしているし.........どうしたのだろう」
それにしても、
こんなことをしていたら、
鴻上さんの芝居に間に合わなくなるではないかと、
イライラしながら、
半べそ状態で探していると、
いつに間にか件の黒装束の男の人が、
そばにやって来て、
申し訳なさそうに「ここです」と指さしたのは、
天井にほど近い棚の最上段、
一目で「除外者」と判る場所だった。

「すみません、改装を機に書類の点検をしたら、
残間さんの現住所が解らなくて、
ここに移してしまいました.........」
黒衣の男性は恐縮して言う。

当然、水も替えて貰ってはおらず、
位牌もほこりをかぶっていた。
人間なら「無縁仏」ということに近いのだろう。
事務的な不手際とは言え、可哀想なことをした。
ジェリクルが死んだ時、
仕事の都合でどうしてもの葬儀に出られなかった私に代わって、
「葬儀委員長」を務めてくれた愚息にも合わす顔がない。
改めて、下段のケースに移して貰い、
仏具を拭き、水を替えて、お線香をあげた。

このところ虫の知らせのように、
無性に気になっていたのはこのことだったのだろうか。
何はともあれ、今日来ることが出来て本当に良かった。

安心したところで、
気持ちを鴻上さんの芝居に切り換えて、
高円寺に向かった。
今日の芝居「ハッシャ・バイ」は、
かつて「第三舞台」で上演したものを、
鴻上さんが18年ぶりに演出をし直したものだが、
今観ると実に新鮮で、
若い役者たちには未知なる体験だったのではないだろうか。

「言葉遊び」といってもいい、
単語の連鎖や台詞の重層的な唱和は、
小劇場の特徴で、
クサイといえばクサイのだが、
ここまで技が修練された形で観せて貰うことはないので、
とても新しい気がした。
テーマの行き着くところは「母性回帰」という、
これまた小劇場系では常套的主題なのだが、
それもここまで研ぎ澄まされた形で観ることは少ないので、
(「子宮回帰」は多いのだが)
ベタついたところがなく、クールな魅力にあふれていた。

鴻上さんは、恒例の「手書きあいさつ文」の中で、
「去年の8月に僕は50歳になり、いきなり、自由な気持ちになりました。
なんというか、「やけくそポジティブ」とでも表現できる感情で、
『なんでぃ、50歳になっちまったじゃないか。
あんなに、これから先、何が起るんだ?!って身構えていたのに。
もう、過剰に守ろうとしたり、おびえたりする必要はないんじゃないか』
と開き直る気持ちになったのです」
と、書いていたが、
まさにこの作品は、その心情そのままに、
自由で、伸びやかで、古さを感じさせない、
緊張感のある舞台だった。

「虚構の劇団」は、
鴻上さんの演劇観を若い俳優と共有しつつ、
作品を練り上げていくために旗揚げした新しい劇団と聞いていたが、
若い役者たちに一切の妥協を許さない姿勢は見事だった。
(若い役者に迎合する演出家が増えているので)

これも、鴻上さんが「50歳」になり、
改めて「一人で荒海に乗り出す」覚悟をしたからなのではないだろうか。
近々、会ってゆっくり話をしたいと思った。

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コメント(2)

明日仕事、もう寝ないと思ってちょっとクリックしたら、登録されてて読んじゃいました。
うまくことばで言えませんが、なんかすごく励まされてる感じになります。明日はすこし元気に勤めに行けそうです。

ジエリクル猫さんは飼い猫ではなく、ご家族の一員だったのがわかります。きっといつも楽しく語り合っていたのでしょうね。お互いなんとか翻訳しながら。替りは誰もできないでしょうね。


ジェリクルちゃんが呼んでたんですよ。ちゃんと会えてよかったです。

亡き後もそのようにして会えるのですね。


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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。