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“人口減ニッポン”の未来 1/2

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1995年から岩手県知事を三期12年、その後、第一次安倍内閣から福田内閣まで総務大臣を務めた増田寛也さん。2014年に発表した著書『地方消滅』は、私たちに大きなインパクトを与えました。増田さんの眼は知事時代から一貫して、人口減の中での日本の未来に向けられています(残間) 増田寛也さんのプロフィールはこちら

(聞き手/残間里江子 撮影/岡戸雅樹 構成/髙橋和昭)
前篇 “消滅”という激辛スパイス


残間
2014年に発表した『地方消滅〜東京一極集中が招く人口急減』は、たいへんな反響でしたね(24万部発行)。特に地方自治体にとっては。2040年までに896の自治体が消滅し、そこには東京都の豊島区も含まれるという刺激的なものでしたが、ショック療法としては良かったのではないですか?

増田
テーマ自体はそれまで私が考えていたことを書いただけですが、確かに反響は大きかったですね。地方の首長さんというのは、もっと人口の減少を見ているのかと思ったら、案外見ていなかったようです。

残間
国もそうです。人口動態がこういう風になるというのは、もう何十年も前からわかっていたはずなんですが。

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増田
国は東京集中はそろそろ終わるのではと思っていたようですが、逆に集中は進んでいます。そこの見込み違いもあったようです。
やっぱり未だに“東京”なのですよね。大阪ですら弱い。それもわかっていたはずなのに、本を出した時は「えー!?」という反応。でもこれ以上、東京一極集中が進むと、今度は東京がもたない。今も保育園などはお手上げ状態ですし。

残間
理路整然とまとめられていることに加えて、「消滅」という言葉のインパクトも大きかったんじゃないでしょうか。「限界集落」も同じようなことなのですけれど「消滅」のほうが解りやすかったのでしょうね。
東京一極集中を避けつつ、これから日本人がどう暮らしていくのかという、避けられないテーマを私たちに提示してくれたと思います。

脱・東京一極集中ということで言うと、先日、日本経済新聞で中央大学の学長と話されていましたね。東京の大学の定数削減問題や、脱・東京一極集中に逆行するような、私大のキャンパスの都心回帰の動きなどが話題に上っていました。

 ※ 増田さんが座長代理を務めた「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」は、2017年12月に行った最終報告で、「今後18歳人口が大幅に減少する中、近年学生数の増加が著しい東京23区においては、 原則として大学の定員増を認 めないこととする」等の提言を行った。これに対し、東京の大学の一部が反対している。

増田
あれは23区内の大学人には評判が悪かったですね。むしろ地方の大学の定数削減をしてもらわないと困ると東京の大学関係者はみんな怒っています。 ただし彼らが怒るとは思いながら、これは敢えてあちこちで言っています。18歳人口はどんどん減るのですから、別に東京で定数を抑えたってあまり関係ないんです。受験料収入からいえば大学側にはマイナスかもしれませんが、入学する学生から見れば、どんどん入りやすくなっていま す。東京の大学に行きたい人が定数削減で弾かれるということはないはずです。

残間
全入に近づきつつありますからね。

増田
ええ。定数削減に備えて、危ないなと思った大学は先に定員を増やしていますし。明治大学もすごく定員を増やしました。しかし乗り遅れたところは危機感を持っているかもしれません。

でも大学についていえばもっとも深刻なのは、地方の定員割れの私大です。留学生と称する外国人で数を合わせたりしています。局面で見ると安易に悪い方向に行っているところがありますね。
高知大学などは地域共働同学部というのを作って頑張っていますが、なかなか広がらない。大学の先生というのは自分の学問に凝り固まっているのか、全然新しいことに協力してくれない印象があります。
民間企業だと必要とされていないとなると、工場でもなんでも思い切って変えるのですが。

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残間
新しいチャレンジをしている大学もあるんですけれどね。立命館大学ですとか近畿大学。近大は最近、受験者がすごく多いみたいです。広告も賞をとったりして斬新です。
「私たちは決して偏差値が高い学校ではない」みたいなことを自ら言ったりする一方で、でもこんなに面白いことをやっている大学なんだと積極アピールしています。

増田
なるほど。確かに近畿大学のことは聞いています。大学をこれからどうもっていくかは、とても大事ですね。

残間
大学も自治体と同じで、ショッキングな形で数字を指し示さないと・・・

増田
やはり数を減らす必要はあります。見える化して、世の中にこういう状況になっているんですよと伝えるべきなんです。

実は今日、この場所に来る前の会議のテーマは、「所有者不明土地」でした。今これが日本全体で九州を越える面積になっています。2040年には北海道ぐらいまで増えると言われています。
やっぱりこの問題にしても、自治体消滅みたいに脅かす必要はないんですが、「えっ! そんなになっているの」と思っていただかないと。

残間
やっぱり人間に気づかせて、何かを変えようとする時には、ある種の「脅しのスパイス」は必要でしょうね。あくまでスパイスじゃないといけませんが、そうしないと人々には気づいてもらえない。

増田
脅かしたくはないんですが、そこまでひどいの? とは思って欲しいです。自分の口からは“脅し”とか言わないようにしているんですが、実態を見せると驚かれてしまいますね。

残間
『地方消滅』の発表以来、自治体に呼ばれて講演することも多いようですが、どんな話を期待されていると思われますか?

増田
やっぱり住民にわかりやすく、このままだとこういう風になっていきますよと、現状を説明することですね。
要は現在の仕組みを変えざるを得ないのですが、将来現れる今よりもみじめな姿って、なかなか自治体自身は住民に対して言いづらいんです。これまで明るい未来のことばかり言って来ましたから。だから代わりに私に言って欲しい。
そうすると次に首長が出て来て、「ああなっちゃ困るから、こうするんですよ」と、カッコ良いところは自治体が言うわけです。

残間
(笑)増田さんだと知事経験もあるので説得力がありますしね。



(つづく)

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前篇 “消滅”という激辛スパイス

後篇 あまり良くない将来を見える化する

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