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すべての存在には改革が必要です。 2/4

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vol.2 組織の闇を“見える化”する


残間
マッキンゼーで14年過ごして、その次は?

上山
さすがに14年いると少し飽きてきたのと
再び公共の世界に興味が向いたんです。
それから子供が大きくなって来て、
しばらくアメリカで育ててみたいという思いもありました。
それでワシントンのジョージタウン大学の
研究教授にしてもらってパブリックポリシーを研究しました。

残間
お子さんたちをアメリカで、というのは?

上山
私たちの世代は、まだ日本が国際化する境目のところで
ご飯が食べられました。
でも彼らの時代はそうじゃないかもしれない。

残間
お子さんたちは、今どうしていますか。

上山
男二人ですが、上の子は電気自動車のレーシングチームで
エンジニアをやってます。
世界のいろんなところでレースをやっています。

残間
へえー、向こうから日本を見てる側の人になってるんですね。

上山
いえ、もう完全に向こうの人です。

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行政のコンサルはフラストレーションがたまらない

残間
上山さん自身のお話に戻りますが、
行政との関わりはどんな風に始まったんでしょう。

上山
ジョージタウン大学には3年ほどいたんですが、
これと並行して、時々日本に戻って
自治体改革をやるようになりました。
逗子市の市長の顧問です。それから福岡市ですね。
自治体サービスの改革をやりたいということで、
委員になってボランティアですが手伝うことになりました。

福岡市で私が主にやったのは、行政の「見える化」ですね。
いろいろな行政サービスのコストや
満足度のグラフを描いたり、
アンケートを取ったり。
何でもデータを出して情報公開するわけです。

残間
でも、私も自治体の委員とかやったことがありますけど、
ビジネスにはならないでしょ。

上山
なりませんね。謝礼とか何千円の世界ですし。
交通費は出るので赤字にはなりませんが、
とても本業にはならない。

でもまあ、珍しい仕事なので楽しくて、
発見したことを本に書いたりしたわけです。
例えば
「自治体DNA革命-日本型組織を超えて」(東洋経済新報社)
などを出しました。
かつては私自身も役所にいましたし、
一般人にはわかりにくい世界を、
マッキンゼーの手法で「見える化」してみました。
きちんとデータを出して、本一冊貸し出すのに市民一人当たり
どれくらいのコストがかかってるかとか。
福岡市では役所内部の人もやる気になってくれて感動しました。

あと役所の改革では行政の情報公開の原則があるので、
企業のコンサルティングみたいに秘密じゃないんですね。
企業のコンサルをやることのフラストレーションは、
友人と飲みに行っても、何も喋れないことです。
「ある企業であることがありまして、
あるインフォメーションが‥‥」とか言っても
全然つまんないでしょ!

残間
(笑)「あるある」ばかりじゃね。

上山
でも行政だと情報公開の原則があって
もう決めたことなら全部喋ってもいい。
そこが楽しいところ。
それでアメリカに戻ると、行政改革をネタにしながら
本をたくさん書きました
行政改革をネタにしながらの、実際のところは
経営コンサルティングの手法を使って
社会を変えるハウツーガイドです。
2000年ころに福岡市でそれをやっていたら、
大阪市からも声がかかりました。2005年の2月くらいからです。

残間
そんな前から大阪とは関わりがあったんですね。
すると最初は橋下(徹)さんとではなかった?

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上山
最初は当時大阪市の助役だった
大平光代さんと仕事をしました。
關淳一さんが市長だった時代です。
大平さんは独学の人で、私がせっせと書いてた本を
読んでくれていて、是非、手伝ってくれと言われたんです。

当時、大阪市では職員厚遇問題というのがありました。
背広を公費で買っていたり、
実体のないヤミ残業手当が問題になってました。
それを大平光代さんが改革することになって、
助っ人で行ったのが始まりです。

マッキンゼーの後輩にも手伝ってもらい、
学校給食とか地下鉄とか水道とかを分析しました。
すると、たいてい何でもよそより2割くらい過剰人員で、
コストも2~3割ほど高いというのが出てきたんです。
それをまとめて発表している時に、
市長の關さんが選挙で落選されて、
大平さんも辞任。平松市長になって、
私はいったん大阪には行かなくなりました。

でも数か月後の2008年2月に橋下徹さんが知事になり、
大阪府でも経営改革をやりたいということで、
府と市を計7年お手伝いしました。
最初は生産性改善だったんですが、
だんだん地下鉄の民営化や
大阪都構想など大きいものになるわけです。

残間
あれは新しい試みでしたね。
あそこは、それまで府と市の関係がうまく行ってませんでしたから。
何かやろうとしても、どっちかからか潰されてしまう。

上山
そう、まさにそうなんですよ。
大阪府はたい焼きの薄皮と言われていて、
中の餡子は全部大阪市なんですよ。

成功するクライアントとしかやらない


残間
橋下さんというのは、いろいろと言われている人ですが、
何か違和感みたいなものはありませんでしたか。

上山
僕は大阪人ということもあってとても気が合いました。
ああいうタイプは大阪にたくさんいますから、
違和感はなかったです。
あの人は外から見ると一見、激しいけれど、
すごく穏やかで職員にも優しいです。
一緒に仕事をすると非常に楽しい。ものすごくまじめだし。

