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学ぶことは、幾つになっても面白い。 1/3

島田晴雄さん(千葉商科大学学長)

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千葉商科大学の学長を務める傍ら、企業の経営者、さらには経営者を目指す若者たちを精力的に指導する島田晴雄さん。お話を伺いながら見えてきたのは、教えること、すなわち学ぶこと。70歳を過ぎてもますます盛んな、学びへの強い意欲でした。見習いたいものです。(残間)
(聞き手/残間里江子  撮影/岡戸雅樹 構成/髙橋和昭)


vol.1 国際社会で信頼される人材を育てたい


残間
今日はよろしくお願いします。
相変わらず精力的に活動なさっているようで、絵画は前から有名ですが、ヨット、それから最近はカンツォーネもやってるそうですね。

島田
登山も始めましたよ。

残間
70歳を過ぎているとは到底思えないんですが、本業の方はいかがでしょう。今は千葉商科大学の学長と「島田塾」が中心なんでしょうか。

島田
実は2年前から「島田村塾」というのをやってます。ですから、併せて3つをベースに動いています。

残間
「島田塾」というのは、企業の経営者を対象として勉強会だったと思いますが、「島田村塾」というのは?

島田
30代の若手経営者、もしくはこれから会社を起こそうという人たちが対象です。
第一期は16人が参加して、そのうち6人はすでに会社を経営していますね。

残間
どういったわけで始められたんですか?

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島田
私は小泉政権の時に経済政策に関わりまして、いろいろと将来の日本の道筋について推論を重ねました。これはその延長線上なんですよ。

このままでは、日本の社会が持続性がないように思えるんです。すごく心配なんですよ。
若い人の中には才能のある人もいるし、すごく頑張ってる人もいます。彼らには伸び伸びと活躍して欲しいんですね。

それで今、日本の最大の問題は“人口縮小”ですよね。それと高齢化。
人口縮小するとマーケットは飽和して拡大しない。それどころか減るかもしれない。高齢化しますから社会的な費用がすごく嵩みます。税金負担がものすごいことになります。
今、老人比率(全人口に65歳以上が占める割合)が25%ぐらいですが、国民負担率(所得に対する租税負担率と社会保障負担率との合計)は4割超えてますよね。
今から36年後、2050年には老人比率が40%。

残間
集落も800ぐらいなくなるそうですね。

島田
ええ。国民負担率は2年ぐらい前の大和証券の推計ですが、73%だといいます。どこが調べてもそれくらいの数字なんですね。今と同じくらいの税制、社会保障を考慮すると。

それって企業にとっては、最悪の事業環境なんですよ。マーケットは縮むはコストは嵩むは、人件費は高いは。
すると我々はともかく、次の世代の経営者は全く別の戦略を考えないといけない。

それはどういうことかというと、世界を舞台に生きていくということです。今、70億人くらいですが、この先、90億人を超えると言われてます。このボリュームゾーンとつきあわざるを得ない。

それから日本のもう一つの制約は、おそらくこれから製造業では生きていけないだろうということ。日本の製品は品質はいんですよ。でも高い。
それで製造業の製品なら、気の利いた営業マンがいなくても売れるんですよ。いい商品なら見ればわかりますから。

すると物が売れないということになると、ソリューションで生きていかないといけない。物を作るより、物を作る方法とか、教える方法とか。金融とかはみんなソリューションですね。こちらの方が利幅はありますから。

ただね、世界を相手にソリューションを売るとなると、例えばアブダビに行って都市計画なりを売ろうとする。その時にはまず、相手に深々と信頼されないといけない。
中国からもドイツからも商売敵が来てますから、そこをどうしても「残間さんとやりたい」と思わせないといけない。

