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すべての存在には改革が必要です。 1/4

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東京都の特別顧問の統括役として、小池東京都知事を支える上山信一さん。今、東京都は、築地市場移転問題、オリンピック予算の削減など、多くの問題を抱えています。敏腕コンサルタントとして、幾多の企業や自治体で難問を解決してきた、上山さんへの期待が高まります。(残間)
上山信一さんのプロフィールはこちら

(聞き手/残間里江子 撮影/岡戸雅樹 構成/髙橋和昭)


vol.1 敏腕コンサルタントはいかにして生まれたか


残間
上山さんはコンサルティング会社の
マッキンゼー・アンド・カンパニーで、
永らく大企業の経営改革を手がけられました。
最近では、そのノウハウや経験を活かして、
自治体の行政改革にも尽力されています。
そして現在は東京都の特別顧問。
いわば東京都のコンサルタントです。
何かと話題の都知事のそばにいると、
メディアにも露出しますし、
いろいろ言われるでしょ。やっぱり気になりますか?

上山
不特定多数の人にどう思われているかとかは、
全然気になりませんよ。
基本的にこれまでの人生、
ずっとB to B(ビジネス トゥー ビジネス)で
B to C(カスタマー)じゃありませんでしたので。
コンサルティングって基本は法人向けです。
テレビには最低限は出るんですが、
自分の発言がそのままちゃんと届く
“生”だけにしています。

大きくて重たくて速いものが好きだった


残間
では上山信一さんというのは、どういう人物なのか。
そして敏腕コンサルタントはどのようにして生まれたのか、
お聞きしていきたいと思います。よろしくお願いします。
まず、京大の法学部を出て、最初に入ったのは
運輸省(現・国土交通省)ですよね。
これはどういった経緯で。
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上山
実は鉄道マニアだったんですよ。小学校の高学年くらいから。
当時はSLの最期の時期で、蒸気機関車ブームだったんです。

残間
どういう系統のマニアだったんですか。

上山
基本的には「乗り鉄」です。あと写真も少々。
私は大阪出身ですが、小学生くらいの時分は、
まだ周りで結構SLが走ってたんです。
汽笛の音が聞こえると見に行きましたね。
当時はのんきで機関庫の警備なんかも緩くて、
機関車に乗せてもらったり、見せてもらったり。

あと旅行も好きだったんです。
親が学校の先生なので、夏休みとかに
海も山もいろんな所に連れてってくれました。
自分で時刻表をめくって計画を立てたりして、
旅行好きになりました。
それで高校時代はワンダーフォーゲル部。
鉄道と旅行と山歩きが好きだと運輸省かと(笑)。

残間
旅行会社には興味がなかったですか。

上山
私はもっぱら趣味です。
今までに104か国を旅してます。
就職する頃は
インフラの方に興味があったんです。
都市計画とかダムも好きでしたね。

残間
構造物マニアだ。

上山
そう、でっかいコンクリートの塊が大好きで。
とりわけSLみたいに重たくて大きな物が、
高速で動くのが好きなんです。
ですから飛行機も大好き。
伊丹空港の近くで、飛行機が割と近距離で
真上を通るスポットがあるんですが、
そこにいるとジェットエンジンの排気ガスがシャワーのように降ってきてね、あれ最高。
それからディーゼル機関車。
あの煤煙なんか缶詰にして吸ってもいいぐらい好きです。

残間
(笑)

上山
それで煤煙の匂いでだいたい機種がわかるんですよ。
あ、これは「キハ58型」だとか(笑)。

残間
筋金入りだ‥‥‥

コンサル修行を通して自己を“民営化”

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残間
でも、運輸省にはあまり長くはいませんでしたね。

上山
6年ですね。
入省して2年経って、アメリカのプリンストン大学に
2年間、公費留学しました。
それから戻ってきて外務省経済協力局に出向したんです。
向こうで勉強した途上国の経済開発の業務だったんで。

20代には南米を旅したり、
アフリカ関係の本を書いたり、
ラジオに出たり、結構いろいろ。
しかし、そのうち運輸省に戻らずに
自分探しがしたくなったわけです。

残間
それでコンサルティング会社大手の
マッキンゼーに行くわけですね。
どうしてコンサルタントの世界に?

