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第5回 排尿障害

2016.04.19



50代は健康の曲がり角。体が大きく変わり始める頃です。
元気だと思っていた人も、以前のような健康管理は通用しません。
そして今や人生90年、100年という超高齢社会。
50代からの体のメンテナンスが、後々のシニアライフを左右します。
私たちのもっとも身近なお医者さん=ホームドクターの常喜眞理さんに
予防医学の視点から、健康管理の秘訣を語っていただきます。

☆常喜眞理さんプロフィール

☆このコーナーでは、常喜さんへのお便り・体に関する疑問を募集しています。
こちらまでmember@club-willbe.jpまで。


頻尿・尿漏れのメカニズムを知る



151023joki_karada_icon40歳以上の8人に1人がトラブルを抱えています

老化によって体はさまざまな影響を受けるのですが、そのひとつに排尿の問題があります。一番多いのが、いわゆるトイレが近くなる「頻尿」あるいは「尿漏れ」ですね。
テレビでも関連グッズのCMをよく目にしますが、ある調査によれば40歳以上の8人に1人がこの問題を抱えているというデータもあります。もちろん年代が上がるにつれて割合は高まり、80歳以上だと4割近い数値となります。男女間でそれほど差はありません。

ただしデリケートな問題でもあるので、なかなか悩みを口にしづらい面があります。実際はもっと多くの方が悩んでいるのではないでしょうか。
歳を取れば程度の差こそあれ誰にでも起こることですから、まずは正しくそのメカニズムを理解しておきましょう。

では排尿の仕組みを簡単にご説明します。
腎臓で作られた尿はいったん膀胱に溜められます。膀胱は薄い筋肉のようなもので伸縮性があり、約600mlほどの尿を溜める能力があります。この膀胱に半分ほど尿が溜まったあたりから脳に信号が伝えられ、我慢するか排尿するかの判断を下すことになります。
「排尿する」となれば脊髄を通して指令が伝えられ、尿道を開き、膀胱がポンプのように収縮して尿を押し出すわけです。

排尿障害の原因のひとつは、老化による膀胱の筋力低下です。伸縮性が失われて尿をあまり溜められなくなり、頻繁に尿意を覚えるようになります。
また尿を押し出す力も弱まるので、排尿しても膀胱に尿が残ってしまい、すぐに尿意を覚えてしまいます。あるいは尿が尿道に残って漏れだすことも起こります。

これに加えて、臓器の圧迫も排尿障害を助長します。
男性ですと老化により前立腺が肥大することで尿道を圧迫。尿が出にくくなったり、時間がかかるようになります。あるいは膀胱を圧迫することで尿意を感じやすくなります。

一方、女性は歳を取ると子宮、膀胱、腸全体を吊っている膜や筋肉(骨盤底筋)が緩み、内臓の位置が下がってくる「下垂」が起こります。多産だった方は何度も子宮が伸縮を繰り返したために、特にそうなりやすい傾向があります。
この下垂した内臓は骨盤の狭いところにはまり、子宮がただでさえ衰えている膀胱を圧迫して、頻繁に尿意を覚えることになります。

しかし原因はこれだけではありません。こうした臓器の老化に加えて、さらにメンタル部分も大きく関わってくるのが、排尿障害の厄介なところなのです。




151023joki_karada_icon自信喪失が、さらに頻尿を助長する負のサイクルへ

脳が膀胱からの信号を受け取り、そこから脳が判断して膀胱に排尿の指令を出すのですから、メンタル面の影響は非常に大きなものがあります。

頻尿・尿漏れを起こすようになると、排尿に対して自信がなくなります。特に外出先では不安になり、「今のうちに行っておかないと」と、ますますひんぱんにトイレに行くことに。ついにはまだ膀胱に余裕があっても、不安になっただけで尿意をもよおすようになります。中には水の音を聞いただけで尿意を感じる方もいます。

肉体的な衰えから排尿機能が低下することで、メンタルもそれに引きずられるようにバランスを崩し、それがさらに排尿障害を加速するという、負のサイクルに陥ってしまうわけです。
排尿障害はこうした膀胱の筋力低下、内臓による圧迫、メンタルなどの要因が複雑に絡み合うのが、対処が難しいところです。

頻尿の定義はなかなか難しいのですが、夜中に1回以上トイレに行くようになると夜間頻尿。昼は8回以上が目安になります。
では、次にこうした排尿障害に対する治療法についてお話ししたいと思います。




151023joki_karada_icon自分の“膀胱の力”を信じること

病院でよく行われているのは、膀胱の収縮力の検査です。トイレ直後、本人が尿を出し切ったと思える状態で、エコー検査により膀胱のサイズを測ります。すると排尿直後にも関わらず、膀胱が収縮しきれずに尿が残っているかどうかがわかります。この様子を見て投薬等の治療が行われるわけです。

女性の場合は内臓の下垂を改善する「骨盤底筋体操」というのがあります。肛門と膣を締めながら行う運動で、ネットで検索すると詳しいやり方が紹介されているはずです。
すぐには効果が出ないと言われていますが、私の周囲では、朝にやっておくと、その日は調子がいいという声をよく聞きます。

それから「膀胱トレーニング」というのも行われています。尿意を感じたら5分から10分だけ我慢する、という簡単なものです。これは膀胱の機能回復とメンタルの両方に有効です。
膀胱にはもっと尿を溜める機能があるにもかかわらず、すぐに尿意のスイッチが入ってしまうのが頻尿のよくあるパターンです。そこをちょっとだけ我慢することで、膀胱の尿を溜める機能を呼び起こすわけです。
これは我慢する経験を積み重ねることで、不安からすぐに尿意のスイッチが入ってしまう習慣から脱することにもつながります。自信喪失状態から、自分の膀胱への信頼を取り戻すメンタルトレーニングとも言えます。






151023joki_karada_icon極端な水分の制限は危険です

この他、男性の場合は前立腺肥大による圧迫が大きいようでしたら、前立腺を小さくする薬を内服したり、外科的な処置も必要になるかもしれません。

とにかく排尿障害については、原因もさまざまで、それが絡み合うことも多いので、一概に対処法を言うのは難しいですね。お悩みの方は“負のサイクル”に陥る前に、一度、泌尿器科にご相談することをおすすめします。

問題が問題だけに、女性は恥ずかしくて病院に行きにくいかもしれませんが、最近では「女性泌尿器科外来」というのも増えています。ここでは婦人科並みのプライバシーへの配慮が行われています。不安な方はこちらでご相談してはいかがでしょうか。

なお、トイレの回数を減らすために水分を控える方がいらっしゃいますが、腎臓を守るためにも水は必要なので、1日に1〜1.5ℓは飲むようにしてください。ただし夕方からは控えめに。カフェインやアルコールも避けた方がよいです。

歳を取ればある程度の排尿障害は仕方がないのですが、夜中に二度三度とトイレに行くようでは、昼間の生活が辛くなります。映画やコンサートも、トイレを気にしていては楽しめません。
中高年からのクオリティ・オブ・ライフを維持するためにも、“膀胱力”を高める努力はしておきたいものです。

くれぐれもご自愛ください。

(終わり)




<参考サイト>
リンク/骨盤底筋体操
http://www.oab-info.com/info/note/note_02.html



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