萎える心と痛む指

icon_zamma.jpg1月2日(金)6時18分

やるべきことを列挙して、
それをいつまでにはやろうと、
先々まで予定を立て、ひたすら消化するという、
「忙殺の日々」に別れを告げ、
「その時、そう思ったから、そうする」
で行こうと決めてスタートした2009年だが、
やはり何となく落ち着かない。

「焦らず、騒がず」はいいとしても、
到達点と期限を決めつけずに、
内なる自分の思いを優先させて行動するというのが、
何だか私らしくないような気がするのである。

人がいて、
その人の思いを測って、
自分の行動を決めるという方がずっとラクだし、
心地よいのである。
その為の忙殺ならそれはそれで幸福だと思うのである。

変わらねばと思う私と、変わりたくない私。
何とも心もとない。

しかし、それにしても指の傷が痛む。
ズキズキと脈打って痛む。
元旦のお膳の用意をし、お屠蘇で祝い、
山ほどの洗いものを処理した時には我慢出来たのに、
午後になると、
指先が器に当っただけで飛び上がる痛さだ。

身体的苦痛をこれだけ敏感に感じとる穏やかな日常。
一方で「一年の計」とは無縁の元旦。
指先だけに生きている緊張感。
気持ちの萎えと指先の疼き。
ウーム、今の私には、
結構いいバランスかもしれない。

.........などと考えていたところに、
元気な声の電話。
「明けましておめでとう! 夕食、うちですき焼きやらない?」
松居一代さんからだ。

2年前のお正月と同じように、
船越家で迎える元旦の夜。
この日もまた焼き方は船越英一郎さん、
実に手際が良く、
美味しいすき焼きを作ってくれるのである。

息子のリュウイチくんは、
我が愚息とは保育園時代の友達。
2年前よりグンと大人になっていた。

父と息子の関係は羨ましいほど良好で、
どんなに忙しくても、
週に一回は二人きりでじっくり話をするのだという。
「そうしないと、お互いに話がたまってしまうんですよ」と、
実に幸せそうな顔で船越さんは言うのである。

近頃とみにシニカルを気取って、
人の幸福になど言及したことのない愚息が、
帰りの車の中でポツリと漏らした。
「あの3人は会う度に仲良しになっているよねぇ。
松居さんも努力家ですごいけど、
船越さんって、本当にいい人だよね。
リュウイチくんもいい感じだったよね」

寒空の下、3人はコートも羽織らず門の外に出て、
私たちの車をいつまでも見送ってくれたのだった。

あたたかい時間を過ごしているうちに、
いつしか、私も指の痛みを忘れていた。

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プロフィール

残間 里江子【プロデューサー】

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、編集者などを経て、企画制作会社を設立。 プロデューサーとして出版、映像、文化イベントなどを多数手がける。著書多数。