上山
当時は転職という概念がなくて、
一般の大企業の中途採用はありませんでした。
オーナー会社か、新聞社、
それとも大学に戻って何かやるか。
あとは司法試験。それぐらいしか選択肢がなかったんですね。

そんな頃、今、人材コンサルタントをされている
高橋俊介さんが、国鉄を辞めて
マッキンゼーに勤めていました。
実は彼もプリンストン大学に留学していて、
一軒家を数人で一緒に借りるシェアメイトだったんですよ。
彼は国鉄の民営化を機にJRを辞めて、
一足先にマッキンゼーに入っていたわけです。
それですごく楽しそうなので
マッキンゼーの話を聞いたんです。
それで私はこれは「自分自身を民営化して
やり直すのに最高の場所だ」と思ったんです。

残間
上手い言い方ですね。

上山
それでマッキンゼーに入って、
気がついたら14年もいることになりました。
高橋さんは早くに辞めて他の世界に行かれたんですが、
私はとても気に入って長くいたわけです。

残間
いよいよコンサルタントとしてのキャリアが
スタートしたわけですが、どんな仕事が多かったですか。

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上山
組織の改革ですね。あとは新規事業戦略やリストラとか。
20社ぐらいやったと思います。
最初の頃は日本がバブルで景気がいい時で、
世界四本社制を作りたいとか、
日本企業がどんどん国際化する時期ですよ。
三菱地所がロックフェラーセンターを買ったり、
ブリヂストンがファイアストーンを買うとかが、
話題になった頃。

それで大企業はグローバル経営を急にやり始めるんですが、
その頃日本企業は終身雇用で
ずっと日本で育った幹部しかいないわけです。
英語はできないし、海外の企業を買収したけど、
どうしようかという状態。
それで僕ら外資系のコンサルティング会社の
若い人間でもお手伝いできる仕事が結構あったんです。

そうこうしているうちにバブルが崩壊して、
今度は会社を第三者に評価してもらって、
リストラをしたいという依頼が入ってきます。
子会社売却だとか合併だとか。
私は社名に“日本”とか“東京”のつく
重たい会社からの引き合いが多く、
いろいろやっているうちに、
巨大産業の改革が得意技のようになりました。
長くてシンドいプロジェクトをたくさんやりましたよ。

残間
上山さんはコンサルティング後の効果測定は、
どう捉えていいるのですか?

上山
私の基準は、会社側の改革プロジェクトのチームリーダーが、
役員や社長になることですね。
まあ、もともとなりそうな方がチームリーダーに
任命されることも多いんですが、
ほとんど全員が後で社長になられました。
自分の中ではキングメーカーというと
あまりにもおこがましいんですが、
“社長メーカー”的な感じはあるんですよ。

わけのわからないものをやる度胸


残間
中には変わった会社もありましたか?
あ、具体的なことは言えないんですよね。

上山
やめても守秘義務があって言えないんですけど、
いろいろやりました。
テレビ局も外資含めて3つやりました。

残間
メディアもやってるんですね。

上山
ニューヨークやパリからも専門家を連れてきて、
みんなでワイワイやるわけです。
あの頃はマルチメディアでテレビがどう変わるかとか、
衛星放送でどうなるかとか。

残間
それまでは野村総研や三菱がやっていたのかしら。

上山
いや彼らはシンクタンク。
シンクタンクとコンサルティングは
似てますが仕事が違うんです。
シンクタンクはどちらかというと、外部環境の調査が中心。
コンサルティングはクライアントの中の問題解決。
あとコンサルティングは、顧客が欲しい情報を
顧客だけに言うわけです。
だから調査結果を外で喋ったり書いたりしません。

残間
顧客は恥部もさらすわけですからね。

上山
課題も答えも全て秘密です。
だからやってる方は結構フラストレーションがたまるんです。
電車に乗ると隣の人の新聞トップ面に
「~が~を買収」とか出てるわけです。
「あ、それ、ボクが手伝ったんです」って
言いたくなりますよね(笑)。

残間
最近はマッキンゼーから次々に人材が出てきますよね。
リクルートとはまた違った形の
人材輩出機関になってる気がします。

上山
うーん、まあ、あの会社に5~6年もいると、
わけわかんないものをやる度胸はつきますね。

残間
度胸という意味では、見事に現在につながってますね。

上山
(笑)確かに。
例えばフランスの化粧品メーカーを
コンサルティングしていると、フランス人が言うわけです。
「日本人がこれを使わないのはおかしい!」
そういうのをなだめすかして、
肌の色が違うんだからしょうがないでしょとか、
文化が違う人間ともいろいろやらないといけない。
だから政治家や労働組合の方に会ってもあまり驚かないです。
所詮は日本人の枠を超えない。
皆さん話せばわかってくれる。

残間
(笑)なるほど。

上山
そう考えるとコンサルティングは
文化人類学みたいなところがあります。
いろいろな会社や業種をフィールドワークする。

(つづく)

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vol.1 敏腕コンサルタントはいかにして生まれたか

vol.2 組織の闇を“見える化”する

vol.3 大学では学生たちとコンサルごっこ

vol.4 東京都特別顧問という仕事

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