残間
変な話なんですけど、あの人、子供いっぱいいるでしょ。

上山
7人いますね。

残間
橋下さんの妻って、7人も子供を育てても、
ちっとも老け込んだり、シンドそうじゃないんですよ。
あんな風に幸せそうな女の人の夫って、
実はいい人なんじゃないかなあって、別の角度から見てたんです。

上山
そう、本当にいい人なんですよ。
でも奥さんが怖いみたいですが(笑)。

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残間
コンサルティングするにあたって、
先方に変な人とか困る人っているんじゃありませんか?

上山
それはないですね。
クライアントはたいてい社長や知事、市長ですが
私は権限を持っていて仕事ができる人としかやりません。
要するに成功の可能性があるクライアントとしかやらない。
なぜなら実行されない提案を
一生懸命作ったってしょうがない。
社員も不幸になりますし。
だから社長に必ず会って確かめてから引き受けます。

残間
その社長に対する好き嫌いは?

上山
感情的な部分はあまり関係ないですね。
仕事ができるかどうかだけ。
仕事ができればつきあいます。

残間
実現しそうにない、絵空事を言ってる人はダメだと。

上山
絶対やりません。結果的には申し訳ないのですが
八割方の引き合いは断ることになります。

残間
その見極めのポイントはなんでしょう。

上山
話していれば本気かどうかわかります。
この人は本物だとか、すぐ日和るとか。
あと企業だと向こうもかなりのお金を払うんですから、
それなりの覚悟があるし、
数字を見ながらやばいと思って
コンサルティングを頼んでくるわけです。

ところが行政改革はくせものです。 現役の知事市長さんは何にもしなくったって、
次の選挙で残ろうと思えば、そのまま残れることが多い。
改革するとむしろ落ちるリスクが出てくる。
だから滅多に本物の人はいないです。
選挙の勝ち方も関係してきます。
リスクをとった人しか改革はできない。
相乗り選挙で上に乗っかった人とか、役所を辞めて、
天下りのつもりで引き受ける人は大抵ダメです。

腐った立派な組織が、一番やりがいがある


残間
企業を手がけるコンサルタントはたくさんいますが、
上山さんみたいに行政を扱う人は少ないし、大変ですよね。
元々、上手く行くこと自体が難しいし。

上山
はい。相当、難易度は高いです。

残間
それに毒がいっぱい組織に埋め込まれていても、
臭気すら上がってこないような、
根深いところにいろんな問題があって、
そこを紐解いていくというのは、相当にシンドそうです。

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上山
そうですね!

残間
やりがいがあるとも言えるんですが、
何しろ企業の従業員の比じゃない数の人が
関わっていきますから。

上山
そこは確かに責任が重く、またやりがいもあります。
役所というのは企業で言えば、総会屋付きの古い大手の、
どうしようもない会社に似ている。

残間
(笑)

上山
しかも倒産することすらできない。

残間
やりたがる人、少ないでしょ。

上山
でも私はなんというかマニアですから…。
もう普通のところのコンサルティングはやり飽きちゃった…。(笑)

残間
相当な魑魅魍魎がいないと面白くないと。

上山
依頼は来ませんが、伊勢神社とかもやりたいですね。
東京大学も面白そうです。それから国連。
国連の下部機関は一回やったことがあるんですが。
あと、IOCも。

残間
(笑)

上山
一見、とても立派な組織の中が必ずしも立派ではない…。

残間
海外は、そういうところに
コンサルティングが入ることはあるんでしょうか。

上山
アメリカだと、軍隊や警察にコンサルティングが入ることはありますね。
米軍の改革プロジェクトとかありましたよ。
調達の効率化の部分だけですけど。

残間
日本の自衛隊には入りそうにありませんね。
警察にも。

上山
警察ねえ、警察もなんとかしたほうがいいですね。
おまわりさんは優しいけれど、
どうも過剰人員配置にみえます。
ちゃんと警備できてるかどうかも素人にはデータで示されない…。

残間
あの中はどうなってるんだろうという組織って、
結構ありますね。

上山
会社も役所も長く存在しているものは、
何か意味があるから存在しているわけです。
でも長年経つと必ずおりがたまってくる。
だから大抵“改革”した方がいいんですよ。
与党もそうです。自民党も共産党もそうでしょう。
どっちがクライアントでも私はやりますよ。(笑)
どっちも少しでもよくなった方が
みんなのためっていうのが、私のスタンス。


(つづく)

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vol.1 敏腕コンサルタントはいかにして生まれたか

vol.2 組織の闇を“見える化”する

vol.3 大学では学生たちとコンサルごっこ

vol.4 東京都特別顧問という仕事

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