そうなると人間的にチャーミングかということもありますが、8割は受け継がれてきた知識をちゃんと身につけているかなんですね。

どういうことかというと、人口のボリュームゾーンの半分以上はイスラムなんですよ。そして世界それぞれ民族が違う、文化が違う。いきなりは商談できないんです。
つきあってるうちに芸術の話とか文学の話とか、サッカーの話とか、いろいろ話してるうちに、「あいつ、いいよね」ということになって、「一緒にやろうか」となる。

残間
なるほど。

島田
製造品や建築とかと違って、ほとんどのソリューションは見てわかるものではないですから。
そういう世界にこれからの若い人たちは入っていかないといけない。だけど日本の若者たち、才能はあるかもしれないけど、世界を知らない。

残間
全般的な教養というか、相互理解の能力が問われますね。

島田
「島田村塾」の基本はリベラルアーツ(教養学)です。
目指してるのは、地球儀をクルクル回し続けて指でピタッと止めます。それで指の指した国について、どれくらい語れるか。
事前に課題を出して英語で議論するわけですが、最初は全然できませんでした。

残間
入学するのに試験はあるんですか?

島田
それはありませんよ。やる気があれば構いません。
それで一期2年なんですけど、2年経った頃には、これができるようになるんですよ。
今は英語だけですけど、いずれ中国語でもやりたいと思ってます。

残間
面白いですね。

島田
日本でもリベラルアーツをやる学校が増えてますけど、私は少し疑問があるんです。
歴史の専門家、音楽の専門家、文学の専門家、絵画の専門家、いろいろと並べて、「はい、リベラルアーツですよ」「うちはなんでもできますよ」という感じ。
すると学生たちはその中から選んで、自分の中で消化していかないといけない。これって違うんじゃないかと。

さらにリベラルアーツの学校の校長先生は何ができるんですか? というと、「リベラルアーツは大切です」という話しかできない。

残間
(笑)確かに。

島田
自分で絵を描くわけにはいかない、スポーツもやれない、音楽もできない。すべて大先生まかせ。
それって、全部、学生に負担が来てるじゃないですか。

「島田村塾」では、その逆をやってます。リベラルアーツを全部、私が一人で担当します。

残間
島田先生は多芸ですからね。

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島田
(笑)ちょっとはね。でも足らないところばっかりですけど。

残間
でも、そういう発想の先生は、他にいないんじゃないですか?

島田
ええ、だから「村塾」っていう名前をつけたんです。

学校は先生が複数いたら、どっちかが無責任になります。人間関係壊すのが嫌だから。だから、投げちゃった方が楽なんですよね。結局、誰かが負担をかぶって頑張る。

たとえば財務省の委員会だったら事務局が全部やって、審議委員は本気でやらない。責任を取りたくないから。
奨学金の選考委員会などでも事務職が事実上決めてます。委員は本気でやらない。そんな決め方をされたら、学生は被害者じゃないですか。

残間
それは大学の学長を経験をされたことが大きいんじゃないですか。

島田
それもあります。
だから吉田松陰は偉かったんですよ。「松下村塾」は吉田松陰が1人で全部教えてましたから。

残間
そうなんですか?

島田
時々、友だちは連れてきてましたが、基本は一人です。自分が悩みに悩み、考えに考え込んだことを教えたわけです。伊藤博文始め、多くの明治の元勲が育ちました。
あれが本当の教育ですよね。一対一。

組織にしてしまうと、教授会ができて、理事会ができて、経営サイドができて、みんな責任をなすりつけ合う。被害者は学生です。
組織では、複数の人間では、心を込めた教育はできないわけですよ。

リベラルアーツでこれをやるのは、結構大変ですよ。常に学生たちの10メートルぐらいだけ先に行ってて、それから学生に自由に議論させる。その結果を見て解説していく。それには教える側は学生の5〜6倍は勉強しないといけませんから。
そういうチャレンジを「島田村塾」ではしてるわけです。(つづく)

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vol.1 国際社会で信頼される人材を育てたい

vol.2 自国を客観的に語れることが国際人の出発点

vol.3 若者たちも変わり始めている






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