6/23(火)言いにくいことを言う勇気。

icon_zamma.jpg6月23日(火)24時02分

先日(この欄でも触れたが)
審査員各自による書類審査を終えた、
「地域づくり表彰」の第一回会合が開かれた。

審査委員が一堂に会し、
書類選考の集計結果を見ながら意見交換をして、
第二次選考通過地域を選び、
7月、8月の二ヶ月で現地審査をするのである。

会の冒頭、
25年間続いたこの表彰制度について、
「改定案」が事務局から出された。

マンネリを防ぎ、賞の価値を上げるためにも、
賞の数を絞り、
これまで表彰式当日のプレゼンテーションを経て、
審査結果の発表をしていたのを、
現地審査を終えたあとの合同会議で大臣賞をはじめとする、
すべての賞を決めて、
表彰式当日は純粋な表彰式にしたいという「提案」だった。

今の日本に新しい可能性があるとすれば、
地域・地方がオリジナリティーを柱にした、
新機軸を生み出す以外ないということで、
ヤル気のある地域・地方を顕彰しようという、
この種の賞が増えていることも事実なので、
ここで改めてこの賞の本質を問い直しておくことは、
いいことだと思った。

この賞は「大臣賞」を受賞したからといって、
賞金は一切なく、貰えるのは表彰状一枚だけだ。
それでも、今まで日が当たり難かった地味な領域の「地域づくり」に、
力を尽くしている地域の人たちを褒賞することで、
一定の役割は果たしてきたのだが、
昨今の「地方分権」や「地方の時代」の流れを意識してか、
賞金(補助金)とセットになっている賞が増えてきているので、
どうやらそちらのほうを、
「有難い」と歓迎する人たちも多いようなのである。

審査委員が現地に行き、
地域づくりに関わった人たちに直接会って実態を把握し、
意見交換会を通して、
地域に横たわる問題や課題を抽出するというこの地味な賞は、
意義はあると思うのだが、
今のままでは運営が大変なのではないかと、
「改定案」を説明する担当課長の顔を見ながら、感じた。

「賞」そのものを見直すのはいいことだと思うが、
そのことを説明する時の課長の顔が、
妙にオドオドして落ち着かないのだった。
元々が決して暗くはない顔立ちなのに、
目の奥に苦渋が感じられ、
そこに「本音」が隠れているような気がしたのである。

ここで何も言わないまま通り過ぎるのは、
自分に対しての裏切りだと思ったので、
挙手をして発言した。
「課長の説明は、奥歯にものが挟まっているような、
感じがするのですが、何か隠していませんか?
立場は違っても、この賞のために一緒に頑張って来た仲間同士、
本当のことを言ってくれないのは、
遺憾、いえ、とても不快です」
場は一瞬シンとなった。
官公庁の会議で、
このような情緒的物言いをすることに、
違和感があるのは分かっていたし、
「ちょっとキツイ言い方かな」とも思ったのだが、
このくらい言わないと「本音」は出て来ないとも思ったのだ。

それでも、まだ回答がなされなかったので、
「予算が大幅に削られたのではないのですか?」と畳みかけると、
事務方も観念したようで、
「はい.........。おそらく来年度はこの賞の運営に関わる予算は、
カットされるのではないかと思われます」

.........やっぱりそうだったのか。
実は、課長が苦渋の「く」の字を匂わせた時、
ピンときたのである。

それというのが、
他省庁でも褒賞予算は続々とカットされているのである。
何年も続いた賞をいきなり無くすわけにはいかないところは、
審査だけを役所の会議室で行ない、
表彰式はカットという例も増えているのである。
それより何より、広報費が大幅削減され、
地域では広報誌の廃刊も相次いでいるのである。

たしかに「広報費」というものは、
効果測定がしにくい分野なので、
カットしやすいのであるが、
役所が何をやっているかを人々に知らしめることは、
「情報公開」とも繋がっていることなので、
ただ闇雲にカットするのも考えものだと思う。

ま、されど、財源も限界が来ていることではあるから、
(「無駄遣い」も多いんだけどね)
予算にメリハリはつけなければならないわけで、
「地域づくり表彰」も、
路線変更せざるを得ない状況なのである。

で、結局は「賞」の数を8つ(多い時は10個になることも)から5つに変更し、
これまで事務局担当者と、審査委員二人で、
現地審査をしていたのを現地に行く審査委員を一人にして、
経費節減をはかり、さらに表彰式も簡素化することで合意した。

会議が終わると、若手の役人が駆け寄って来た。
「今日は本音で議論が出来て嬉しかったです。
ありがとうございました。
僕らも本音で仕事をしないといけないって思いました」
「言いすぎたかな」と反省してもいたので、
この一言は嬉しかった。

「これからは言いにくいことをいかに説得力を持って、
スマートに言えるか、それが役所の人の命題よ。
言いにくくても言わなきゃならないことって、
ますます増えると思うから、
正直に、率直に話して、理解してもらうしかないのよ」
と、またまた「余計な一言」を発したのだが、
言いながら、
「役所の人の命題」は、そのまま、
「リーダー( 責任者)の命題」に置き換えることが出来るし、
この時代の「スマートさ」って、
「愚直」ということかもしれないなと思っていた。

私も、今後ますます、
言いにくいことを言わなければならない場面が増えそうだ。

「正直」(本当のことを)
「率直」(飾らずに)
「愚直」(解ってくれるまで何度でも)
これでいくしかない!

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コメント(1)

> 「正直」「率直」「愚直」
◆巧詐不如拙誠
上記の六文字は、中国古代の国政おける指南書であり、息子が中学卒業文集の題目として選んだ、韓非子から続く、トップの人材に欠かせない、銘戒の一つです。町の政務や家業のため、これ等を遵守した遺伝因子は東大大学院に進んだ息子に、間違いなく隔世遺伝しています。助役であった曽祖父は、特に「愚直」で、大正期の有名な小作争議の収拾に奔走し、また税収安定化のため、自動織機メーカーの新規事業工場の用地確保に奔走し、多くの非難を浴びたが、「巧詐不如拙誠」の一貫した行動が、引退後に大きな評価になっていると回顧しています。
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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。