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第1回 老化とは(前篇)

2015.10.23



50代は健康の曲がり角。体が大きく変わり始める頃です。
元気だと思っていた人も、以前のような健康管理は通用しません。
そして今や人生90年、100年という超高齢社会。
50代からの体のメンテナンスが、後々のシニアライフを左右します。
私たちのもっとも身近なお医者さん=ホームドクターの常喜眞理さんに
予防医学の視点から、健康管理の秘訣を語っていただきます。

☆常喜眞理さんプロフィール




“老い”とうまくつきあうために(前篇)




変わりつつある自分の体を意識しよう


こんにちは。私は東京・麹町にあるクリニック『常喜医院』の院長をつとめています。
診療科目は内科・皮膚科・小児科。みなさんの「ホームドクター」を目指して、
日々診療を行っています。
……ホームドクターとは、自分の体のことについて気軽に相談できる、最も身近な医者のこと。
患者さんが抱えている漠然とした不安や、普通なら「こんな些末なことを医者に聞くのは
ちょっとなぁ……」と遠慮してしまうような質問まで、
体のことは何でも話せる医者をイメージしています。
できるだけ威圧感の少ない診療室になるよう、白衣は着ないで診療しています。
従来の言葉でいえば「かかりつけ医」という言葉が近いかもしれませんね。

さて、今回のコラムでお話するのは「50代からの体との向き合い方」
老いとともに変化していく体とどう付き合っていくか。ホームドクターの視点と、
私が今注目している「予防医学」という考え方からお話ししていきたいと思います。


151023joki_karada_icon脳は老化に気づきにくい。「まだまだ元気」は要注意です

クリニックで健康診断を行っていると
「診断で『要注意』という結果は出るが、とくに症状もなくまだまだ元気。
できればこのまま、薬に頼らない生活がしたい」と仰る方がとても多いです。

この気持ち、よく分かります。
……でも、分かると同時に思うのは「若い頃の『元気』と50代以降の『元気』は
根本的な意味あいが異なる」ということ。

ということで、コラムの第一回目は「“老いとつきあう”とはどういうことか?」という、
大枠のお話をさせていただきます。

当たり前の話ですが、私たちの体で老化しない部位はありません。
五感、筋肉、骨、内臓、皮膚……すべてが老化していきます。
「そんなことわかってるよ」と思うかもしれませんが、
実は私たちの脳って、体の老化をきちんと捉えきれていないのです。

運動会の保護者参加競技で、見事に転倒するお父さんやお母さんを見たことはありませんか?
久しぶりの運動。脳はこれくらいのスピードならコントロールできると思っているけれども、
足は以前のようには動いてくれない。「あれ?」という間もなく、転倒!

体が若い時に覚えていた感覚と今の体のあいだで、
知らず知らずのうちにギャップが生まれているわけです。
運動機能の低下による擦り傷程度なら微笑ましいと済ますことができます。
ところが気づかないうちに五感や消化機能なども衰えているのです。
少しずつ衰えるために気付きにくいものですね。

特に嗅覚は、実は海馬と密接な関係があるといわれています。
嗅覚の低下は認知症にも繋がるちょっと怖い不調です。

「老化を感じない」という方も、体の不調には耳を傾けてみてくださいね。


151023joki_karada_icon更年期はメンタルの不調こそ気をつけるべき

老化で引き起こされる体の変化の一つに「更年期」があります。

更年期は、平均すれば50歳ぐらい、早い人では40代前半から、
体内の男性・女性ホルモン量が減少することによって起こります。
女性は閉経があるので分かりやすいですが、男性にも起こります。

ホルモンを管理しているのは脳の「視床下部」という場所。
ホルモン・皮膚・メンタルに関することを総括して担当している司令塔です。

この部分が上手く働かなくなることで、ホルモンや皮膚、メンタルが同時に不調をきたします。
更年期では、汗を上手くかけなくなったり、体温調節が上手くいかなくなったりしますが、
これは視床下部がストレスを感じているからなんです。

年齢によるホルモン低下で、働きが悪くなった部下に司令塔がいらいらして
当たり散らしているといったところでしょうか。
たとえば顔の半分だけ汗をかくような症状もよく知られていますね。
あまりご存知ないかもしれませんが、やたらにできる発疹やじんま疹もよく見られる症状です。

厄介なのはメンタル面の不調ですね。
理由はないけど悲しいとか、落ち込むとか、イライラするとか。
これには多くの人が苦しんでいます。

「病は気から」で、メンタルの不調は結果的に病気や体調不良につながります。
気が滅入って外に出たくなくなったり、意欲が湧かなくなったり……。
活動性が落ちますから、代謝や免疫が悪くなります。
ストレスへの耐性も落ちてしまう。これがきっかけとなってうつ病になることもあります。

今でこそ若い人も陥るうつ病ですが、昔は男性中高年特有の病気でした。
断言はできませんが、これも更年期障害から引き起こされたものだったのかもしれません。

更年期は視床下部やホルモンバランスの問題なので、
薬を飲めば改善するという単純なものではなく、コントロールがしづらいのも厄介ですね。


151023joki_karada_icon一番の対応は、体の不調を受け入れること

そんな更年期ですが、つきあい方そのものは非常にシンプルです。
マイナスイメージが強い更年期も、見方を変えれば自分の体と向き合う絶好のチャンスです。

まず、何年かすれば絶対に終わります。
というのも、これはホルモンバランスの急激な変化に体が対応しきれずに訪れる不調ですから、
この変化に体が慣れて適応し、ストレスと感じなくなると、おのずと不調も軽減してきます。
体が慣れるまでの期間は「こういうものだ」と、
体の不調を認めてあげることが大事です。

それから、介護や仕事など、他に取り組むべき大変なこと、 “火事場”があると、
更年期が起こらないことがあります。
仕事や介護以外でも、夢中になれる好きなことを見つけられれば、更年期の症状は緩和されます。

視床下部よりさらに上位機能に当たる大脳から幸福感を伝えれば、
実質司令塔である視床下部も少しリラックスできるはずというわけです。

覚えておいていただきたいのは、更年期は誰にでも起こるものだ、ということ。
更年期を起こさない方法や、今すぐ止める方法を考えるよりも
「そろそろ自分にも更年期がくるな」「これは更年期だ」という心構えが重要です。

これは更年期以外の体の変化についても言えること。
私達は生きているわけですから、老化することは避けられません。
老化しない方法を考えるよりも「自分は老化するし、心身ともに不調が出てくる」と認めて、
そこからどのように対応するか考えていくことが、実は健康な毎日への近道ではないでしょうか。


151023joki_karada_icon老後は、社会にとっても初めての経験です

……実は「老後」という言葉がこれほど人々の間で使われるようになったのって、
すごく最近のことです。

いまから約70年前の昭和22年(1947年)、男性の平均寿命は50.06歳、女性は53.96歳でした。
ほぼ50歳ですね。孫が見られるかどうか、というところで亡くなる方が多かったのです。

ところが戦後70年が経った現在、厚生労働省が発表した最新のデータでは
日本人男性の平均寿命は80.50歳、女性は86.83歳。30年以上も増加しています。

つまり、たった70年前まで、50歳以上になっても人間が生きることというのは、
社会であまり想定されていなかったことになります。

何が起こるのか、自分にも社会にも分からない、誰にとっても初めての経験。
それが現代の“老化”なんです。

老後の存在が当たり前となった社会のために生まれてきたのが「予防医学」。
病気や不調の芽を悪くなる前に摘みとり、よりいきいきと生きるために、
医療を通じてできることを考えていきたいと思います。

これまでの医療は、患者が病気にかかった際の「治療」が目的でした。
人生は健康であることが基本で、病気にかかることはイレギュラーだったといえます。

これに対して予防医学は「病気にはかかるもの」という考えが前提になっています。
毎日を楽しく過ごすための方法を模索し「大病を阻止しよう」という考え方です。

大病にかかるよりも患者さんの体の負担が少ないことはもちろんですが、
医療費の負担も少なくなるというメリットもありますね。
これからの大切な考え方です。


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